スキルを磨く

2017/02/16

こんにちは。舘野泰一(たてのよしかず)です。私は現在、立教大学経営学部で助教をしています。専門は教育工学という分野で、大学生や社会人を対象に「人が育つ環境とはどのようなものか?」について日々研究しています。

本コラムでは、筆者らの研究成果をもとに「大学時代にどのように過ごすことが、より良い社会人生活につながるのか」について情報をお届けします。

→前回の記事はこちら:職場で自分から動ける人は、大学生活をどのように過ごしているか?

大学生の中には、「社会に出る前に、どのような準備をしたらよいのか」を迷う方も多いのではないでしょうか。筆者を含む研究チームは、この問いに答えるために、「社会で活躍する人は、どのような大学生活を過ごしてきたのか?」を明らかにすることを目的とした大規模な調査・分析を実施しました。その手法とは、次のような縦断調査の手法を用いたものです。

  • 最初に、大学3年生を対象に「大学生活に関する質問紙調査」をおこなう
  • その3年後に、同じ人たちに「社会人生活に関する質問紙調査」をおこなう

この調査結果をもとに「社会に出てから活躍するためには、大学時代にどのようなことを意識すればよいのか」についてのヒントをお伝えします。

第2回は「就職活動における他者からの支援の効果」について紹介したいと思います。就職活動中に他者から助けを得ることが、入社後の行動にどのような影響を与えるのかについて説明します。

なお、研究の詳細は『アクティブトランジション 働くためのウォーミングアップ』(三省堂)に載っておりますので詳しくはそちらをご参照ください。1

1今回は書籍の「大学生の就職活動における他者からの支援は入社後の組織コミットメントにどのような影響を与えるか-リアリティ・ショックの媒介効果に着目して-」(吉村春美 p133-143)の章の内容をメインに紹介します。

就職活動中にあなたの助けとなってくれる人はいますか?

アクティブトランジション02-1

最初にひとつ質問です。

「あなたには、就職活動中に自分の助けになってくれそうな人がいますか?」

答えはいかがでしたか?助けになってくれそうな人は「いる」でしょうか、「いない」でしょうか。

筆者らは「就職活動中の他者からの支援」が、「入社後の行動」にどのような影響を与えているかについて調査しました。具体的に「就職予定先の満足度」、「組織コミットメント(入社後の組織に対する愛着)」、「リアリティ・ショック(理想と現実のギャップにショックを受けること)」の3つに対する影響を分析しました。ポイントとなるのは「就職予定先の満足度」だけでなく、「入社後の行動」への影響を検討した点です。

その結果、就職活動中に自分の助けになった人がいる場合には、

(1)組織コミットメント(入社後の組織に対する愛着)を高めること

(2)就職予定先の満足度を高め、リアリティ・ショックの軽減につながること

がわかりました。

つまり、「自分の助けになる人」がいることが、就職活動そのものだけでなく、「入社後の行動」にポジティブな影響を与えたことがわかったのです。

 

「助けとなった人がいない」と答える人が約3割

そもそも「就職活動中に自分の助けになった人」についてどのような回答があったのかを紹介します。結果は以下の図2 に示しました。

「就職活動中に自分の助けになった人」グラフ

2「アクティブトランジション 働くためのウォーミングアップ」(三省堂)p.105から引用

結果をみると「大学の先生・教授」(16.0%)、「大学のキャリアセンター等の職員」(10.6%)など、大学関係者が相談相手として多く挙がっていました。また「家族(両親や兄弟姉妹)」(17.0%)の割合も高いという結果になりました。

一方、そもそも「助けになった人がいない」と答えた人が28.7%いました。なんと約3割の人たちが、助けとなる支援者がいない状態で就職活動をおこなっていたのです。

 

助けとなる人を自ら探すことの重要性

アクティブトランジション02-2

こうした就職活動における孤立については、大学や企業の側で何かしらのアプローチが必要という見方もできます。

しかし、大学生にとっても「就職活動に対して他者の力を借りる」こと、具体的には「自分から相談相手を見つける」という行動も重要であることが見えてきます。例えば、大学のゼミの先生やキャリアセンターの職員に就職活動について相談しにいったり、家族に相談してみたりすることが大切になります。もちろん相談したことによって本当に自分の助けになるかは場合によりますが、「ひとりですべてを乗り切る」という発想から、適切なタイミングで他者に頼るという発想の転換は重要になります。

就職活動が始まってから相談相手を探すということももちろんありですが、その前から相談できるような相手を見つけ、関係を構築しておくほうがよいでしょう。まず1人でもいいので、就職活動について相談してもよいと思える人を見つけておくことが大切になります。

その上で、できれば複数の多様な立場の人から助けを得られるようにしておくとベターです。今回の筆者らがおこなった調査はあくまで「支援者がいるか、いないか」の効果であり、「支援者の種類(教員か友人か等)によって、効果が異なるか」までは検証できていません。しかし、これまでおこなわれてきた関連研究などを踏まえて考えると、支援者によって支援の種類が異なることが想定できます。

具体的に考えてみましょう。例えば、「大学の教員」からは「話を聞いてもらって安心する」というだけでなく「具体的な会社や仕事内容についての情報を得る」などして、「納得して就職先を選ぶことができ」、それによって「組織に対する愛着が高まり、リアリティ・ショックが軽減する」ことが期待できます。一方、「友人」については、就職活動について「お互い励まし合う」といった情緒的なサポートがメインかもしれません。このように多様なネットワークを構築することで、さまざまな側面での支援を得られる可能性があります。

ただし、他者の支援を自分の力に変えるためには「自分にとって就職活動はどのようなものか」という意味づけをしっかりしておくことも大切です。浦上氏、山中氏(2012)の研究によると、就職活動に対して「内発的で自己向上的な意味づけ」を行っている人は、他者からの言葉かけがやる気につながる一方で、「周りの期待に応える・評価を得ようという意味づけ」を行っている人は、他者からの言葉かけがプレッシャーにつながる可能性が示唆されています。

浦上昌則・山中美香(2012)就職活動における言葉がけの影響:就職活動に対する意味づけとの関連に着目して.人間関係研究. Vol.11 p.116-128.

まとめ

第2回のコラムでは、「就職活動における他者からの支援の効果」について、調査結果をもとにお伝えしてきました。ポイントをまとめると、

(1)「就職活動中に自分の助けになってくれる人」を1人でもいいので探すこと

(2)もしいる場合には多様なネットワークを構築すること

(3)就職活動を通してどのように成長したいかという自分なりの意味づけをすること

が重要といえます。

「就職活動を1人ですべて乗り切る!」と思っている人は、周りにも少し目を向けてみることが大切かもしれません。もちろん個人として就職活動に対する意味づけを行うこと等は非常に重要なことです。しかし「自律」とは、すべてのことを「ひとりでやる」ことを指すわけではありません。それは「孤立」につながります。

他者からの援助を自分から引き出すことは、就職活動に限らず、入社後も大切な行動です。周りに頼り、巻き込みながら成果を出すことを心がけてはいかがでしょうか。

 

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舘野 泰一

1983年生まれ。立教大学経営学部助教。青山学院大学文学部教育学科卒業。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学後、東京大学大学総合教育研究センター特任研究員を経て、現職。博士(学際情報学)。大学と企業を架橋した人材の育成に関する研究をしている。具体的な研究として、リーダーシップ開発、越境学習、ワークショップ、トランジション調査などをおこなっている。著書(分担執筆)に『活躍する組織人の探究: 大学から企業へのトランジション』(東京大学出版会)、『まなび学ワークショップ 第2巻』(東京大学出版会)があり、近著に『アクティブトランジション 働くためのウォーミングアップ』(三省堂)がある。 Webサイト:http://www.tate-lab.net/mt/

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