製薬業界を知る

2018/02/13

製薬業界に就職したいと考えているけれど、学生のいま、何をしたら良いのかわからない。そんな読者も多いのでは?日本では一般的に新卒一括採用を行っている企業がほとんどなため、学生側も「よーいどん」で就活を始める意識の人が多いようです。しかし、アメリカの就職事情は日本と大きく異なり、学生の意識も非常に高いそうです。
以前の記事で、日本薬学生連盟の学生さんも感じていたように、他国の学生に学ぶこともあるのでは。ということで、さっそく米在住のライターに解説いただきました。

アメリカでは転職を繰り返してステップアップしていく風潮がある分、企業は新しい人材を採用することに対して非常にシビアです。求めるのは、学歴と実務経験を重視した「即戦力」。そんな企業の要望に応えるべく、アメリカの学生たちは在学中から強い目標意識を持ってさまざまなスキルや経験を積極的に取得していきます。今回は、そんなアメリカの学生が製薬会社に就職するまでの道のりを解説したいと思います。

 

新卒採用枠なし?驚きのアメリカの就職事情

新卒採用枠なし?驚きのアメリカの就職事情

日本でもアメリカでも就職活動は自分の人生を左右する大きなイベントです。しかし、採用基準や方法にはずいぶんと大きな違いがあることをご存じでしょうか?

日本では、毎年春になると大量の新卒者を採用する「新卒重視スタイル」が一般的です。世間に出たばかりのまっさらな人材のポテンシャルを見極めて採用し、企業内で育てていく方法です。それに比べて中途採用者の枠は少なく、新卒採用枠を逃すと就職のハードルが大幅に上がってしまう感が否めません。
また日本企業は採用過程において、学歴で差別することを避けようとする動きがあります。大学名を伏せて面接する、学生時代の課外活動やボランティア活動を重視するなど、学歴以外で人材を総合的に判断しようという考えです。

一方で、アメリカには新卒採用枠というものはありません。各部署のポジションに空きが出たら、その部署が都度募集をかける「通年採用スタイル」を取っており、1つのポジションをかけて新卒・中途採用者が同じ土俵で戦います。
そして採用基準は「即戦力となり得る人材か」、この一言に尽きます。というのも、アメリカの企業には人材を育てるという発想はありません。出社当日から即戦力として企業の利益となるかどうかが最重要視されるのです。そのため実務経験に乏しい新卒は中途採用者に比べてはるかに不利であり、いかにそのギャップを埋めていくかが新卒者の課題となります。

 

「スーパー学歴主義」なアメリカ企業が採用時にチェックするポイント

「スーパー学歴主義」なアメリカ企業が採用時にチェックするポイント

即戦力を重視するアメリカ企業は、日本と反対に露骨なまでの学歴主義です。大学名、学部、成績、最終学歴は修士か博士かなども大いに影響を及ぼします。そんなアメリカの企業がどのようなポイントに注目して採用の判断を下しているのかを紹介しましょう。

 

大学名、最終学歴

アメリカの大学は、入学よりも卒業が難しいといわれています。単位を取得するためには提出課題、テストの成績、出席日数、授業態度などが総合的に評価されるため、成績が良くてもレポートの評価が低いために落第、といったことも日常茶飯事です。そのため学生は、単位を確保するべく日々勉強に励むことになります。
博士課程においても、日本のように4年経てば博士論文を書いて卒業、とはいきません。担当教授が卒業OKと言わない限り、何年でも博士課程に留まらなければならないのがアメリカ流です。
このように、アメリカで学歴を得るためには並々ならぬ努力を要するため、就職活動においては卒業した大学名や最終学歴が大いに評価されます。

成績

成績も大きな判断基準のひとつです。応募のための必要最低条件として、「GPA(成績評価値)が4.0のうち3.2以上」などと明記する企業も少なくありません。上記で述べた通り、アメリカにおける大学の授業評価はシビアですので、その中でどれだけの成績が取れたかというのは最初の段階でチェックされます。

スカラシップ

スカラシップとは、奨学金のことです。授業料が高騰するアメリカにおいてスカラシップは経済的なメリットの大きいプログラムですが、同時に成績優秀者であるということも意味します。数多くのスカラシップを取っている学生ほど優秀な人材として企業の評価は高くなるため、学生はさまざまなスカラシップに応募し、自分の価値を高めようと努力します。

企業が求めるスキルを有しているか

アメリカの募集要項には、「どのような人材を求めているか」ということが詳細に明記されます。募集している役職や必要とする実務歴などに加えて、蛍光顕微鏡が使えるか、細胞培養のバックグラウンドがあるかなどの条件が並びます。たとえ成績が優秀であったとしても、企業が求めるスキルと自分の持っているスキルにずれがあった場合は書類選考で落とされる可能性が非常に高くなります。

実務経験の有無

企業側は即戦力になる人材を求めているので、「最低3年以上の実務経験必須」といったように一定以上の実務経験を条件とする募集が大部分を占めます。新卒者にとっては不利な条件ですが、この実務経験を積むために行うのがインターンシップです。ほとんどの学生は長期の休みなどを利用してインターンシップに励み、就職に有利になるよう準備を進めます。

 

在学中から始まる、製薬会社への就職を勝ち取るための学生たちの戦い

在学中から始まる、製薬会社への就職を勝ち取るための学生たちの戦い

アメリカの面接で最もよく聞かれる質問として、「なぜわれわれがあなたを採用すべきなのか説明してください」というものがあります。あなたを採用すると企業側にどのようなメリットがあるのか述べよ、と問うのです。これに答えるために応募者(特に実務経験に乏しい新卒者)はさまざまな実績を作り、「自分はこれだけの経験と実績がある、だから企業に対してこれだけの貢献ができる。従って私を採用すべきだ」と説得しなければなりません。
ではアメリカの製薬会社への入社を希望する学生は、在学中からどのような実績作りをしているのでしょうか。具体例を見ていきましょう。

 

就職先を見越した研究室選び

就職に向けた動きは、学部や研究室を選ぶ段階から始まります。製薬会社を希望する場合は、やはり生物学や化学、薬理学を専攻する学生が多いでしょう。また研究室によって得られるスキルが異なるため、その辺りも加味して選ぶことになります。研究室によっては特定の製薬会社と共同研究を行っているなど、コネクションがある場合もあります。

長期インターンシップによる実績作り

長期インターンシップは、実務経験の実績を作るうえで極めて重要なプロセスです。そして企業側は、インターンで使える人材を見極め優先的に採用したいとも考えています。従って、長期インターンシップは就職成功への有効なカードであり、学生のほとんどが取り組むといっても過言ではないでしょう。
インターン先を見つける方法は主に2種類、大学や民間の求人情報サイトから見つけるパターンと直接企業に直談判するパターンです。希望する企業や職種でインターン募集がなければ、調剤薬局やサプリ会社など関連した分野の企業をインターン先に選ぶこともあります。インターンシップでも書類審査や面接があり、まずはこれを突破することが最初の関門となります。

スカラシップの取得

先にも述べたように、スカラシップを取ることは成績優秀者を意味します。スカラシップの種類は、全米規模で募集するものから学内の特定の学部のみが対象の小規模のものまでさまざまです。取得すれば書類選考時に企業に提出するレジュメ(履歴書)にて自分を売り込むポイントとして大いにアピールできるので、学生は積極的にスカラシップに応募してアピールポイントを増やそうと奮闘します。

サークル、コミュニティ、SNSの活用

人とのコネクションを広げておくことも、就職活動を有利に進める手法のひとつです。人脈を通してインターンシップの機会が得られたり、最新の情報が手に入ったりすることが往々にしてあるためです。また、大学の製薬関連サークルに所属したり、民間の製薬コミュニティに参加したりしてセミナーやパーティーを通して人脈を広げるのも、就職活動を有利に進めるきっかけになり得ます。
さらに、SNSの活用も有効です。例えば「LinkedIn」はビジネス系SNSとしてアメリカで大いに活用されているため、教授や卒業者を通して人脈を広げていくことができます。

 

おわりに

アメリカでは、小さい頃から「自分は何をしたいのか」「そのためにはどうすれば良いのか」ということを問われる環境で育ちます。そのため、自分の希望する夢をかなえるために積極的に動く学生が多いといえるでしょう。アメリカでは、待っていても機会は与えられません。自分の進みたい道を行くには学生のうちから目標を明確に持ち、先を見据えて自らつかみに行く姿勢が重要なのです。

 

※本記事の内容は筆者個人の知識と経験に基づくものであり、運営元の意見を代表するものではありません。
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長谷川 サツキ

ライター・翻訳者。筑波大学卒。渡米後に、カリフォルニア州の現地保険エージェントにて医療保険部スーパーバイザーとして勤務。その後薬剤調合師の国家資格を取得し、調合師としての勤務経験を経て、夫の転勤を機にライターへ転身。アメリカ生活、海外ルポ、メディカル、ヘルスケア、ライフスタイル、法律、金融等をテーマに情報を発信している。

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