製薬業界を知る

2017/06/27

製薬業界では今どのようなことが起こっているのか、そしてこれからどう変化していくのか――。これから製薬業界で働き、貢献していきたい、と考える方であれば、業界の大きな動きについてはぜひとも掴んでおきたいもの。

そこで今回は、製薬業界の幅広いニュースを、誌面やWebで発信している株式会社薬事日報社さんに、製薬業界注目のニュースを5つピックアップしてもらいました。各ニュースの概要だけでなく、「これから製薬業界で働くこと」について、考えを深めるために役立つであろうお話をお聞きすることができました。

薬事日報_

取材協力:株式会社 薬事日報社

医薬業界向け専門紙「薬事日報」、薬学生向け情報紙「薬事日報 薬学生新聞」等の発行をはじめ、電子メディアの運営、専門情報書や実務書、解説書などの図書出版を手掛ける。

 

1.国内ジェネリック医薬品メーカー最大手2社、海外進出へ踏み出す

製薬業界ニュース

2016年7月に日医工株式会社が米国のセージェント・ファーマシューティカルズ社を、2017年5月に沢井製薬株式会社が米国のアップシャー・スミス・ラボラトリーズ社を買収し、最大市場のアメリカへ進出する足がかりを作りました。

その背景として、国内ではジェネリック医薬品(以下GE薬)の推進策により、GE薬の数量シェアが急速に拡大。2017年現在、医薬品市場での使用割合では約65%をGE薬が占めています。GE薬メーカー各社は、2020年9月までに数量シェア80%到達を数量目標とする中、さらにその先の成長機会を見据えて新たな市場を求め、世界をターゲットに動き出しているのです。

日本と海外諸国とでは、経営スタイルや働き方、医薬品に対する考え方も大きく異なります。海外進出へ踏み出すということは、まずそれらの違いを知り、その上で何ができるかを考えていく必要があります。働く人においては、幅広い視野や、変化に柔軟に対応する力がより一層必要とされるでしょう。自ら考え、行動していく主体性もさらに求められるようになるのではないでしょうか。

 

2.新薬メーカーにおける長期収載品の切り離しが加速

武田薬品工業株式会社は、合弁会社 武田テバ薬品株式会社を設立し、長期収載品を資産移管。アステラス製薬株式会社は、長期収載品16品目をLTLファーマ株式会社へ譲渡……GE薬の普及が進む中、各社は売上大幅減となる特許の切れた長期収載品事業を切り離し、根幹事業=新薬開発に集中しています。

その一方で、新薬メーカーが特許期間満了前に、他社に特許を許諾するオーソライズド・ジェネリック医薬品(AG)も登場しました。AGは、原薬や添加剤、製法が先発品と同一である場合が多く、GE薬市場でシェアを伸ばしています。

長期収載品事業を譲渡する会社もあれば、他社にAGを販売させることで、その価値を守る会社もあり、戦略は多様化しています。長期収載品の多くがGE薬に置き換わっているものの、患者さんによっては飲み慣れた薬に対するニーズも一定程度存在します。新薬メーカーは、新薬開発とのバランスから、長期収載品一つひとつの製品の戦略を検討した上で、効率的な形での事業継続を目指しています。

医薬品は患者さんの生活と密接に関わっています。各メーカーは患者さんのニーズに応え、医薬品を提供し続ける責任があるのです。

 

3.新薬メーカーのオープンイノベーションが活発化

製薬業界ニュース

新薬開発の成功確率は大幅に低下し、開発コストは高騰しています。新薬メーカーでは、自前による医薬品開発から、外部との共同開発や社外から創薬シーズを導入するオープンイノベーションへと転換するようになりました。例えば武田薬品工業株式会社は、京都大学iPS細胞研究所と再生医療分野での共同研究を開始し、中外製薬株式会社は、大阪大学と10年間の包括契約を締結するなど、産学連携が増加しています。

このオープンイノベーションの動きには、創薬シーズの掘り起こしや新薬開発のスピードアップ、ネットワークの拡大などといった狙いがあります。また、日本のアカデミアが持つ優れた研究成果を、製薬企業が医薬品開発に応用し、病気で苦しむ患者に革新的な新薬を届けていく新たなスキームとして注目されています。最先端の研究が行われている日本の大学と国内の製薬企業がタッグを組むことで、研究内容や研究者の海外流出を防げるため、日本の医薬品産業の活性化にもつながる動きなのです。

オープンイノベーションは、医薬品関連企業、大学とコラボレーションする動きにとどまりません。IT企業と組むなど、多業種が参画する取り組みも増えるでしょう。さまざまな組織との連携が加速することで、多様な価値観に触れられる機会も増えることが予測されます。

 

4.MR数の減少と、取り巻く環境や求められる役割の変化

2016年度版MR白書で明らかになったのは、MRの人数が3年連続で減少したという結果。インターネットの普及により、医師が医療情報を簡単に手に入れられるようになったことなどから、「MR不要論」もささやかれています。

しかし、MR数が減っている=MRは不要と考えるのは早計です。確かに、インターネットで調べられる情報を提供するだけのMRは、すでに不要といえるでしょう。しかし、現場のニーズをきちんとくみ取れるMR、チーム医療のつなぎ役として機能できるMRは、今後ますます必要になっていきます。

例えば中外製薬株式会社では、地域のニーズにきめ細かく対応するために、営業支店の細分化を実施。支店の裁量を大きくし、所属するMRが柔軟に動けるようにすることで、より地域に適した提案ができるようになることが期待されています。

医療環境や製薬企業の事業環境の変化で、MR数は減少傾向にありますが、その役割が不要になったのではなく変化したと捉えるべきでしょう。薬剤の基本的な情報であれば、インターネットから得ることができますが、個々の患者さんの病態に応じた最適な薬剤の使い方など実践的な情報が欲しいときには、MRが頼みの綱です。これからの製薬業界では、医療業界で携わる人材としての高い倫理観はもちろん、医療知識やマーケティング力、医師のニーズを把握した上で自社医薬品を処方提案するクリエーティブな営業ができるMRが求められるのではないでしょうか。

 

5.重点疾患領域の絞り込みが進み、各社がよりがんに注力

製薬業界ニュース

製薬大手4社(武田薬品工業株式会社、アステラス製薬株式会社、第一三共株式会社、エーザイ株式会社)をはじめ、各社の中期経営計画を見ると、重点疾患領域への選択と集中を図る動きが明白に。中でも大手各社が注力しているのが、がん領域です。新薬開発が困難といわれているがん治療の分野で成果を出すことが、各社の課題となっています。

なお、これは新薬メーカーだけに関係する話ではありません。GE薬数量シェア80%時代に向け、がん治療薬でもGE薬への切り替えが進むことが予想されています。

がんは人の生死を分ける疾病です。この分野に携わるということは、すなわち患者さんの人生に深く関わること。もちろんこれまでもそうですが、がん領域の医薬品の進歩に伴い、さらに倫理観や使命感、患者視点で考える姿勢が求められる機会が増えるでしょう。これから製薬業界で働かれる方には、一度しっかりと向き合っておきたいトピックの一つです。

 

まとめ

グローバル化やオープンイノベーションが進み、柔軟性や広い視野が求められる、地域別ニーズへの対応や重点疾患領域の絞り込みにより、高い専門性が求められる……など、これから製薬業界で働く人材には、さまざまなハードルが待ち受けています。しかし、誰もが簡単にできることではないからこそ、社会に必要とされるのであり、そこで活躍できるようになることで得られる充足感もより一層大きくなるもの。正しい倫理観を持ち、製薬業界で働いていきたい、と考える人にとって、大きな可能性を秘めた環境ではないでしょうか。

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SCIENCE SHIFT編集部

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