仕事を知る

2016/12/12

営業職とは、「話し上手」の人がなる職業。……ではありません

唐突に申し訳ありません。コンサルタントの山田豊文と申します。私はこれまでさまざまな企業の経営に関する課題に向き合ってきました。その経験をもとに、営業職とはどんな仕事なのか、また新卒で営業職に配属された場合、活躍するにはどんな行動をとればいいのか、ささやかながらお伝えできればと思います。

営業職は多くの文系学生にとって第一のキャリアになり、就職・即現場、というケースも多いと思います。それだけに、就活中・内定後の段階から具体的な理解をしておくことが必要です。

しかし、漠然としたイメージであれば、多くの学生が営業職の仕事の内容について答えることができるものの、より詳しい仕事内容や、営業職として働く人の実情まで理解がおよんでいる学生となると、決して多くはありません。また、学生の中には営業職についてネガティブなイメージを抱いている人もいますが、それはこの職種について、一面的な理解が先行しているのも一因です。

営業職として積極的に働き、充実した形でキャリアを積み上げていくためには、前向きにこの職業を選択することが大切です。突然訪れる「営業職の壁」とも呼べる難しい局面を突破するために、どのようなスキルが求められるのか、どういった努力が必要とされるのかを知っておく必要性は大きいといえるでしょう。

ここでは、営業職に役立つスキルや、成長するために求められる要素について紹介します。営業職という選択肢を少しでも意識している学生の方は、ぜひとも参考にしてください。

 

営業職の仕事とは、単に「売る」ことか?

「営業職とは、どんな仕事だと思いますか?」と尋ねると、多くの学生が「さまざまな顧客に会い、自社の製品やサービスを売り込む仕事」だと答えます。

大まかなイメージという意味であれば、その回答は間違いではありません。しかし、この回答が営業職のすべてだとすれば、どこか即物的・機械的で、やり甲斐を見出すことは難しいと言わざるをえません。営業職を避けたがる就活生が少なからず存在する原因の1つは、この理解の仕方にあると思います。

ここで少し別の視点から考えてみましょう。世の中の企業が存続していくためには、欠かせない要素が2つあります。1つは、必要とされる製品やサービスを創り出し、提供すること。もう1つは、提供するべきサービスを多くの人に認知してもらい、さらに拡大させることです。

この2つの目的を達成することは、企業の利益向上だけではなく、市場ニーズに応える製品やサービスを提供するという意味で、多くの人の生活向上に貢献することにもつながります。

これら2つの目的のうち、営業職は後者の役割を大きく担っているポジションです。つまり、単なる「さまざまな顧客に会い、自社の製品やサービスを売り込む仕事」ではなく、「世の中に必要とされる製品・サービスを、それが益になる人に届け、誰かの生活を良くする仕事」だと捉えるべきです。そう考えた時、何かの “やりがい” のようなものが見えてくるのではないでしょうか。

 

営業職に向いたタイプとは?

文系学生 営業職に求められるスキル01

一面的な理解の話を続けると、「話し上手の人が営業職に向いている」という捉え方があります。そのため、物静かな学生の場合、最初から営業職という選択肢を避けてしまう傾向があります。

しかし実際のところは、営業職にとって「話し上手」という特徴は、絶対に必要になるわけではありません。

営業職においては、それ以上に「聞き上手かどうか」という点が重要になるのです。

聞き上手な営業パーソンは、顧客の口数が増えるため、より多くの情報を得ることができます。自分でたくさん話す人と、相手の言葉をより多く引き出せる人、どちらのタイプが会話の中で多くの情報を得られるかは明白です。

また、幅広い好奇心を持っていることも、営業の仕事に役立つ素養です。というのも、顧客はそれぞれに何かしらのニーズや問題を抱えているからなのです。こうした顧客が抱えるニーズや課題を捉え、解決するための提案を行うこともまた、営業に必要な役割です。

好奇心が強い人は、顧客の抱える課題やその原因について、考えをめぐらせることができます。その姿勢は顧客にも好印象を与え、信頼の獲得にもつながります。

これら2つの特徴を備えた人は、比較的営業の仕事に向いているタイプと言えるのです。

営業としてのキャリアを積み上げてくことによって、営業部門の管理職へとキャリアアップするだけではなく、企画部門や人材教育部門等の他部門への異動、異業種への転職、独立といった、さまざまな可能性が広がっていきます。

他の部門とは異なる素養が求められる営業職は、顧客と企業をつなぐ上では欠かせない、重要な存在です。企業に貢献できるのはもちろんのこと、より大きな意味で、社会人としての能力を高めることもできる、意義のある職種といっても過言ではないでしょう。

 

営業職に特に求められるスキルとは

営業職にとってもっとも大切なスキルとは、コミュニケーション能力です。

ただし、一口にコミュニケーションと言っても、営業職に必要とされる要素は、一般的なコミュニケーションとは異なっています。コミュニケーション能力というと、会話をしたり、相手の行動にうまくあわせることができたりと、広い意味で他者と接する力のことだと考えられがちです。

しかし、営業職におけるコミュニケーション能力は、ヒアリング力、提案力、プレゼンテーション力の3点が特に必要となります。

営業の仕事で新しく依頼をもらう方法は、大きく2つの形にわかれます。

1つは新しい顧客を獲得する方法。そしてもう1つは、すでに 取引のある顧客から新しい契約を獲得することです。

前者の例を言えば、法人向けに機器販売を行っている企業の営業職の場合、顧客の中には競合他社の機器を導入しているケースも少なくありません。こういったケースの場合、優秀な営業職は顧客と接触し始めた早い段階で、競合他社のリースアップ時期をヒアリングします。そしてリースアップ時期の前に、顧客から課題やニーズをヒアリングして、自社の製品の導入可能性を高めます。

こうした形で契約を成立させるためには、リースアップの時期や課題、ニーズを聞き出すヒアリング力と、ニーズに合わせたリース条件を準備する提案力、そしてニーズに結びつけてメリットを的確に顧客に伝えるプレゼンテーション力が欠かせないのです。

もちろん、これはあくまでも1つの例に過ぎません。実際には、仕事の中でふと新しい出会いがあったり、顧客の何気ない言葉の中に、抱えている課題やニーズが隠れていたりと、予期せぬところにチャンスがあるものなのです。
そうしたチャンスを敏感に察知し、ニーズや課題を聞き出すためには、相手の話を理解し、その意味を的確に汲み取るヒアリング力が重要です。聞き上手な人が営業職に向いている理由は、こうした点とも関係しているのです。

 

「一流」と呼ばれる営業パーソンになるには?

文系学生 営業職に求められるスキル02

 

優れた営業職になるためにはさまざまな能力が必要であると知って、難しい職種のように感じてしまった人もいるでしょう。

しかし、心配しないでください。最初から特別なコミュニケーション能力を備えていたり、聞き上手な人ばかりが、優秀な営業パーソンになるとは限らないのです。

国内販売大手の自動車メーカーの営業パーソンとして数々の賞を受賞後、米国の研修会社や国内の能力開発研究会社での勤務を経て、現在は自身が設立した会社で年間5,000人以上の研修を行っているある人物は、営業パーソンとして成長するために大切な要素について、意外な事を説明しています。

その人は延べ人数にして約15万4,000人に研修サービスを提供してきた一方で、若手の営業パーソンが成長していくためには、研修よりも経験を積むことが大切だと答えているのです。

ある程度の経験不足なら研修でも補うことはできるものの、まったく同じシチュエーションが存在しない営業の現場に臨機応変に対応するためには、さまざまな苦難を経験することが肝心です。研修で教わった知識も、そうした苦難にぶつかった時に、初めて自分の力に変えることができるのです。

説明するその人自身も、営業パーソンとして駆け出しの頃には顧客との関係がうまくいかず、上司に頼らざるを得ないことがありました。また日々、数多くの飛び込み営業をこなすことによって、一流の営業パーソンへとステップアップすることができたのです。

数多くの経験をこなす熱意、そして経験を通して学び、次に活かすためのPDCAサイクルを自ら回すことができるかどうか。それさえできれば、成長することは可能なのです。

そのためには、目標に向けて努力する上で、主体的に考え、自ら行動する姿勢が大切です。学生の間は、何か1つの目標を見つけ、たとえ壁にぶつかったとしても諦めずに、創意工夫をする習慣を身につけておきましょう。営業パーソンとしての経験を積み、キャリアを築いていくためには、第一に営業という仕事をポジティブに捉え、何事も積極的に取り組んでいく姿勢が求められるのです。

もちろん、モチベーションが下がってしまうこともあるでしょう。人とのつながりが、モチベーションを高めることがあります。落ちこんでいる時に、親しくなった顧客と話してモチベーションを回復させるということは、営業の仕事の中ではよくあることです。

会社の外の人たちと交流する機会が多く、広い人間関係を築くことができるのは、営業職の大きなメリットの1つです。自分が社会の中で学び、成長していることが実感できるでしょう。こうした経験を積み重ねる中で、一流の営業パーソンへとステップアップすることができるのです。

 

まとめ 営業職ってこんな人

今回、いくつかのキーワードが出てきました。

・聞き上手

・好奇心旺盛

・コミュニケーション力(提案力・プレゼン力・ヒアリング力)

・PDCAサイクル(1つの目標に向けて、諦めず、創意工夫をすること)

これらをまとめて、さらに言い換えると、

顧客の真の課題を掴み、これを解決していく意識を持っている人

……ということになります。そうした力に自信のある人はもちろん、その力を伸ばしたいと考えている人は、営業職としての就職を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。

製薬業界・超入門
タグ一覧 営業職
記事一覧へ
山田 豊文

株式会社日本能率協会コンサルティングにて約15年間、営業分野を中心とした大手企業向けの経営コンサルティング、研修に携わる。2000年以降、ベンチャーキャピタル、シンクタンク、ITベンダーなどでベンチャー企業向け上場支援、大手企業向け経営コンサルティング、メーカーおよび卸売業向け提案営業研修に従事。 2012年に独立、現在は株式会社プロセスイノベーションの代表取締役として経営コンサルティング、人材育成に力を注いでいる。著書に三恵社「ITによるマーケティングの革新」(共著)。

関連記事