アイデアを得る

2017/08/23

突然ですが、皆さんは自分の専門分野以外にどのようなニュースやできごとに興味がありますか?それに興味を持ったのはなぜでしょうか?
専門分野外のできごとから、新たな視点やアイデアを得られることがあります。また、なぜそれに関心を持ったか少し考えてみることで、そこに何かしらのつながりを発見することも。

今回、「理系+(リケイプラス)」に所属する学生さんに、興味のあるニュースについて調べてもらいました。自分の知らなかった世界を知ることで、新たなアイデアにつながるかも?!

理系プラスについて 理系をもっと面白く!

理系+とは、
「理系の自分が好き、楽しい、活躍できる。だから明日も理系でいたい。理系の人が、自信を持って、そう思えるように。」

……をビジョンに活動している学生団体です。理系分野に興味のある人が自分の研究を共有する面白さ、他分野を知る楽しさを知り、積極的に自ら情報を取得・発信し、自分の分野を見直し興味を深めることができるような環境を作ることを目指しています。
今回は、そんな理系+のメンバーが面白い研究をピックアップしてみました。

 

カフェインの作用はダイエットにも効果あり?

カフェインの作用はダイエットにも効果あり?

カフェインといえば、勉強のお供の定番かもしれません。かくいう私の横にも今、コーヒーが置いてあります。カフェインの“眠気覚まし”の力は皆さんもよく知っているのではないかと思います。そして、それにあやかっている方も少なからずいるでしょう。では、そのほかのカフェインの効能といえば、何が思いつくでしょうか?

利尿作用、覚醒作用、興奮作用……そして、実は「代謝の増加」作用も!

ピンとくる方も少なくないかもしれませんが、カフェインにはダイエットにもいいといわれることがあります。それどころか、アメリカでは抗肥満薬としても用いられています。
ということで、今日は6月27日発刊のnature communicationsから、Caffein inhibits hypothalamic A1R to excite oxytocin neuron and ameliorate dietry obesity in mice* (カフェインが視床下部のA1Rを阻害することで、オキシトシンニューロンを興奮させ、肥満を改善する)という論文に関連して、ダイエットとカフェインの関係、そしてその作用機序を探ってみましょう。

*元の論文はこちら。

 

ダイエットに関わる神経基盤のお話

ダイエットに関わる神経基盤のお話

ダイエット、と聞いてパッと思いつく方法は、単純に運動量を増やすか、食事の量を減らすかではないでしょうか。それ以外にも身体の代謝を上げたり、食欲を抑制することで自然に食事量が減ったりといったダイエットの可能性も考えられます。これらの方法のうち、「食欲の抑制」にカフェインが効くらしいというのが、先に紹介した論文の報告です。

食欲制御の中枢といわれているのは、ヒトでは“視床下部”と呼ばれる脳領域で、自律神経系の中枢にあたります。
そもそもカフェインは「アデノシン受容体」のはたらきをブロックする作用があります。アデノシン受容体とは、その名の通りアデノシンを選択的に受容し、細胞内に反応を起こすタンパク質です。アデノシンはDNAを構成する要素として有名な塩基の一つ(アデニン)と糖が化合した物質です。
このアデノシン受容体は睡眠、怒り、不安にも関連がある他、インスリン*分泌にも作用すると示されてきました。
この論文ではこれらの知見を統合して、摂食中枢の一つである視床下部の室傍核と、アデノシン受容体の作用に着目しています。

*インスリンとは:すい臓から出る体内ホルモンの一つで、血糖値を下げる働きをする。食後に増加した血糖はインスリンによって速やかに処理され一定量に保たれる。一方、インスリンの働きが悪くなると血糖値を下げられなくなった状態(高血糖状態)が続き、この症状を糖尿病という。

この実験では、全て肥満マウスを用いて研究を行っています。
まず、アデノシン受容体と肥満状態に関連があるのかを調べました。すると、体重と視床下部のアデノシン量には相関があることが示されました。
次いで、室傍核のアデノシン受容体を増やした肥満マウスと、アデノシン受容体に操作を加えていない肥満マウスで、エネルギーバランスや食餌量を比較しました。すると、アデノシン受容体を人工的に増やしたマウスでは、ただの肥満マウスより体重と食餌量が増えました。
この二つの実験から、アデノシン受容体がダイエットと関係があることが示されました。
次にアデノシン受容体のはたらきを阻害するカフェインに着目し、カフェインを肥満マウスの脳の室傍核に注入する実験をしました。すると、カフェインを与えたマウスでは体重が減りました。この結果は、アデノシン受容体が増えると体重や食餌量が増えるという結果とも矛盾はありません。

以上をまとめると、カフェインは室傍核にあるアデノシン受容体をブロックするという点で、ダイエットに関係していそうだとわかります。
ではどうやって食欲が抑えられているのでしょうか。こちらにも触れられているので引き続き見ていきましょう。

 

幸せホルモンもダイエットに影響を与えている

摂食中枢の一つである室傍核には、いくつかの“神経伝達物質*”に相当するような分子を放出している神経があります。どの分子がダイエットに影響を与えているか、気になりますね。

*神経伝達物質:神経細胞間で情報の伝達を行う物質。神経伝達物質にはいくつかの種類があり、その物質を受容することによって、神経細胞が興奮したり、抑制したりする。有名な例は、ドーパミンによる神経細胞の興奮作用。

幸せホルモンもダイエットに影響を与えている

比較検討の結果、候補に挙がったのが「オキシトシン」でした。一部の人は聞き覚えがあるかもしれません。「絆ホルモン」「愛情ホルモン」「幸せホルモン」という呼称で近年よく知られるようになってきた分子です。
オキシトシンはその通称の通り、親子の絆、パートナーとの絆、ペットとの絆などに関係していることが示されています。ですが他にも作用がいっぱいあります。
例えば、子どもを産む際の分娩を誘発するための薬としてもとてもよく知られています。もともとオキシトシンという名前がギリシャ語の意味するところで「quick birth」から来ているので、実はこちらの方がメジャーな作用といえます。

そして今回の話と繋がる食欲についても、オキシトシンは関わりがあるという報告も既にあります。日本の自治医科大学の研究*では、オキシトシンを投与したマウスは、摂食・過食が抑制されるとのことです。これを踏まえると、絆ホルモンがダイエットに関わっているという、少し意外な関係が見えてきます。

*元の発表はこちら。

まとめに

眠気覚ましのカフェインと、絆ホルモンのオキシトシン。少し意外な分子が脳の摂食中枢ではたらくことによって、ダイエットに影響があることがわかりました。分子の作用は一つだけではないことが多いので、いろいろな面を見ることで科学のおもしろさに気がつきます。こうして色々な発見に触れることで、もっと多くの人にさらに科学を好きになってもらえたら幸いです。

ちなみに、今回の研究でマウスに与えているカフェインの量は、到底私たちが日常生活で摂取できる量ではありません。コーヒーをがぶ飲みしたからといって、すぐに痩せるなんてことはないということですので、ご注意を!

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理系であることを、全力で楽しむ集団。 「 理系の自分が好き、楽しい、活躍できる。 だから明日も理系でいたい。 理系の人が、自信を持って、そう思えるように。」 をビジョンとしています。 この事を実現するために、つまり理系の笑顔を増やすために、科学や理系の楽しさを多くの人へ届け、社会を盛り上げていきたい!という想いで活動しています。 HP:http://www.rikei-plus.com/

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