スキルを磨く

2016/12/26

こんにちは。舘野泰一(たての よしかず)です。本コラムは、筆者らのおこなった研究をもとに「大学時代にどのように過ごすことが、社会人生活につながるのか」について情報をお届けします。

 

最初に、簡単に自己紹介をします。私は現在、立教大学経営学部で助教をしており、リーダーシップ開発に関する実践・研究などをしています。具体的には、「人が成長する環境とはどのようなものか」について、大学生・社会人を対象に、日々研究・実践をおこなっています。今回のコラムは、私の研究テーマの1つである「社会で活躍する社会人は、どのような大学生活を過ごしてきたのか?」をもとに執筆しています。

大学生の中には、「社会に出る前にどのような準備をしたらよいのか」を迷う方も多いのではないでしょうか。筆者を含む研究チームは、この問いに答えるために、「社会で活躍する人は、どのような大学生活を過ごしてきたのか?」を明らかにすることを目的とした大規模な調査・分析を実施しました。その手法とは、次のような縦断調査の手法を用いたものです。

  • 最初に、大学3年生を対象に「大学生活に関する質問紙調査」をおこなう
  • その3年後に、同じ人たちに「社会人生活に関する質問紙調査」をする

本コラムでは、その調査結果をもとに「大学時代にどのようなことを意識すればよいのか」についてのヒントをお伝えします。第1回の今回は、「職場で主体的に動ける人は、大学生活をどのように過ごしているか?」について紹介したいと思います。

なお、研究の詳細は『アクティブトランジション 働くためのウォーミングアップ』(三省堂)に載っておりますので詳しくはそちらをご参照ください。

 

職場で自分から動くことの意義とは?

大学生活をどのように過ごしているか?01

大学生活のことを考える前に、最初に「職場で自分から行動すること」について考えてみたいと思います。

企業に入社して1〜3年目は、まず組織に適応することが大切です。組織適応をするために、新人側は自分に任せられた仕事に関する能力・スキルを身につけることや、職場の理念や価値観を理解することなどが必要になります。企業側は、新人がスムーズに組織適応できるようにさまざまな施策をおこないます。

しかし、組織適応は企業側の働きかけだけで実現するものではありません。新人側の働きかけも重要になります。例えば、職場の集まりに自分から参加すること、上司に意見やフィードバックを求めること、部門を超えてコミュニケーションを取ること、などが挙げられます。こうした「自分から組織に働きかける主体的な行動全般」を、学術的には「プロアクティブ行動」と呼びます。そして、プロアクティブ行動は、組織適応を促す重要な要因であることがわかってきています。¹

¹具体的な研究として、例えば以下が挙げられます。
小川憲彦(2012)組織社会化戦術とプロアクティブ行動の相対的影響力-入社1年目従業員の縦断的データからドミナンス分析を用いて-.Working paper series. No.121

ではこのような「自分から動く行動」ができる人は、どのような大学生活を過ごしていた人なのでしょうか?

今回は実際の調査結果から3つの視点で考察していきます。具体的には、

  • 大学生活の充実に関すること
  • 大学の参加型授業に積極的に参加すること、
  • 授業外のコミュニティに目を向けること、

の3点から考えていきたいと思います。

 

大学生活を充実させること

最初に「大学生活の充実」に関する視点から考えていきたいと思います。みなさんの大学生活は現在どのくらい充実していますか?

今回の調査結果では「大学生活の充実度が高い人ほど、職場で自分から動く行動をしている」ということが明らかになりました。大学生活の充実は、大学で行われる活動に対する主体的な参加の度合いを示す指標として知られています。つまり、大学生活に主体的に参加している人は、企業に入ってからも自分から動く行動をしていたということになります。

この結論から言えることはどのようなことでしょうか。まず言えることは「大学は大学」、「企業は企業」と別々に考えるのではないということです。目の前の環境に対して主体的に関わり、意義を見いだせる人は、環境が変わってもそのように振る舞える可能性があるといえるでしょう。

「社会人生活」は未来のことですが、目の前にある「大学生活」そのものを充実させるために、まず一歩行動してみることが結局近道になるともいえます。

いま現在大学生活の充実度が低いと感じている人は、まず自分の環境を少しでもよいので変えてみるということが「自分から環境に働きかけること」の練習につながるのではないかと思います。具体的にどのような行動をするべきかについて、授業内外から考えていきましょう。

 

大学の授業に対して積極的に参加すること

大学生活をどのように過ごしているか?02

次に「大学の授業」に関する視点から考えていきたいと思います。近年大学では、プレゼンテーションをしたり、グループワークをしたりする授業が増えてきました。みなさんもそのようなタイプの授業を選択していますか?

今回の調査では、上記に挙げたような「参加型の授業」に出席することは、「職場で自分から動く行動」につながるかどうかを検証しました。結果は「参加型の授業に、ただ参加しているだけでは行動につながらない」ということが明らかになりました。この結果を聞くと「じゃあ授業を選択しても意味がないの?」と思うかもしれませんね。

結果には続きがあります。「授業に参加しているか、しないか」では差がなかったのですが、「参加型授業が自分の成長に影響を与えた」と感じている人については「職場で自分から動く行動」につながっていることが明らかになりました。

ここで言えることはつまりこういうことです。大学における「参加型授業」は「職場で自分から動く行動をする」ことにつながる可能性はありますが、「ただ受け身で言われたことをやっているだけ」では、そのような力は身につかないということです。たしかに考えてみれば「発表しろと言われて、発表している」「グループワークをしろと言われて、グループワークをしている」のでは、自分から動く行動が身につくとは思えませんよね。

参加型授業は、講義型授業に比べて、自分から動ける機会が多いと思います。例えば、「自分から教員に対して、発表に対するフィードバックをもらいにいくこと」、「自分のグループや他のグループと積極的に関わろうとすること」等は、職場で求められる行動ととても似ています。参加型授業の機会をうまく活かして、自分から動いてみると、社会人生活につながるのではないかと思います。

 

授業外のコミュニティに目を向けること

最後に「授業外コミュニティ」に関する視点から考えていきたいと思います。授業外コミュニティとは、サークル、バイト、趣味の集まり、インターンなど大学の授業以外の集まりのことです。みなさんもこういったコミュニティに所属していますか?

調査で、授業外コミュニティに参加していることが「職場で自分から動く行動」につながるかどうかを検証しました。結果は「授業外コミュニティを持っている人は、持っていない人と比べて、職場で自分から動く行動をしている」ことが明らかになりました。

授業外のコミュニティは、与えられたコミュニティというわけではなく、そもそも「自分から参加し、自分から行動する経験」をすることが多いですよね。そのコミュニティに参加する理由や意味づけも自分自身でおこないます。そのような行動が、社会に出てからの行動につながっている可能性が示唆されました。

授業外コミュニティといっても、いろいろなコミュニティがありますが、今回の結果では、参加しているコミュニティのメンバーの多様性が自分から行動することにつながるのではないかという考察がなされています。

考えてみれば、大学という環境は同世代の人が多く、同質性の高い集団になりがちです。一方、会社は年代もバックグラウンドも非常に多様になります。大学生活の間に、多様なメンバーと自分からコミュニケーションを取る経験をしておくと、企業に入ってからも受け身にならず、自分から動くことにつながるのではないかと思います。

 

まとめ

第1回目のコラムでは「職場で主体的に動ける人は、大学生活をどのように過ごしているか?」について調査結果をもとに執筆してきました。ポイントを3つにまとめると以下になります。

  1. まず目の前の大学生活を充実させるために、自分から何かしらのアクションをとってみること
  2. 参加型授業をただ受けているのではなく、自分からフィードバックをもらいにいったり、他グループのメンバーにかかわったりする行動をとってみること
  3. 授業内だけでなく、授業外のコミュニティに参加し、多様な人とコミュニケーションを取る体験をしてみること

このような体験をしておくことが、職場で主体的に行動できることにつながるのではないかと思います。

目の前の環境に対して、まず1つでもいいので新しいアクションをとってみること、それが実は将来に向けての近道といえるかもしれません。

次回のコラムでは、「自分一人で抱え込まずに、適切に他者に助けを求めることの意義」について、研究成果をもとに執筆したいと思います。次回も楽しみにしていてください。

 

→第2回の記事はこちら:就職活動中にあなたの助けとなってくれる人はいますか?〜他者からの支援の効果とは(2/16公開)





若手




タグ一覧 大学生活 就活
記事一覧へ
舘野 泰一

1983年生まれ。立教大学経営学部助教。青山学院大学文学部教育学科卒業。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学後、東京大学大学総合教育研究センター特任研究員を経て、現職。博士(学際情報学)。大学と企業を架橋した人材の育成に関する研究をしている。具体的な研究として、リーダーシップ開発、越境学習、ワークショップ、トランジション調査などをおこなっている。著書(分担執筆)に『活躍する組織人の探究: 大学から企業へのトランジション』(東京大学出版会)、『まなび学ワークショップ 第2巻』(東京大学出版会)があり、近著に『アクティブトランジション 働くためのウォーミングアップ』(三省堂)がある。 Webサイト:http://www.tate-lab.net/mt/

関連記事