製薬業界を知る

2017/03/03

前編では、沢井製薬の関東工場を訪問し、医薬品の製造工程を通してクリーンな工場の様子を紹介しました。後編では、工場で働く「人」の想いに迫ってみたいと思います。

そのためのインタビューにご協力いただいたのは、沢井製薬関東工場長の蓮尾 俊也(はすお としや)さん。社会からのニーズの高まりを受け、市場が急成長している昨今のジェネリック医薬品業界では、どのような人材が、どのような想いで仕事に取り組んでいるのでしょうか?

沢井製薬株式会社 関東工場長 蓮尾俊也さんプロフィール

取材協力:
沢井製薬株式会社  関東工場長 蓮尾 俊也(はすお としや)

製薬会社の製造、サプライチェーン、生産技術等、一貫して医薬品生産関連業務に従事。2016年4月、関東工場長に就任。同年5月より鹿島工場(茨城県神栖市)管掌を兼任。

好きな言葉は「KISS:Keep It Simple Stupid」、「出る杭は打たれる、出過ぎた杭は打ちにくい」、「諦めなければ失敗ではない」。

 

医薬品づくりの現場で働くということ

――はじめに、蓮尾さんが製薬会社の工場の仕事を選んだ理由を聞かせていただけますか?

学生のときに民間企業から来た先生から話を聞いて、工場で多くの仲間とモノをつくることに興味を持ちました。「モノづくりがしたい」というよりは、「モノづくり」という一つの仕事を通して様々な人と関わっていく、そうした工場という場所が好きだと思ったんです。また、その先生からQC活動(Quality Control活動の略称。製品の品質向上を目的とした活動の総称)というお話も聞き、会社に入る以上は、少なからず管理職となりチームを組んで大きな仕事をしたい、人の輪の中で中心的な役割を担いたいという気持ちがありましたね。

実際、社会人となり2年目には工場内でQCサークル(現場の生産者が自発的に品質管理を行うボトムアップ型の活動)をはじめました。最初は本当に大変で、周囲から「こんなに大変なのに続けていくの?」という声も上がりましたが、粘り強く一つ一つ取り組んでいきました。活動の成果が表れ始めたのは5年程経った頃からでしょうか。日々改善していくという仕事の考え方として、当時の活動はいまにも繋がっていると思います。

関東工場長 蓮尾氏インタビュー1

 

――いまにも繋がっているとのことですが、工場長として心がけていることはありますか?

先程もお話しした通り、工場の仕事は、「皆でいいモノをつくる、いい仕事をする」という点が魅力であると感じています。私自身、ずっと「人」が好きですから、工場長として、何よりも人を知ることが大切だと考えていますし、できるだけ人との関わりを多く持ちたいと思っています。

できる限り現場には顔を出しています。どこにでも顔を出すので、工場の仲間から「工場長はサイボーグなんじゃないか」という冗談を言われることもありますが(笑)。一人遅い時間に仕事をしていたとき、ある社員がふと私を訪ねてきたことがあって。「蓮尾さんならまだいるかなと思ったので。」といって、仕事の相談をしに来てくれた時は嬉しかったですね。

 

――これまでのキャリアの中で、技術の進歩や現場の変化もあったかと思います。仕事をする上でご自身が変わったことはありますか?

私が働きはじめたころは、パソコンすらない時代でした。5インチディスクのコンピュータが販売されたときには、上司に「使いたい」と打診し、猛烈に説得して導入させてもらったのを覚えています。いまではタブレットひとつで、どこでもインターネットに繋がるので、本当に便利になりましたね。

そうした新しい技術や仕組みを取り入れる、という意味での変化はありましたが、仕事の根本は変わりません。常に、その時その時のベストを尽くすということです。それは、立場や役職といったキャリアが変わった場合でも同じです。

 

――それでは、工場で働く人について感じることは?

一般論ですが、昔に比べると、仕事に対して淡白な方が多いということをよく言われていると思いますが、皆さん自分で選んだ仕事ということで、熱意を持って取り組んでいらっしゃると思います。関東工場でも、話をすれば、各々が「いい仕事をしたい」という想いを持っていることがわかります。

あえて言えば、はじめの一歩を踏み出すのに臆病になっている人もいるかと思います。出来なかったら格好悪い、失敗するのが嫌だとか!――。そのような面を少し除いて頂くと、もっと活気を感じるのかもしれませんね。

 

――一歩踏み出すために必要なのはどんなことでしょう?

私としては、「諦めなければ失敗ではない。」という言葉を大切にしている通り、上手くいかないこと=失敗ではないと考えています。一回、二回とチャレンジしていくうちに道は開けます。そして、思うような結果が出なくても、経験を沢山して、自分の糧にしてほしいですね。

もう一つ、周囲から可愛がられる人というのは、いらっしゃいます。それは、一生懸命な姿で仕事に打ち込んでいる人です。そんな人は、格好悪いなんて思わず、どんどん前に進もうとしますから。自然と応援したくなるものです。ですから、若い人ほど勇気をもって一歩踏み出してほしいですし、上司はそれを後押しする存在であってほしいと思っています。

関東工場は、この数年で働く社員が急増しました。組織を担う者として、どれほど工場の規模が大きくなったとしても、人と人とが密に関わる組織であり続けられるように皆が、一歩一歩踏み出しあえるようにしたいと思っています。

 

ジェネリックメーカーの仕事の楽しさは「課題解決」にあり

関東工場長 蓮尾氏インタビュー2

――新薬メーカーとジェネリックメーカーの工場に違いはあるのでしょうか?

「製造」という意味で言えば、違いはありません。違いがあるとすれば、生産品目の数と量ですね。

新薬メーカーであれば少ない品目数を大量に生産しますが、ジェネリックメーカーは1社当たりで取り扱う品目数が多いため、いわゆる多品目小量生産という製造ラインになります。そのなかで品質の高いものを効率よく生産し、安定的に供給することが求められます。

医薬品の種類が変われば、使用する機械も違いますから、いかに品目ごとの機械を効率的に切り替えるかというところがポイントになってきますね。

 

――ジェネリックメーカーの中でも、沢井製薬で働く楽しさについてうかがえますか?

製造業の要は、QCD(Quality、Cost、Deliveryの略。品質・費用・納期を守って生産すること)と安全です。

沢井製薬はジェネリックメーカーの中でも扱う品目数はトップクラス、毎年新製品も発売されます。品目数が多いということは、その分製造するにあたっての課題や検討事項も多い。トラブルなく製造できている品目でも、潜在的な課題を発掘して解決していかなくてはなりません。そういった意味で、技術者としてレベルアップしたい人にとって、この上ない環境ではないでしょうか。

品質についても、製薬業界全体の動きですが、年々求められる基準は高くなってきています。そうしたハードルをクリアして仲間と達成感を味わえるということも、魅力の一つだと思います。

 

――たくさん取り組める課題がある中で、活躍する人はどのような人なのでしょうか?

一つだけ挙げるとしたら、「人と関わることが好き」ということは言えるのではないでしょうか。製造と聞くと、黙々と作業するイメージを持つ方が多いと聞きますが、少なくとも沢井製薬では、人との関わりが大切になってきます。

工場の中には、様々な職種があり、同じ仕事でもそれぞれの個性が出るものです。だからこそ、自分のなりたい姿をしっかりと持っていることが大切ですね。人は、自分がなりたい姿以上のものにはなれませんから。

学生の皆さんは、働いたことがないので分からないと思うかもしれませんが、分からないなりに自分の将来像を描いてみて欲しいと思います。活躍する道は一つではありません。

関東工場長 蓮尾氏インタビュー3

――学生さんに、これだけは伝えたいということはありますか?

とにかく「仕事をしたい!」という想いを持って、沢井製薬の扉を開いてほしいですね。

会社で仕事をして、社会の役に立つことでお金をもらい、社会人になる、その覚悟を持ってきてほしいです。最初は慣れないことも多いので、苦労をすることも当然あるでしょうが、結果を求められ、それに応えていくということの繰り返しで初めて自信もつきます。目の前のことで言えば、日々の計画通りに薬を生産すること、新製品の立ち上げ、新しい機械の導入に伴う課題の解決等、職種によって求められる結果は様々です。そうしたことをクリアしていける課題解決力を鍛えていってほしいですね。

また、中長期的な目線をもって、いま起こっていることだけでなく、将来起こりそうな課題を掘り起しクリアしていける人になってほしいと考えています。

「出る杭は打たれる、出過ぎた杭は打ちにくい」の言葉通り、どんどん前に出てくる人を歓迎する風土が沢井製薬にはありますから。

 

まとめ

蓮尾さんへのインタビューを通して、多くの人が力を掛け合わせながら、一つの医薬品を世の中に生み出しているのだと知ることができました。ジェネリック医薬品業界は、市場が拡大し注目されていますが、その最前線に立つ人の想いを感じていただけたでしょうか?

今回の取材を通して、モノ作りの現場で働く楽しさを知ってもらえたら嬉しく思います。

 

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SCIENCE SHIFT編集部

当メディアの編集部員です。学生の皆さんに今お届けすべき話題は何か?を日々考え、より良い情報を発信していきたいと思います。

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