仕事を知る

2017/12/21

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新モデル開発におけるさまざまな必須条件をクリアし、無事に商品発売までこぎつけた日野原さん、上月さん。日々モノづくりと真摯に向き合う、2人のエンジニアが仕事のその先に見ているものとは。

ユーザーのために、作り続けること

ユーザーのために、作り続けること

「WHILL Model C」には、まったく新しい機能として、3G回線も搭載した。

「電動車いすユーザーの方が持つ大きな不安の一つに、『外出先での故障』があります。出先で万一、車いすが動かなくなってしまったら、利用者に大きな負担と心配をかけます。そこでModel Cは、オプションで「WHILL Smart Care」にご加入いただくと、遠隔からバッテリーの状態や機体情報などを確認できる「スマート診断」がご利用いただけます」(上月さん)

「このサービスにより、ユーザーの方にはこれまで以上に安心してWHILLに乗っていただけるようになると考えています」(日野原さん)

また、「WHILL Smart Care」には万が一の時の保険とロードサービスもセットになっており、外出先で万が一動かなくなったときは、離島を除く日本全国、24時間365日無料で担当者が引き取りに駆けつける(年間1万9800円のオプション加入者が対象)。通信機能としてはこのほかにも、BluetoothでWHILLをスマートフォンと接続することで、リモートコントロールで動かせるようにもした。これにより、WHILLを降りたあとで隅に寄せたり、自動車のトランクへの積み込みのために少し動かしたりといった操作が可能になる。

これからの展開としては、日本だけでなく海外での販売にも力を入れていく。すでにModel Aは2016年2月に、アメリカの医療機器の規格を定めるFDAの認可をクリアするよう仕様を変更し、「Model M」として発売を開始している。

 

僕らの作るモノを待っている人たちがいる、ということ

僕らの作るモノを待っている人たちがいる、ということ
2人のエンジニアをはじめ、WHILLのスタッフの仕事に対する原動力となっているのは、「自分たちの製品を心待ちにしている人々が世界中にいる」という思いだ。

会社にはWHILLを愛用する多くのユーザーの声が多数寄せられ、そこからエンジニアたちは製品の改良のヒントを得るとともに、自分たちの仕事の意義を日々確認している。WHILLに乗り始めたことで、以前は日課にしながら歩けなくなってあきらめていた犬の散歩を再開できた、外出の機会が減ってふさぎがちだった気持ちが前向きになった、などの感謝のメッセージが会社に届くことも珍しくない。ユーザーの利便性を向上させるだけでなく、自分たちの製品を通じて「車いすのユーザーに対する世間のイメージ」を変えることも、開発のモチベーションの一つだ。

「以前、弊社のCTOの福岡が『われわれの製品には、責任がある』という言葉を発したことがありました。WHILLが目指すのは、『車いすの開発』ではなく、『歩行領域におけるモビリティでNo.1の製品の開発』です。日本はこれからますます高齢化が進み、日常の歩行に困難を覚える方が増えていくのは確実です。そうした方々に、安全で安心して乗ることができるモビリティを開発するとともに、見かけた人が『すてきな乗り物だね。自分も乗ってみたい』と感じるような製品を作っていきたいと思っています」(上月さん)

 

仕事をする喜び、とは何か

仕事をする喜び、とは何か

2人にとって、WHILLという会社でエンジニアとして仕事をする喜びとは何なのか。日野原さんに聞いたところ、「毎日、昨日の自分は知らなかった新しいことにチャレンジできることです」と答えが返ってきた。

「それまで自分がまったく知らなかった領域についてイチから勉強し、製品の基盤設計へと落とし込むことは、大変な苦労がありますが、実にやりがいのある挑戦だと感じています。前職でやりたかったことが、まさに今できている実感はありますね」

上月さんは「形になったモノが動くのを見るのがうれしいのはもちろん、それを使用するユーザーの姿を見られるのが1番感動します」と語る。実際に、これまで上月さんは新橋の街なかで、日野原さんは新幹線のホームでWHILLに乗っているユーザーの姿を見かけたことがあったという。声はかけなかったそうだが、彼らの作ったプロダクトは、確実にそれを必要とするユーザーに届き始めている。

2010年頃から日本でも新卒や大企業の出身者がベンチャー企業にジョインすることは珍しくなくなった。しかしその多くは、ゲームやアプリ、ITサービスの開発などが中心で、WHILLが手がけるさまざまな技術を必要とするモビリティ開発のような「モノづくり」を志向するベンチャー企業は、まだ日本では珍しい。日野原さんは「モノづくり」で世の中を変えたいと考える学生に、次のようなアドバイスを送る。

「WHILLには僕のように、大企業に勤めてから入社した人もいれば、上月くんのように学生時代から最先端の研究をして、即戦力として入社した人もいます。今皆さんが学んでいることも、突き詰めて研究すれば、必ず企業に入ったときに『即戦力』として役立つはずです。自分が心からやりたい研究を通じて、ぜひ世の中を良くしていってください」

前編:人の役に立つモノを世に出す、という仕事
中編:ユーザーの求めるモノをいかに設計するか

※本記事は取材により得た情報を基に構成・執筆されたものであり、運営元の意見を代表するものではありません。
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SCIENCE SHIFT編集部

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