製薬業界を知る

2016/12/12

こんにちは、KEIと申します。私は私立大学の薬学部を卒業後、内資製薬メーカーにて6年間MRとして勤務しました。

その後は現在のCSO企業*¹に所属し、外資製薬メーカーでコントラクトMR*²として働いています。

MRは「Medical Representative」の略で、日本語では「医薬情報担当者」と呼ばれます。各製薬メーカーに属し、自社製品の「情報提供」「情報収集」が主な役割です。病院・クリニック・薬局を訪問し、医療従事者と顔と顔を合わせて仕事をします。

皆さんは「MR」と聞いて、どのような仕事をイメージされますか?理系大学出身者が向いている職種、常にドクターに頭を下げつつ接待などが多い大変な仕事、数字に追われる辛い営業職、など……。このようなイメージを持つ方も多いでしょう。大学生のころの私も同じように思っていました。しかし、実際に私が働くなかで気付いたMRの実態は、上記したようなイメージとは異なっていたのです。

当シリーズでは、そんなMRの実態を数回に分けてご紹介したいと思います。第1回のテーマは、MRにおける文系出身と理系出身の違いについて。薬学部や理学部などの理系出身者が有利と思われがちなMRの実情に迫ります。

*1 CSO企業:Contract Sales Organization(医薬品販売業務受託機関)の略称。製薬メーカーへMRを派遣するなど、営業・マーケティング活動のアウトソーシングサービスを提供する企業のこと。
*2 コントラクトMR:CSOに所属するMR。

 

「MRは理系だらけ」は間違っていた

私がMRを選んだ理由

私がMRという職種を選んだ理由は、人と接する仕事がしたかったからです。薬学部の学生のほとんどは薬剤師になるか研究職に進むかを選ぶのですが、私自身は薬剤師になりたいという気持ちは少なかった気がします。そんななかでMRという職種を知り、人と人が接する上で成り立つ仕事であることに魅力を感じました。

また、話すことが好きな性格だったということもあり、先輩から「MRに向いているのでは?」と助言を受けたのもひとつのきっかけでした。

想像以上に多かった文系出身MR

採用される学生のほとんどは薬学部出身であろう――。そんな気持ちでいざグループ面接を受けてみると、半分以上が文系出身の学生でした。そして無事採用されたあとに同期80人の経歴を眺めてみると、なんと薬学部出身は2人だけ。理系出身と文系出身は半分くらいで、想像以上に文系出身者が多いことに驚いたのを覚えています。

そして、現場に出て多くのMRと知り合いになり、理系文系は関係なくいろいろな出身学部の人がMRとして活躍していることを知りました。

 

それぞれの強みを活かせるMRの仕事

医療現場で活躍するMRの仕事論 Vol.1-01

MRとして働くなかで私が感じたのは、「MRに文系・理系は関係ない」「今までの経験はMRとしての自分の強みとして使うことができる」ということです。

医療従事者によって、MRに求めることは違います。学術知識を求める人、社交性を求める人など、さまざまです。理系出身、文系出身でそれぞれの強みがあるので、決してどちらかが有利というわけではありません。それでは、実際に私が出会った様々なタイプのMRを見ていきましょう。

【1】教育学部出身のAさんのケース(体育の教員免許取得)

体育会系出身ということもあり、明るく活発な印象から得意先の好感度は高かった。体力もあるため、毎日多くの施設を訪問していた。

【2】薬学部出身のBさんのケース(薬剤師免許取得)

入社当初から薬品の知識が豊富で、MR認定試験の受講科目は一部免除されていた。学術知識を重要視する病院のDI(Drug Information:医薬品情報管理)従事者から好印象を持たれていた。

【3】外国語学部出身のCさんのケース

外国語を勉強していたこともあり、海外文献の翻訳などで活躍していた。また、海外留学や海外旅行の経験も豊富で、その経験を得意先での話題のひとつとしていた。

【4】経済学部出身のDさんのケース

株、政治、金融などに関心のあるドクターは多く、いつもドクターとの話が盛り上がっていた。

このように、理系出身・文系出身問わず多種多様な人がMRとして活躍しています。今まで自分が培ってきた知識や体験などは、仕事でも大いに活かすことができるのです。「理系は有利、文系は不利」などとは思わず、だれでもMRとしてチャレンジしてみてほしいと思います。

 

医療・製薬の知識は入社後にも習得可能

医療・製薬系の知識がない学生であれば、「働きながらの勉強は難しそう」と感じることでしょう。しかし、こちらの心配は必要ありません。MRも他の職種と同様、入社後の研修などによって必要な知識を身につけることができます。

入社1年目の12月にMR認定試験があるため、その期間まではしっかりとした社内研修を設けている会社がほとんどです。この期間の研修は、全国に配属される同期との交流の場にもなったので、私は苦になりませんでした。

同時に、MR認定資格更新のための毎月社内研修や、ネットを使った学習プログラムなどの実施が義務化されているので、これにより継続した学習も可能となっています。

そして、私にとって最も有効だった学習方法は、現場での医療従事者との会話でした。会話のなかで、現場が知りたい情報、現場に寄り添った伝え方などがわかると、自ずと学習すべき分野が見えてくるのです。また、やはり現場で知り得た情報は頭に残りやすいと感じます。

 

MRに求められる「Two Way」の対話力

医療現場で活躍するMRの仕事論 Vol.1-02

MRに求められる能力として私がひとつ挙げるとしたら、「医療従事者との信頼関係を構築する対話力」を挙げるでしょう。MRは、人と人が接することで成り立つ仕事です。最初にお伝えしたように、MRには「情報提供」と「情報収集」の役割があり、ただ情報を伝えるだけでは仕事になりません。ここで必要となるのが、「Two Way」の対話力です。

「自分が思っていることをただ伝える」というコミュニケーションの場合、情報伝達は一方通行です。こちらを「One Way」の対話と呼ぶことにしましょう。一方で、「自分が思っていることを伝えつつ、相手の意見も聞き、そして考える」というコミュニケーションの場合は、情報が両者のあいだで行き交います。こちらが「Two Way」の対話です。

私自身、MRになる前は「おしゃべりが好きな人は対話力が高く、MRに向いている」と思っていました。しかし、この考えは少しだけ違っていたようです。

「話すことが好き」という人のなかには、単に「One Wayの話をするのが好き」という人も少なからずいることでしょう。残念ながらこれは、ビジネスで求められる能力とは別物です。相手の話に耳を傾けつつ自分の考えを伝える、という「Two Way」の対話力こそが、MRに求められる能力であると言えるでしょう。

それでは、以下のドクターとMRの対話例をもとに「One Way」と「Two Way」の違いを具体的に見ていきましょう。

「One Way」の場合

MR「○○の医薬品には△△の作用があります。」

Dr.「うん。」

MR「□□の様な患者さんが来たら○○を処方してください。」

Dr.「わかった。」

「Two Way」の場合

MR「○○の医薬品には△△の疾患に適応があります。△△の疾患の患者さんはいますか?」

Dr.「何人かいるね。」

MR「その患者さんのなかで、症状の改善で困ることはありませんか?」

Dr.「もう少し××の症状を改善させたいかな。」

MR「では、こちらのデータをご覧ください。このような理由から、××の症状が改善しない患者さんに適していると言えます。」

Dr.「確かにそうだね。」

MR「ぜひともそのような患者さんに、○○をご処方していただけないでしょうか?」

Dr.「その患者さんがきたら処方してみるよ。」

 

「One Way」と「Two Way」の違いは一目瞭然ですね。「Two Way」の対話では、自分の伝えたいこともしっかり言いながら、相手の考えやニーズを引き出すことができます。医療従事者の立場から考えても、一方的に話してくるMRより、双方向のコミュニケーションを図ろうとするMRのほうが信頼関係を構築しやすいはずです。実際に私も、こうした対話を繰り返しながらドクターとの信頼関係を構築し、医薬品の新規採用に繋がった経験があります。

上記の例は医薬品に関する情報提供の会話でしたが、この「Two Way」の対話はどのような職種であっても有効なテクニックであると言えるでしょう。そしてMRには、このような対話力が特に求められているのです。

 

おわりに

MRに求められるスキルは、医薬品の知識だけではありません。「Two Way」の対話ができ、人との信頼関係をうまく築くことができる能力も非常に大切です。実際に現場のMRを見ても、それぞれが自分の強みを活かして活躍していると感じます。

「文系だから……」「理系だから……」という考え方はいったん捨ててしまいましょう。ご自身の強みをフラットな視線で確認することで、新たな気付きがあるはずです。

 

製薬業界・超入門
タグ一覧 MR職 製薬業界
記事一覧へ
KEI

私立大学薬学部卒業後、内資製薬メーカーにてMRとして6年間勤務。その後退職し、2年のブランク後にCSO企業に入社。現在はコントラクトMRとして外資製薬メーカーで勤務している。

関連記事