スキルを磨く

2017/04/20

堀 正岳さんの連載第4回、テーマは前回に引き続きタスク管理です。

前回のDoingリストは、言わば「今」を整理するもの。今回の「GTD」は、より長いスパンのタスク管理の方法です。

GTDは、単なる備忘録を超えた、人生に影響を与える可能性があるメソッド。仕事だけではなく、研究も就活も家の用事も、全てに「効く」はずです。

社会人になり、ある程度仕事を任されるようになると、あなたがやるべき仕事はどんどん増えていきます。すぐに手を付けないといけない仕事、相手にまずは電話をしなければいけない仕事、来週の会議までは始められない仕事、オフィスでできる仕事、打ち合わせに行かないといけない仕事……、などといったように、それぞれの仕事に割り当てる時間と場所は、次第に錯綜するようになってきます。

 

タスク管理 GTD

研究室で、一人で実験をおこなっている人でも同じです。いま進行中の実験、準備をするべき実験、まとめるべきデータ、書くべき報告書などといった作業が互いに優先順位を争って、頭が混乱していきます。

やがて、締め切りが近い順に仕事に手を付けているうちに、心のなかではいつまでたっても終わらないモグラたたきゲームをしているような状態になることもあるでしょう。この状態は、次にどの作業をどの手順で実行すれば楽になれるのかがわからないことが原因です。

こうしたストレスから開放されるために生み出されたのが、アメリカの起業コンサルタントであるデビッド・アレン氏が考案した「ストレスフリーの仕事術」、”Getting Things Done” (GTD)です。

GTD は本一冊を要するくらいに複雑で奥深いですが、基本をおさえて実践するだけでも、膨大な仕事をさばけるようになります。今回は GTD の基本についてご紹介し、ストレスなくこなせる仕事量を増やす工夫について学んでいきたいと思います。

 

GTD の基本は、「頭を空にする」

タスク管理 GTD

デビッド・アレン氏は GTD を提唱した著書『ストレスフリーの仕事術』のなかで、「頭を空にすること」の重要性について繰り返し述べています。

仕事上のストレスの多くは、「あれをやっておかないといけない」「これも手を付けないといけない」といったことを頭のなかで記憶だけで管理していることから発生します。 それを防ぐために、GTD ではまず数枚の紙を前にして、頭の中にある「やるべきこと」をすべて書き出していくということをします。

気になっていることや、忘れてはいけないことを、すべて箇条書きで書いていくのです。できれば職場だけでなく、プライベートで気になっていることも全部書き出しましょう。

「やるべきこと」は意外なところに隠れていることもあります。パソコンのデスクトップに貼り付けたままのファイルや、机のうえに出したままの本から、調べ物をしてメモをとるつもりだった、等々の忘れていた作業を拾うことができます。 こうして心のなかに引っかかったすべての気がかりを紙に書いていく作業を、短くても半日、できれば一日をかけて実行します。

そうすると、頭のなかではなくて外部のメモに気になることが細大漏らさず記録された状態になり、これだけでストレスが一気に減るという体験をすることができると思います。騙されたと思ってやってみると、その効果に驚くはずです。

 

タスクを処理可能な状態にする3つのルール

さて、頭の中にある「やるべきこと」をすべて書き出したら、それを処理可能な形に変えてしまいましょう。先程の箇条書きを一つずつ見ながら、以下の3つの簡単なルールを適用していきます。

(1)アクションをとることができるか?を問い直します: たとえば「実験が成功するか心配」という気がかりはそれだけでは行動につながりません。気がかりは「実験の成功のためにとれる行動はあるか?」という具合に行動に変換します。

(2)複雑で曖昧な作業については「最初の作業」を定義します: たとえば「報告書をつくる」という気がかりについては「報告書の分量と書式を調べる」のように最初のアクションを決めていきます。

(3)2-3分のアクションは実行してしまう:電話をかけるだけ、メールを書くだけといったように、2-3分で終わるものはその場で実行してしまいます。

Get Things Done
「やるべきこと」を処理可能なタスクに変えるための思考。

たったこれだけのルールを適用するだけで、あいまいだった心配事のリストが、行動をとることができるアクションの一覧表にかわっていきます。

GTD ではどんな複雑な仕事も「次のアクション」に還元してしまいます。いまやるべき次のアクションを実行しているうちに、次第に大きな仕事が片付いていくのです。

 

コンテキストで、タスクを整理する

GTDではさらに、「コンテキスト」という考え方を導入してこの一覧表を分類していきます。コンテキストの元々の意味は、「文脈」といった感じです。しかしここでは、オフィスと自宅といった「場所」の違いと認識するとわかりやすいでしょう。

オフィスにいなければ実行できないアクションについて、自宅で頭を悩ますのは無駄です。そこで先程のアクションの一覧表を、オフィスと自宅にわけるだけで「いま」「ここで」できる仕事に集中できるようになります。

コンテキストは場所だけでなく、パソコン・電話・メールといった作業別に定義してもいいですし、「返信待ち」といった概念的なものでも大丈夫です。

たとえば私は「先送り」というコンテキストで管理しているアクションがあります。このリストには、たとえば来週になってからでないと資料がそろわなかったり、人との確認が終わらないために作業を進められないものが入っています。つまり、いまは考えるだけ無駄なものです。

「先送り」にアクションをいれたら、スマートフォンのカレンダーアプリに未来の日付で「先送りを確認」というイベントを作り、通知を設定しておきます。こうすると、作業が開始できるようになる日まで、私は「先送り」について完全に忘れていても問題はありません。

このように、コンテキストはいまやるべきことに集中するために、いま、この場所には関係ないアクションを忘れるために使うのです。

 

「週次レビュー」で、常にストレスフリーを実現する

一度は頭を空にして、わかりやすいアクションのリストを作っても、一週間もすると新しい仕事や、新しい気がかりが生まれてストレスがたまっていきます。

そこで週に一度ほどを目安に、もう一度頭を空にし直して、アクションリストを整備するということを行います。これを GTD の「週次レビュー」といいます。

週次レビューは最初に頭を空にしたときほど時間をかける必要はなく、気がかりなことが十分頭の外に追い出された状態になるまで、リストを埋めるために行います。 適時に週次レビューをおこなうことが、GTD がストレスフリーの仕事術である理由なのです。

 

GTD を日常の習慣にしてみる

ここまで駆け足でGTDの基本をみていきましたが、日常的にはどのようにこれらのテクニックを実践すればよいのでしょうか?パソコンやスマートフォン上で用できるTodoistのようなタスク管理アプリの多くは、GTDを意識して利用することが可能になっています。

コンテキストを実現するにはToDo リストを複数に分けるだけで十分ですし、気がかりなことがあったらすぐにスマートフォンから追加するだけで日常的に「頭が空」の状態を維持することができます。

新しいアプリやサービスを覚えるのが手間なら、一冊のノートを使うだけでもGTDを実践することはできます。

コンテキストが「オフィス」「自宅」「出先」ならば、ノートを三分割して、付箋で目印をつけ、それぞれのページからそれぞれのコンテキストに属するアクションを箇条書きにしていきます。

Get Things Done
コンテキストごとにタスクを管理するため、ノートを分割するのも一つの方法。

実行したアクションは打ち消し線を引いていくだけでなく、あいまいさが残っているアクションは、どんどんと明確な「次のアクション」を生み出しては消していくことで、紙のうえだけでGTDのメリットを再現できます。

 

仕事のキャパシティを管理しよう

大事なポイントは、前回の Doing リスト同様に、GTD はすべての仕事を片付けるための方法ではないという点です。

GTD を実践すると、どれだけの仕事が残っていて、どれだけの手数が必要なのかが箇条書きの項目数として明確になります。「やるべきこと」が曖昧で、どれだけ仕事をすればいいのかわからない、というストレスからは開放されるのです。

しかしだからといって、限界を越えて仕事ができるようになるわけではありません。GTD はあくまで、仕事のキャパシティを管理するためのものなのです。

複雑すぎて実行できないのではないか、と思っていた大きな仕事も、実践可能なくらいに小さなアクションに分解することで、こなすことができるようになります。逆に、これ以上はキャパシティを超えると判断したものは、他の人に依頼したり、簡略化したり、断るという判断もしやすくなります。

GTDのようなタスク管理のテクニックは、あなたの思考を、仕事にまつわるストレスや心配事から、できるだけ開放するためにあります。学生の皆さんにおいては、卒業論文・修士論文、試験勉強、部活動やサークル活動なども、同じように考えることができるでしょう。

やるべきことが増えてもそれにしなやかに対応し、ストレスが大きい仕事がきても、分解して対処できるようにすることで、あなたが才能の100%を発揮して打込めるように手助けをしてくれます。

こうして自分自身のキャパシティを管理する習慣を日常的に実践することで、やがてより大きな仕事をするための準備となるのです。

 

GTDのまとめ

長いスパンのタスクの管理方法としてご紹介しているGTDの手順をまとめると、

(1)「やるべきこと」を全て紙に書き出す

(2)タスクを処理できる形に変える

(3)コンテキストでタスクを整理する

(4)週次レビューを行う

(5)GTDを習慣化させる

この5つのステップを意識し、習慣化させることが重要です。 社会人、学生に限らず日常的に実践できる場面はたくさんあるので、GTDを意識した生活に変えてみてはどうでしょうか。

 

過去の記事はこちら:
黄金則を身につけよう。戦略的にあなたを成長させる時間管理方法
集中力のピークに雑用をしていませんか?才能を活かす時間術
紙一枚で、あなたの集中力を劇的に向上させるタスク管理の方法





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堀 正岳

理学博士。国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)所属。北極における気候変動を中心として研究活動をするかたわら、最新のライフハックや仕事術、ツールなどをブログ『Lifehacking.jp』で紹介。1973年、アメリカ・イリノイ州生まれ。

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