製薬業界を知る

2017/02/02

こんにちは!コントラクトMR¹ 兼ライターのKEIです。当連載も、今回でついに3回目です。第1回第2回で、MRの仕事を多少イメージできるようになったのではないでしょうか。とはいえ、MRがおこなう具体的な業務については、まだはっきりと理解できていない学生さんも多いと思います。

一般的にMRの業務というと、「医療機関でドクターや薬剤師と面会し、医薬品の情報を提供する」などといったことを想像されることでしょう。では、実際のMRの業務とはどのようなものなのでしょうか。

第3回では、現役MRである私の一日のスケジュールから、具体的なMRの業務について詳しく解説します。

¹コントラクトMR:製薬メーカーへMRを派遣するなど、営業・マーケティング活動のアウトソーシングサービスを提供するCSO企業(Contract Sales Organization / 医薬品販売業務受託機関)に所蔵するMR。

とある一日のタイムスケジュール

・8:00~10:00 特約店訪問

・10:00~11:00 内勤業務

・11:00~14:00 医療機関訪問

・14:00~15:00 昼食

・15:00~20:00 医療機関訪問

・20:00~21:00 内勤業務、帰宅

 

8:00~10:00 特約店訪問

医療現場で活躍するMRの仕事論Vol.3-01

MRの仕事は、特約店訪問から始まります。製薬業界における特約店²とは、医薬品卸のことを指します。医薬品は「製薬会社→医薬品卸→医療機関」という経路で納入されており、医療機関へ納入するときの価格の決定、納品などといった業務の多くは特約店が担当しています。

MRが特約店を訪問する目的は、特約店に属するMS(マーケティングスペシャリスト:医薬品卸販売担当者)と医療機関の情報交換をすることにあります。MSは特約店の営業パーソンであり、医薬品の案内・価格交渉・納入といった、MRと医療機関のあいだに立つ役割を担っています。医療機関を毎日訪問しているMSは、ドクターや薬剤師との関わりが深いため、MRよりも多くの情報を持っています。MRは毎朝MSを訪問して情報交換をし、得た情報を分析して活動に役立てるのです。

特約店への訪問は、MRの活動のなかでも特に重要であると考えています。なぜなら、自分だけでは収集できない範囲の情報や実績を、MSが共有してくれるからです。よって、MSとの関係構築は、医療関係者との関係構築と同じくらい重要であると言えます。例として、MS訪問時の動きをいくつかご紹介します。

² 医薬品卸と販売会社の総称

医薬品案内のお願い

例えば、ある医療機関で新規採用、処方をアップさせたい医薬品があるとしましょう。その場合、医療機関に対してMRが医薬品の案内をするのですが、同様の案内をMSにもお願いします。MRとMSが1回ずつ案内をすることで、計2回の案内ができ、ドクターにその医薬品をより強くイメージづけられるのです。

特に新発売の製品は、MSに案内をしてもらうことで、MR単独で案内するより早く情報を提供できるので、とても重要です。

 

ドクター・薬剤師の反応のフィードバックをもらう

MRが案内した医薬品の内容に対するドクター・薬剤師の反応をMSに確かめてもらい、フィードバックをしてもらいます。これにより、MRには伝わっていないドクター・薬剤師の本音を知ることができるのです。

例えば、どうしても新規で処方してほしい医薬品を案内していた場合、ドクターがMRに対しては、「処方するよ」と言っていたとしても、本心では「理由があって処方しづらい」と思っているケースもあります。ドクターはこのような本音をMSに伝えることもあるため、MSからもらえるフィードバックは、新規採用までの道筋を見つける大きな手がかりとなっているのです。

 

MSとの実績確認

特約店のMSにもMRと同じように売り上げの目標があり、製薬会社と特約店のあいだでその目標を月ごとに共有しています。この目標値は全く同じではありませんが、特約店の目標実績が達成されないと、MRの目標の達成も困難です。「どの医療機関でどれくらいの納入が見込めるのか」「あとどれくらいの売り上げが必要なのか」など……。このような情報も把握できるため、特約店の訪問は非常に重要な業務であると言えます。

 

競合他社の動きを聞く

特約店のMSは多くの製薬会社の医薬品を扱うため、他社の情報も多く持っています。「医療機関で競合他社がどのような動きをしているのか」「先生はどこの医薬品を評価しているのか、またその理由はなにか」など……。特約店の訪問では、このような競合他社の情報をいち早く収集することができるのです。

 

10:00~11:00 内勤業務

医療現場で活躍するMRの仕事論Vol.3-02

特約店の訪問が終わったあとは、最初の訪問・面会までに1~2時間ほどの空きがあることも多いです。その時間を使って、オフィスに出社したり、喫茶店などに入り内勤業務をおこなったりします。内勤業務の主な内容は、訪問・面会のための準備です。以降で、いくつか例を挙げて見てみましょう。

 

訪問スケジュールの作成

訪問スケジュールの作成は、MRの活動のなかでも非常に重要な業務のひとつです。優先順位の高い医療機関を見極め、施設・回数を考えて訪問計画をたてます。月の初めには大枠のスケジュールをたて、週の初めには細かい予定を入れ込み、当日には、急な予定変更をふまえて、その日のスケジュールを再確認します。この業務を怠ると、既定の訪問回数に達せず、重要性の高い医療機関に訪問できなくなるのです。

企業によって目標とする一日の訪問施設数・面会するドクターの人数は違いますが、これまでの私の経験から言えば、一日あたり10人のドクターとの面会が目標とされていました。目標を達成するためには緻密なスケジューリングが必要であり、時間のロスがあると目標への到達が難しくなります。

 

医薬品の売り上げ確認

担当している医療機関の売り上げは毎日更新されるので、「どこでどの医薬品がどれだけの数納入になったのか」「どこで新規採用になったのか」などといった情報を内勤業務中に確認します。「売り上げが伸びていたら処方の御礼をする」「売り上げが減っていったらその原因を分析する」など……。毎日の売り上げ確認を習慣づけると、売り上げの変動に素早く対応できるようになります。数字への意識が高いMRは、実績確認を毎日欠かさずおこなっています。

 

11:00~14:00 医療機関訪問

内勤業務が終わり、続いては医療機関への訪問です。午前診療が終わる頃に医療機関へと入り、診察が終わると面会が始まります。それでは、医療機関訪問時のMRの具体的な動きについて見てみましょう。

 

訪問時の医薬品の案内

ドクター・薬剤師と面会する際、基本的には自社製品の情報やドクターの処方方針について話します。ただし、一回の訪問時に確保できる面会時間は相手によってさまざまであり、15分のケースもあれば5分しかないケースもあります。短い面会時間内でもしっかりと情報を伝える必要があるので、そのためにも事前の準備が非常に重要となるのです。

また、なかには雑談好きなドクター・薬剤師もいるため、面会時間内で医薬品の話がほとんどできない場合もあります。このような場合、一回の訪問で成果をあげられることはほぼありません。だからこそ、結果に結びつけるためにも、丁寧に準備をしつつ、繰り返し訪問することが大切であると言えます。

 

説明会の実施

説明会とは、ドクター・薬剤師・医療従事者に15分~30分の時間をもらい、自社医薬品について説明する場のことを言います。通常の面会とは違い、十分な時間が確保されているため、医薬品の情報を十分に伝えられます。また、いつもは面会できないドクターや、長く話せる時間がないドクターに対してもアプローチできるため、自社の医薬品を知ってもらうための良い機会にもなっているのです。説明会の実施は、通常の面会よりも医薬品の印象が付きやすいため、新規採用や処方アップに大きく貢献します。

 

14:00~15:00 昼食

医療現場で活躍するMRの仕事論Vol.3-03

面会や説明会は午前診療が終わったあとに実施するため、昼食は14時から15時ごろになることが多いです。MRは車で移動し、営業活動をおこなうため、車を使って好きなところで昼食をとることができます。気になっていたお店や有名なお店に行くこともできるので、私は昼食の時間が毎日とても楽しみです。また、有名なお店に行ったエピソードや、気になっていたお店の感想などといった話題は、ドクターや薬剤師との会話のネタにもなっています。

 

15:00~20:00 医療機関訪問

午後の医療機関の訪問も、午前中と同様の活動をします。MRは1日に多くの医療機関を訪問しますが、病院、診療所(クリニックなど)によって面会方法はさまざまです。パターンとしては、以下のとおりです。

・診療後に面会

・患者さんの来院が空いたタイミングで面会

・アポイントを取得(電話、メール、前回訪問時にて取得)して決められた日時で面会

・外来診察後、医局内で面会(ドクターの数が多い総合病院等)

・外来前にて、医局前をドクターが通過するタイミングで声をかけて面会(ドクターの数が多い総合病院等)

 

診療所の場合は、ドクターがクリニックに必ずいるので面会できる可能性が高くなります。一方で、総合病院のような大きな医療機関においては、必ずしもドクター面会が予定通り行えるわけではありません。オペや急患が入ると面会ができなくなり、その日必ず伝えなければいけない用事がある場合は、医局前で数時間以上待つこともあります。また、ドクターによっては月1回または数ヵ月に1回のみのアポイントの場合も少なくありません。これらを考慮したうえで、柔軟にスケジュールを組む必要があると言えるでしょう。

 

20:00~21:00 内勤業務、帰宅

最後の訪問が終わると、その日の主な業務は終了です。訪問終了後は、家に直帰するMRもいれば、オフィスに戻って内勤業務をおこなうMRもいます。企業によっても異なりますが、私が働く会社では家庭を持っている人がほとんどであるため、直帰する人が多いです。

会社に戻って内勤業務をおこなう場合は、午前中の内勤業務と同様の業務をしたり、提出物を作成したりします。内勤業務をおこなうタイミングは人それぞれで、午前中の人もいれば、すべての訪問が終了した後の人もいます。私の場合は、先輩社員に今日の活動を話しつつ相談にのってもらうことが多いので、訪問後の内勤業務は貴重な時間です。

 

おわりに

当記事では、MRのとある一日のスケジュールを見ながら、業務についてご紹介してきました。MRという仕事に対して漠然とした印象しかなかった学生の皆さんも、より具体的にイメージできるようになったのではないでしょうか。

MRとして一日を過ごすなかで、私は以下の3つを常に意識しています。

  • 活動の目的を明確にすること
  • 重要度の高い得意先を見極めること
  • スケジュールをしっかりと管理すること

上記の3つが意識できていれば、心にゆとりを持って活動でき、有意義な一日を過ごすことができます。「多忙」というイメージを持たれがちなMRですが、自らの判断で目的を設定し、主体的に活動できるという点は、MRという仕事が持つ面白さのひとつであると言えるでしょう。

 

MRの仕事に文系・理系は関係ない?現役MRの仕事論 Vol.1

デキるMRに共通する3つの特徴とは?現役MRの仕事論 Vol.2





製薬業界・超入門




タグ一覧 MR職 製薬業界
記事一覧へ
KEI

私立大学薬学部卒業後、内資製薬メーカーにてMRとして6年間勤務。その後退職し、2年のブランク後にCSO企業に入社。現在はコントラクトMRとして外資製薬メーカーで勤務している。

関連記事