製薬業界を知る

2017/05/11

製薬・医療の世界では、どのような企業活動が行われているのか?

その最先端の情報を得るために、今回編集部が足を運んだのは、1,200社以上の企業が集まるライフサイエンス総合展・「ジャパンライフサイエンスウィーク」。学生の皆さんにとっては少々専門的な内容もあるかもしれませんが、業界の今をのぞいてみることで、その世界をより身近に感じられるはず━━。早速、「ブース紹介編(当記事)」「セミナー編」の2記事から、当日の様子をお届けします!

2017年4月19日(水)~21日(金)、東京ビッグサイトにて、製薬・医療機器・化学業界のための国際的なイベント「ジャパンライフサイエンスウィーク」が開かれました。

当イベントは、テーマごとに分かれた12の展示会から構成されており、全部で1,200社以上の企業が国内外からブースを出展、60,000人を超える業界関係者が参加するという、日本最大級のライフサイエンス総合展。製薬業界に関わる展示会だけでも、医薬品の原料となる化合物から開発・製造するための機器や包装材料まで、かなり広い範囲を網羅しています。また会場内ではセミナーも同時開催され、さまざまな企業や大学に所属する有識者の方々が講演を行いました。

イベントの会場は、医薬品の研究・開発・製造、医療機器の製造・設計という大きく2つのエリアに分かれていて、それぞれのエリアには関連するテーマの展示会が集まっています。どちらも会場はとにかく広く、賑わっていて、医薬品や医療業界の熱気が伝わってきました。当記事ではその模様を、出展ブースの紹介を中心にレポートします。

ジャパンライフサイエンスウィーク-CPhI Japan 国際医薬品原料・中間体展

まず、医薬品の研究・開発・製造エリアの中でも最もブースが多く、広い面積で行われていたのが「CPhI Japan 国際医薬品原料・中間体展」です。日本はもちろん、海外からの企業も多く出展しており、商談に来ている方々も国際色豊かでした。

 

医薬品原料・中間体×海外

海外からの企業で、出展数が最も多かったのが中国です。そのほかにも、韓国、インド、イタリア、スペインなどがブースを構えていました。

ジャパンライフサイエンスウィーク-中国

製薬のイメージがあまりないスペインのブースで話を聞いてみると、スペインは90年代に日本の製薬業界に参入したそうで、現在では30~40社程度の原薬メーカーが日本企業と取引をしているとのこと。壁一面に原薬や中間体の化学式が張られた中国エリアと比べるとシンプルなブースではありましたが、何やら熱心に話し込んでいる姿も見られました。

ジャパンライフサイエンスウィーク-スペイン

 

医薬品原料×「ヤマサ醤油」

CPhI Japan 国際医薬品原料・中間体展には、意外な日本企業のブースもいくつかありました。そのひとつが、「ヤマサ醤油」です。医薬品分野では核酸関連化合物に特化して研究・製造を行っており、海外との取引も多いそう。もとはうまみ成分の研究に端を発していて、RNAを分解して得られる5種類の化合物のうち、2種類をうまみ成分として使用していたことから、残りの3種類も何かしらの形で活用できないか考えたとのことです。今ではそれらの化合物を原料として酵素反応・有機合成を行い、取り扱う核酸関連化合物の範囲を広げています。

ジャパンライフサイエンスウィーク-ヤマサ醤油

そのほか、商材のひとつとして医薬品を取り扱い、世界各地で取引を行っている三菱商事や、大手製薬メーカーであるテバ製薬のグループ企業で、原薬を取り扱う「テバエーピーアイ」などがブースを出し、各国のビジネスパーソンと商談をしていました。

 

飲みやすい錠剤を提案する「ダイセル」

「ダイセル」は、口に含むとすっと溶ける口腔内崩壊錠用の賦形剤*を研究・開発している企業です。ダイセルが提供する賦形剤を薬の有効成分と混合して打錠するだけで口腔内崩壊錠がつくれるということで、製薬メーカーからはもちろん、サプリメントメーカーからの需要も高まっているそうです。現在もさらに錠剤の硬度を高めながら、崩壊しやすい賦形剤の研究を重ねています。

ほかにも、“飲みやすい錠剤”というテーマのもと、水に触れると表面がゲル化して喉を通りやすくなる「ゲル状保水性賦形剤」も開発中とのこと。ブースには錠剤が多く展示され、ポスターやモニターなども使い、賦形剤について分かりやすく解説されていました。

*賦形剤(ふけいざい)とは、医薬品や農薬などの取扱いあるいは成形の向上や服用を便利にするために加える添加剤のこと。錠剤では、乳糖やデンプンがよく用いられる。

ジャパンライフサイエンスウィーク-ダイセル

薬剤の特性に合わせたシリンジ*製造「テルモ」

「InnoPack Japan DDS・医薬品包装展」のエリアには、医療用・ラボ用のシリンジを生産する「テルモ」が。大きく構えたブースでは、大きさも素材もさまざまなシリンジがたくさん展示されていました。テルモは、製薬メーカーからの依頼で薬剤をシリンジに詰めて提供したりもしているそうで、展示品の中には注射用の薬剤を詰めたシリンジもありました。シリンジは、バイオ医薬品であればタンパク質の凝集が起きないようシリコンオイルフリーのものを使うなど、薬剤の特性に合わせた開発が行われています。

*シリンジとは、注射器の筒(注射筒)のこと。 注射器は、注射筒(シリンジ)と注射針によって構成されている。

ジャパンライフサイエンスウィーク-テルモ

進化するPTP*デザイン「プラグ」

医薬品の包装デザインを手掛ける「プラグ」は、医療従事者や患者の安全を第一に考えたデザインを提案する企業です。子どもの誤飲が多いPTPシートは大きな台紙にし、そこには絵や物語を書いて楽しめるようにしたり、忙しい医療従事者が取り違える危険性の高いバイアル*は、どの角度から見ても識別できるラベルにしたり、手に持ったときの感触だけで分かるようフタの形に変化を付けたりと、機知に富んだ発想で医療現場をサポートしています。先発医薬品とジェネリック医薬品の激しい競争の中で、他社との差別化としても使われているそうです。

*Press Through Packageの略。プラスチック様の樹脂とアルミのシートに錠剤が挟まっている状態で、そのシートから錠剤を押し出す形状が多い。錠剤、OD錠、カプセル剤では一般的な包装形態。
*バイアルとは、注射剤をいれるための容器で、ガラス(もしくはプラスチック)でできた瓶にゴムで栓をしたものを指す。 微生物の侵入を防ぎ、無菌状態を保つことができる。

ジャパンライフサイエンスウィーク-PLUG

産官学一体でバイオ医薬品の研究を推進「とっとりバイオフロンティア」

「BioPh Japan バイオファーマジャパン」の展示会からご紹介したいのは、鳥取県が鳥取大学および鳥取県産業振興機構と連携して設立した、産学官共同研究施設「とっとりバイオフロンティア」。この施設では、鳥取大学、大学発ベンチャー、民間企業が一体となって、染色体工学技術を核にした研究開発および事業化推進に取り組んでいます。

当ブースでは、人工染色体ベクターという技術が紹介されていました。人工染色体ベクターとは、ヒトあるいはマウスの染色体から不要な遺伝子領域を削除することにより開発した人工染色体で、どんなに巨大な遺伝子でも搭載することができます。この技術を使えば、ヒト抗体遺伝子をマウスに導入することが可能になり、そのマウスに免疫源を打つことで、バイオ医薬品のもととなるヒトの抗体をつくらせることができるようになります。バイオ医薬品を効率よく創製できるというこの画期的な技術は、現在さまざまな企業から注目されているようです。

ジャパンライフサイエンスウィーク-とっとりバイオフロンティア

そのほか、バイオ医薬品の基礎研究から開発、製造、臨床に至るまで、さまざまな工程で使われる機器を展示しているブースもありました。

また、「P-MEC Japan 医薬品原料 機器・装置展」では、ラボ用の分析装置や精製装置などが展示され、「ICSE Japan 製薬業界受託サービスエキスポ」では、大手製薬メーカーの「サノフィ」や「メルク」などもブースを出していました。

ジャパンライフサイエンスウィーク-メルク

医療機器エリアでは、介護支援用ロボットスーツの展示も

医療機器の製造・設計に関するブースが集まる展示会「MEDTEC Japan」のエリアでは、医療用のプラスチックや医療機器に使われる金属などを展示したブースや、医療用のソフトウェアを紹介するブースなどもありました。また、介護・福祉ロボット&機器開発エリアに出展していた「CYBERDYNE」のブースでは、介護支援用のロボットスーツのデモンストレーションも。

ジャパンライフサイエンスウィーク-CYBERDYNE

会場には、とにかくさまざまな団体がブースを構えていて、1日ではとても回り切れないほどでした。毎年日本で開かれるというこのイベントに、国際的な医薬品・医療業界のパワーを感じるとともに、これからの業界の発展にただならぬ期待を感じた1日でした。

以上、「ブース紹介編」をお届けしました。製薬業界をとりまく、さまざまなプレーヤーの熱量を感じてもらえたでしょうか。各プレーヤーは互いに協力し、人々の生命、暮らしに役立とうと努めています。このようなグローバルかつダイナミックな世界で活動できることも、製薬業界で働く醍醐味の一つですね。

※本記事は取材により得た情報を基に構成・執筆されたものであり、運営元の意見を代表するものではありません。

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SCIENCE SHIFT編集部

当メディアの編集部員です。学生の皆さんに今お届けすべき話題は何か?を日々考え、より良い情報を発信していきたいと思います。

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