アイデアを得る

2017/09/28

株式会社POL 加茂倫明さん

取材協力: 加茂 倫明(かも みちあき)さん

1994年生まれ、京都出身。現在、東京大学教養学部理科二類2年生。2016年9月、株式会社POLを創業し代表取締役CEOを務める。2017年2月、理系学生と企業とをつなぐダイレクトリクルーティングサービス『LabBase(ラボベース)』をリリース。今注目の学生起業家の一人。

「周りに流されている人が多いのかな。みんなもっと、考えた方が良いと思うんです」

そう話すのは、理系就活のためのWebサービス『LabBase』を今年2月にリリースし、若き起業家として注目される、東京大学2年生の加茂倫明さん。

加茂さん自身は、これまでにどんな出来事があり、何を考え、どのように「流されず」に自らの道を選択してきたのか? 加茂さんの現在とこれまでについて、また現在加茂さんらが運営する株式会社POLが解決しようとしている「理系就活」に関して思うことについて、SCIENCE SHIFT編集部が聞きました。

 

身近な人の死と、起業と

━━現役の理系東大生であり、昨年9月に株式会社POLを立ち上げられたということですが、これまでの経緯など簡単に教えてもらえますか?

株式会社POL・加茂倫明さんインタビュー「身近な人の死と、起業と」

現在(3回目の)学部2年生です。浪人、休学、留年とコンプリートしているので……(笑)。

大学に入る前は、小学校の時から塾に通い、中学受験をして灘中学・高校と進学し、いわゆる優等生だったと思います。中学生になってしばらくは、普通に部活して、友達と遊んで、ただ学生生活を楽しんでいました。ですが、高2の頃に祖父がなくなったとき、死生観についてすごく考えたんです。なんのために生きるんだろう?とか、自分の人生の目標ってなんだろう?とか。そのときに思ったのが、自分が死んだ後にも、自分が生きた意義を残したい。またゼロに戻るのが嫌というか、自分が生きた余波を残し続けたい、ということだったんです。

これを達成する手段は無限にあると思います。その中から起業を選択した理由は3つあります。1つ目は父の影響で、経済学やビジネスに関する本を小さい頃から読んでいたので、当時からビジネスに興味を持っていたこと。2つ目は、人にあれやれ、これやれと言われてやるのがすごく嫌で、自分がやりたいからやる、という方が圧倒的に楽しいしパフォーマンスを発揮できることがわかっていたこと。3つ目が、僕はたくさんの人に喜ばれたい欲がすごく強いこと。身近な人はもちろん、より多くの人を幸せにしたい、価値提供したい、喜んでほしいみたいな気持ちが強いんです。

その3つを考えたときにふと、起業したら良いんじゃないかと思い始めました。起業したら、ビジネスもできるし、好きなこともある程度追求できて、かなり多くの人に影響を与えられるという、なかなか他にはない道なんじゃないかなと思いました。それで、当時はあまり深く考えずに、高2の時に「起業したい」と言い始めました。

 

起業するために、大学1年から社長の近くでインターン

━━大学入学後は、いろいろな会社でインターンをされたと聞きました。実際やってみて、どうでしたか?

株式会社POL・加茂倫明さんインタビュー「起業するために、大学1年から社長の近くでインターン」

僕は起業したかったので、そのためのステップとしてインターンが一番効率が良いかなと。本もたくさん読みますが、実際に働いた方が、仕事のやり方や起業に必要なスキルや考えが身につくと思ったんです。実際にやってみて、学びはすごく多かった。知識としてはあってもできなかったり、やってみないとわからないことがたくさんありました。あと、実際の場では本とは論理が異なるというか、違う考え方が必要だということにすごく気づきました。

━━違う考え方が必要、というと、具体的には?

例えば、1社目のインターンでは、マーケットリサーチをして、その上でその会社がやるべき新規事業を考えるというミッションがありました。その新規事業の考え方って、本でも方法論はたくさん学べますよね。例えば、マーケットリサーチをし、海外事例を調べ、日本だと市場規模がこれぐらいだからこういうビジネスモデルでこれぐらい収益性があるんじゃないか、など。ロジックで考えがちだったし、そういう本が多かった気がします。でも、現場で必要とされているのはそれだけではありませんでした。例えばひたすらユーザーと対話したり、仮説を持って多くの人に会ってみたり、いかに小さく検証するかを考えて実践してみたり。

━━いくつかのインターンの経験を経て、起業に踏み出したんですね。

インターンシップでは本当に良い経験をさせてもらいました。半年間休学してシンガポールにいき、現地でダイエットのサービスを立ち上げたり、スマホのダイエットサービスを作って黒字化まで持っていったり、そういうビジネスの場で小さな成功体験をして、良い意味で勘違いをしたんです。僕は英語があまりしゃべれないのですが、シンガポールで日本語が通じない中でビジネスを立ち上げられたから、日本やったらいけるやろ!と、良い意味?で強気になりました(笑)。それで起業への心理的ハードルはすごく下がったのかなと思っています。

 

とりあえずやってみたら、いつの間にか「やりたいこと」に

━━やりたいことがない、と悩んでしまう学生も多いと思います。加茂さんはなぜ、行動し続けることができたのでしょうか?

「やりたいことがない」という人は周りにも結構いるのですが、僕としては、やっていくうちに、それがやりたいことに変わってきたりするんじゃないか、と思うんです。

例えば起業家の中にも、何か原体験があって、「この課題を解決したい」という強い思いからビジネスを作っていく人もいますが、それ以外のモチベーションでスタートする人もたくさんいます。この市場が面白そうだから、あるいは海外でこれが流行っているからなど、最初は数ある中の一つという感覚でやり始めたものが、やっていくうちに愛着や思い入れが湧いてきて、それがすごく楽しくなるし、その事業が抱える課題を本気で解決したい、という思いが強くなっていく。そういうパターンが実際はとても多いと感じます。

やっていくうちに、それが「やりたいこと」に変わるというか、思いが強くなるというのは僕もすごく感じています。なので、やりたいことがないんだったら、なんかしてみたらええんちゃう?と思いますね。

僕自身、『LabBase』を始めたときは研究室に所属していたわけではないので、当事者として研究で忙しい人の課題を感じていたわけではなかったのですが、やっていくうちに今は本気でその課題を解決したいと、何十倍にも思いが強くなっているのは感じます。

 

「好き」を追求すること

━━とりあえずなにかやってみて、そこで成果を出す「コツ」みたいなものはあると思いますか?

株式会社POL・加茂倫明さんインタビュー「好きを追求すること」

僕の場合は、自分のなかの「好き」を追求している感じはありますね。例えば、僕はピアノを4歳ぐらいからやっていたのですが、コンクールに出たり、一定の成果は出したと思います。音楽は今もすごく好きですね。あとは、勉強も好きだったのでやり続けました。塾に通っていたのでずっと成績は良かったですし、考えること自体が好きになりました。そこは親にもすごく感謝しています。

━━勉強が好きだったんですね。ちなみに小さい頃、不得意な教科とかありましたか?

家庭科とか、すごく苦手でした。好きなことは追求するんですが、自分に興味のないことを粛々とやり続けられない、というのがすごくあって。特に裁縫とかは、意義を感じられずに放棄してしまいましたね。ナップサックとか作らず買ったらええやん!と思ってしまって(笑)。それで赤点だったんですけど。頑固というか、わがままかもしれないです。自分のやりたいことをやりたい、という。

 

決められた仕組みの中で動く必要はない、ということ

━━気乗りしないことも何とか耐えて克服する、というよりは、好きなことをやっていたら今につながった、ということですね。

はい。やる意義を感じられないことをやるのが嫌で、好きに集中していたら結果的にそっちが伸びたという感じです。

なんていうか……、僕から見ていると、好きなことや、自分のやりたいことをやってない人が多いなと感じていて。少し偉そうな意見になってしまいますが、自分の頭で考えずに、周りが作った流れに沿って行動する人がすごく多いと思います。

例えば受験もその典型ですよね。本質的には、どういう勉強がしたいか、どういう人がいる大学に入りたいかなど、「自分が」どのような要素で進学先を決めるかを考えたら良いと思うのですが、「偏差値が高いところに入るのが偉い、すごい」「東大が一番」「医学部が一番」とかそういう通説みたいなものに流されて決める人がとても多いですよね。

就職活動も同じです。相当多くの要素があるので、そこを本質的に考え抜いて決めるべきなのに、一部の要素で決めるようなレールが敷かれていて、その中だけで動いている人が多いなと思っています。もっと、自分の意思を追求して良いんじゃないかと。好きを追求して、周りの目を気にせずにやったら良いと思うんですよね。

 

流されない。自分の頭で考えよう

━━自分のやりたいことを考え、行動してきた加茂さんから見て、そうではない学生や就活生、どうしたら良いと思いますか?

先ほど挙げた例などは、社会の仕組みによって影響を受けている部分も大きいと思うので、必ずしも本人だけに問題があるわけではない、というのが前提ですが……、もっと自分の頭で考える、自分の人生を生きる、という発想は持った方が絶対幸せだろうなと思います。自分は何にワクワクするか、どんな人生が幸せか、自分が人生で達成したいことは何か。やりながら見えてくる部分もあると思いますが、そういうことを徹底的に考え抜く。そしてそれらを達成できている状態が一番幸せだと思います。だけど、それをやらずに生きている人がすごく多いと思うんです。

━━理系就活についていうと、どんな状況だと思いますか?

研究に没頭していて、就活の情報もあまり入ってこなかったりする。そうすると、研究室の推薦やOBの就職先など数少ない選択肢の中で、なんとなく決めてしまっている人もいると思います。でもそれって、流されているんですよね。自分で、本質的にどういうところにいくべきかを、ある程度の視野を持って考えられていないので。どこに就職したとしても、その先長い人生なので、世間一般の評価や見栄えばかり気にせず、自分が興味を持てそうなところに行くべきじゃないでしょうか。きれい事ではなく、本気でそう思います。流されず自分で考える。それが本質的に大事かなと。

例えば『LabBase』では、自身の研究について書いておくだけで、それを評価する企業から声がかかります。そうすると「自分はこんな業界や企業からも欲しがられているんだ」という気づきになったり、その出会いからキャリアについて考える機会を得られたりすると思うんです。今まで見えていなかった選択肢を増やす、気づきを与えるというのが今の『LabBase』の本質的な存在理由です。ユーザーに『LabBase』で出会った企業に就職してほしい、とは思っていません。他の選択肢で出会った企業の方がいいなと思ったら、そっちに行くべきだと思います。『LabBase』では利用企業も厳選しているので、良い企業が集まっている自信はありますが(笑)。『LabBase』によって、自分が本質的にどこに行きたいかを考えることにつながったら……、とてもうれしいです。

━━最後に、理系学生に伝えたいことはありますか?

株式会社POL・加茂倫明さんインタビュー「流されない。自分の頭で考える」

やはり、流されずもっと自分で考えるということと、もしやりたいことがないのであれば、まずはなにかをやってみたら、と。流されるなというところにプラスすると、自分で多少やりたいことをわがままにやっても、別に死なないんですよね、絶対。今の日本で、路頭に迷うとかも絶対ないなと思うので。なのでそこは皆が思っているほどリスクじゃない。周りと同じことをやってたら周りと同じ人になるだけなので、もしかしたら、周りとちょっとずれた行動をしてでも自分のやりたいことを追求した方が、結果的に幸せになる可能性が大きいんじゃないでしょうか。

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SCIENCE SHIFT編集部

当メディアの編集部員です。学生の皆さんに今お届けすべき話題は何か?を日々考え、より良い情報を発信していきたいと思います。

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