未来を考える

2017/01/24

著書『「意識高い系」という病 ソーシャル時代にはこびるバカヤロー』(2012)、『「就活」と日本社会―平等幻想を超えて』(2015)をはじめ、鋭い視点と直球の回答で、就職活動や、現代の社会における働き方についてメッセージを発信し続ける常見陽平氏。

目まぐるしく変化する世の中において、これからの若者は、働く場所をどう選ぶべきなのか。どのような働き方がもとめられるのか。あらためて「就職活動」について語っていただきます。今回は、「どのように業界、企業を選べば良いのか?」という素朴な疑問に対する、常見さん流「企業選びの法則」についてです。

「俺にオススメの会社を聞くな」

2018年度就活の論点「企業選びの法則」01

「いま、オススメの会社を教えてください」

就活を始めたばかりの学生から、毎年、こんな無邪気な質問をいただきます。気持ちは分からなくはないです。ただ、私は絶対にこの質問に答えないことにしています。

その人のことを深く理解しなければ、ある業界や企業をオススメすることはできないからです。しかし、何より入社する企業は自分で調べて、考えて、決めないと、後で本人が後悔するからです。

「これから成長しそうな業界・企業を教えてください」

この質問ならまだわかります。グローバル化、IoTの時代、AIやビッグデータの活用、超高齢化社会、少子化など、世の中の変化を読み解くことで今後の業界・企業の成長は見えてきます。各業界、企業の動きを分析したレポートは、多数発表されています。各社も今後の成長戦略を発表しています。

「儲かっている業界・企業はどこですか?」

これも、まだわかりやすい質問です。各社が発表する業績に関する資料や、東洋経済新報社が出している『会社四季報』などの資料で確認することができます。

「儲かっている」業界や企業が気になる人は、おそらく「いくらもらえるか?」が気になっているのでしょう。平均年収やある年齢でのモデル賃金などですね。これも前出の『会社四季報』や、ビジネス誌の特集などで知ることができます。

このように、業界・企業に関する気になる情報は、意外にも簡単に手に入れることができます。しかし、これらの情報が分かった「だけ」で、皆さんは納得した業界・企業選びができるでしょうか?──違います。これらの情報が揃ったところで、決定的に抜け落ちているポイントがあるのです。そのポイントとは、その企業の「組織風土」や「働き心地」です。これが分からないと(少なくとも関連する情報がないと)不安になることでしょう。

より具体的に言うと、こういうことです。いくら成長性が高くても、儲かっていても、明らかに自分と価値観が違っていたり、組織風土が合わない場合は、続けるのがきつくなりますよね。就職先を選ぶ上では、単に業績が良いかだけではなく、肌が合うかどうかも相当大事なのです。これは、大学に入ってどのサークルを選ぶかという話にも似ています。仮に、「テニスをやりたい」と考えていても、体育会並みに練習するところなのか、いわゆるリア充なテニスもアフターの飲み会や合宿なども充実しているところなのか、テニスラケットがいらないテニスサークルなのか。選択肢はいろいろです。就活においては、ある業界を志望していたとして、どの企業を選ぶのかという話でも同じことが言えます。

このように、学生が質問してくる無邪気な質問に対する答えは意外に奥が深いのです。答えは簡単ではないことに気づきましょう。

 

思い込みを捨てよう

納得のいく業界・企業選びをするためには、情報を足で稼ぐことが大事です。これにより、その業界・企業に関するイメージや誤解を徹底的に壊し、再構築しましょう。

就活では、その業界・企業で勤めている人の話を直接聞くことを強くオススメします。社会人と直接話をすると、具体的な仕事の中身もよくわかります。何より、上手く質問をすることによって、ニュースでは紹介されていない話、就職ナビなどの求人広告には載らない情報をつかむことができます。これこそが、就活で最も仕入れるべき情報です。業界・企業選びの判断材料になりますし、選考時の志望動機などを考える際に、決定的に役立つ情報です。

どの企業に応募するべきかを決断する材料になります。さらには、説得力のある志望動機を考えることができます。毎年、就活であっという間に落ちる学生の特徴と言えば、「雑な業界説明が志望動機になっている学生」です。具体的に言うと食品メーカーを受ける際に「食を通じて世界を幸せにしたい」と主張するような学生です。これでは厳しいです。その企業ならではの強み、働きがいなどを、社員から直接聞くと、志望動機の説得力も違います。

実際に、このようなことがありました。大手広告代理店の社員と学生が会話する場に同席した時のことです。その場にいた生意気そうな男子学生が鬼の首をとったかのように「ネットの時代だと、大手広告代理店は厳しいんじゃないですか?」と発言しました。大手広告代理店の社員は、苦笑しながら、デジタル展開のためにかなりの投資をしていること、さらには、むしろテレビや新聞などの旧来のメディアに強いことのメリットを説きました。ネット関連のベンチャーが台頭していますが、彼らがテレビや新聞の広告枠を売買することはできません。いわば既得権のようなものですが、古いメディアに強いことが、逆に強みになりえるという話でした。社会人に直接会うと、このような話を聞くことができます。

求人広告に掲載されている情報というものは、求職者の誰に対しても客観的に言い切れるものが大多数です。ゆえに、現在、現場で起きている変化などは載りにくいのです。例えば、ワーク・ライフ・バランスに関する制度などが求人広告には掲載されていない企業でも、実際は、社員の事情に合わせて対応していたりします。ただ、完全に誰にでもそう対応するとは言い切れないので、求人広告には載らないのです。

このように、就活をする上では、情報を足で稼ぐことが大事です。特に、直接人と会うことによって求人広告には載っていない情報を手にいれることが、納得のいく業界・企業選びのポイントです。

 

就活は先手必勝、先行逃げ切り

2018年度就活の論点「企業選びの法則」02

もう一つ、就活の大事な法則をお伝えします。それは、就活は「先手必勝」「先行逃げ切り」だということです。要するに、早めに始めましょう、ということです。

就活の早期化・長期化は、学業阻害などの観点から、問題視されています。大学教員として、私もこの件は気になっています。入学してからすぐに就活のことが話題となります。あっという間に就活が始まります。大学は就職予備校なのかと思ってしまう人もいることでしょう。

実際は、納得のいく就活をする上でも、大学生活を充実させる意味でも、就活は早め早めに始めた方が良いのです。何も、いきなり就活対策一色にする必要はありませんが、就活のことを早めに意識することは有益です。

前述したように、就活においては、社会人から直接話を聞くことが大事です。早め早めに多くの社会人の意見を聞くと、考えも深まります。自分の考えの甘さにも気づきます。大人とのコミュニケーションやその際のマナーも学ぶことができます。どんなアピールが企業に響くか、自分の強みは何かなどを知ることもできます。早くから始めている就活生は前向きなので、ポジティブな仲間と知り合う機会にもなります。

自分の行きたい業界・企業に対する理解も深まります。よりわかりやすくいうと「これだ!」「これじゃない!」という感情が明らかになるわけです。これは実に大事な感覚です。憧れの業界・企業に対して「実は理想と違った…」と、がっかりすることもあるでしょう。でも、それでいいのです。結果として、最初は想像もしなかったような業界・企業に進むこともあるでしょう。そのためにも早めの行動が大事なのです。

求人動向やスケジュールなどは常に変化しますが、就活の基本はあまり変わりません。自分の頭で考えること、そのために自分の足で情報を稼ぐことです。早め早めの方が、結局のところ楽しい学生生活を送ることができます。就活を少しでも楽しく、納得感のあるものにするために、このような姿勢を大切に、やりきってください。

 

※本記事の内容は筆者個人の知識と経験に基づくものであり、運営元の意見を代表するものではありません。
「数字でみるジェネリック医薬品&ジェネリック医薬品のリアル」ダウンロード
タグ一覧 就活
記事一覧へ
常見 陽平

一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、バンダイ、クオリティ・オブ・ライフ、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。「働き方」を中心に、執筆、講演、調査活動に没頭中。著書に『「就活」と日本社会』(NHK出版)『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)など。

関連記事