未来を考える

2018/04/06

皆さん、こんにちは。以前、3回にわたってお送りした「後悔しない就活のコツ」は読んでいただけましたか?
前回のシリーズでは、キャリアカウンセラーとして毎日多くの学生と会い、相談を受けるなかで感じたことや、学生から多く寄せられる質問に答える形で就活の進め方について説明しました。

さて、今回は「自己PR」にテーマを絞ってみようと思います。

皆さんは、自己PRと聞いてどんなことを思い浮かべますか? 「自分の強みや長所を言うこと」と思う人がほとんどだと思いますが、果たして本当にそうでしょうか。企業は自己PRをどう捉えていると思いますか?

今回は自己PRについて、実際私が目の当たりにしたことを紹介しながら、皆さんと一緒に考えていこうと思います。

 

「自己PR=自分の強み」ではない!?

「自己PR=自分の強み」ではない!?

そもそも(自己)PRとはなにか

多くの学生が「自己PRが分かりません」「自己PRがうまく書けません、話せません」と相談に来ます。一方で、「行動力がある」「協調性がある」あるいは「相手に寄り添うことができる」という強みを自己PRにする学生が多く、そのエピソードもパターン化されています。

例えばこんな感じです。

  • 強みは「行動力」
    エピソード:留学先で経験したことや、1人で海外に行ったときの話。
  • 強みは「協調性(チームワーク)」
    エピソード:ダンスや軽音といったサークル活動や部活、あるいはゼミの話。
  • 強みは「相手の立場に立って寄り添える」
    エピソード:カフェやアパレルショップといった接客中心のアルバイトの話。

もちろん、これはあくまでも私の個人的な感想であり、そうでない例もたくさんあります。また、こうした内容が良くないと言うつもりもありません。ただ、あまりにも同じような強みとエピソードの組み合わせであるため、何となく想像がついてしまいその人に対する関心が薄くなるというのが正直なところです。

しかし、学生一人ひとりに話を聞いてみると実に人それぞれで、「なぜそうした部分を伝えないんだろう?」と不思議に思ってしまいます。学生に尋ねると「ネットにそう書いてあったから……」「キャリアセンターの人や先輩に言われたから……」。

自分のことをネットやほかの人に任せてしまっていいの? それであなたは納得するの? ……そんな問答を学生と繰り返すのです。

 

自己PRに対する思い込み

そもそも「自己PR」とは、就職活動において使われる専門用語といっても過言ではないでしょう。「自己紹介」は、皆さんもよく知っていると思います。

では、この「PR」にはどんな意味があると思いますか? 実は「public relations」の略で「企業、行政、学校、NPOなどあらゆる組織体が、それを取り巻く多様な人々との間に継続的な“信頼関係”を築いていくための思考・行動」を言うのです(日本パブリックリレーションズ協会のサイトより)。これを自己PRに当てはめてみると、「(皆さんが)企業と継続的な信頼関係を築くために、自分自身のことを知ってもらい、理解を深め合うための行動」と言えそうです。

このように、その意味を考えると「自己PR=強みを伝える」ことだけではなく、もっと広い意味で捉えることができると思いませんか。もちろん、強みも皆さんを形づくる大切な要素のひとつ。しかし、それがすべてではないということを心にとどめておいてください。

それでは、自己PRについて、実際にあった話を基に改めて考えてみましょう。

 

自己PRと実際の本人との“違和感” 〜実例で考える

グループディスカッションセミナーで

グループディスカッション(以下GD)対策セミナーを行ったときのことです。模擬GDを始める前に、一人ひとり簡単な自己PRを言ってもらい、私はそれをメモに取り20分間のGD中、参考にしました。

模擬ディスカッションを始めて少したった頃、あるグループの静けさが気になり様子を見ていると、司会役を務めている男子学生(A君)の声ばかりが響き、他の人はうつむき加減で黙ったままでした。

「私の意見は○○ですが、皆さんはどうですか?」
「次に○○について話をしたいと思いますが、皆さん良いですか?」
「何か意見はないですか?」

一方的に畳み掛けるような質問に、ほかのメンバーはひと言ふた言返事をしたり相づちを打ったりする程度で、とてもディスカッションという雰囲気ではありません。そこで私は、書き留めたA君の自己PRメモを見てみることに。そこには「相手の立場に立って寄り添う。エピソード:カフェのアルバイト、接客」とありました。

もし、皆さんが企業の担当者だったらA君のことをどう思うでしょう?

もちろん、数分間のGD中だけでは判断できない部分も多いのですが、A君の「相手の立場に立って寄り添う」という強みは、「接客」という限られた場面でのみ表出するもの?と受け取られても仕方ありません。少なくともその模擬GD中でA君の強みが表れることはなく、逆に自己PRからイメージした人物像と実際との違いが印象に残ってしまったのです。

 

ほかにもあるこんな違和感

ESや履歴書を読んで思う違和感も多いです。自己PR(あるいは自己の特徴)には「コツコツと積み上げる力があります」「真面目に取り組みます」と書かれていますが、文字の大きさや書き方がかなり乱雑で、とてもそういう人が書いたものには見えません。「下書きなので」「練習用だから」と言う学生もいますが、エピソードに書かれた場面においてのみ「コツコツ」「真面目に取り組む」のかと、首をかしげてしまいます。

また「行動力があります」と自己PRしている人が、自分で予約したセミナーや個別相談を無断キャンセルする……。別の意味で行動力はあるのかもしれませんが、企業の担当者は苦笑いするでしょう。旅先や留学先でしか自主的に行動することはできないのかな……と私は思ってしまうのです。

さて、皆さんの自己PRはどうでしょうか? 読む人、会う人に実際の自分と違う印象や違和感を与えていませんか?

 

就活における自己PRの目的・考え方

就活における自己PRの目的・考え方

自己PRとは「自分らしさ」を伝えていくこと

「後悔しない就活のコツ」シリーズの第2回では、自己PRの考え方として以下のように説明しました。

「(もともと備わっている)あなたらしさ」を伝えるもので、普段から発揮していたり、表れていたりするもの

つまり、そうした「あなたらしさ」を仕事で発揮することができる、あるいは企業で活かすことができ、それがその会社にとってプラスになると伝えていくことなのです。

仕事は日々行うもので、毎日毎日繰り返されるものです。そして、職場という環境も基本的にはいつも同じで、大きな変化が毎日起きたり特殊な状況が続いたりすることはほとんどありません。だからこそ、企業は皆さんの普段の様子や物事に対する考え方・取り組み方を知りたいと思っているのです。

 

いろいろな角度から自分を把握する

一般的に言われている「強み」も自分らしさの大切な要素です。ただ、単純に「行動力がある」「協調性がある」ではなく、どんな考えがあってそういう行動を取るのか、どんな必要があって協調性を大切にしているのか、もっと自分自身の内面を深めてみてください。

日々心がけていることやモットー、大切にしていることなど、普段はあまり意識していないことにも目を向けてみてください。そして、それを自分の言葉で表現することもポイントです。きっと、自分らしさ=強みも広がっていくのではないでしょうか。

もう一度言いますが、社会人にとって仕事は日常のことであり、特別なことではありません。つまり、何か大きなことやスゴイことを伝えることだけが自己PRではないのです。あくまでも、その企業と信頼関係を築いて深めていくために、自分らしさを伝えることなのです。

いろいろな角度から自分を把握することで、自分自身の軸も見えてくるでしょう。その軸を中心に、ESや面接などで何を書くか、どう話すかを考えていけば、違和感は生じにくくなるはずです。

 

おわりに

自己PRとは、自分の強みを言うだけでもなく、自分の立派な点や自慢を語るものでもありません。大切なのは、どれだけ自分を把握して理解したうえで、伝えようとしているか、ということです。しっかり自分に向き合っていれば、自ずと相手に伝わるもの。自分のことは自分にしか分からないし、こうした機会を活かすことが働き始めた後のチャンスにもつながっていくのです。ネットやほかの人に委ねるのではなく、みんなと同じように考えるのでもなく、ぜひ自分の内面に向き合い企業と関係を築くために、自分にしかできない自己PRをしていきましょう。

 

※本記事は取材により得た情報を基に構成・執筆されたものであり、運営元の意見を代表するものではありません。
「考えるプロ」による、アタマの使い方・いちばんたいせつなトコロ
タグ一覧 就活
記事一覧へ
環 みなこ

編集・制作の仕事に従事したのち、キャリアコンサルタントの資格を取得。女性の再就職支援や学生の就職活動支援をはじめとする支援業務に携わる一方、精神保健福祉士(PSW)の資格を取得。キャリアのみならず、多面的な視点での支援を目指して奮闘中。 ここ数年は新卒の就活支援をメイン業務とし、大学のキャリアセンターや然るべき出先機関に出向いて学生のさまざまな悩みや不安に耳を傾け、ともに歩み進める日々を送っている。

関連記事