スキルを磨く

2017/08/08

上阪徹さんによる「聞く力」、連載第4回をお届けします。今回は、社会人として働き始めたとき、聞く力があるかないかで仕事の質が大きく変わってくる、というお話です。すでに社会人経験のあるひとはもちろん、アルバイトなどでも実感できる内容ではないでしょうか。

コミュニケーション力といえば、「話す力」「伝える力」が真っ先に浮かぶかもしれませんが、実は「聞く力」が大切。そんなテーマでお届けしてきた連載、第4回は社会人になった後、実は聞く力は極めて重要になる、というお話です。

 

仕事のやり直し、差し戻しはしょうがない?

仕事のやり直し、差し戻しはしょうがない?

社会人になれば、一人ひとりが仕事を与えられることになります。このとき、できればこうはなりたくないことがあります。それが、仕事をお願いされた人からの、やり直しや差し戻しです。

上司やお客さまから仕事を依頼されて、提出した。ところが、上司やお客さまからのOKがもらえない。やむなく仕事をやり直す。場合によっては、これが繰り返されてしまう。せっかく時間をかけたのに。これでいいと思ったのに。一生懸命やったのに……。そんなことになっては、つらいでしょう。

しかもこれは、仕事を提出した本人だけではなく、仕事をお願いした側も残念に思っている、ということを理解しておく必要があります。

誰だって、やり直しを命じたり、差し戻しをしたくはないのです。どうせなら一発で、「お、思っていた通りのものが上がってきたな。ありがとう」と言いたいに決まっています。やり戻しや差し戻しは、仕事を依頼した側にも不信感を生んでしまいかねないのです。

ところが、やり直しや差し戻しは、往々にして起こります。どうして起きてしまうのか。起きないようにするには、どうすればいいのか。ここで、重要なキーワードになるのが、「聞く力」なのです。

 

仕事を依頼する側・受ける側

これは文章を書く仕事をしている私自身も経験していることですが、仕事を受ける側としても、仕事を出す側になるときにも、やり直しや差し戻しになる場合は、ひとつのパターンがあります。それは、しっかりコミュニケーションができていないとき、なのです。

「こういうアウトプットかな」と、ぼんやり打ち合わせをしてしまう。お互い「これでいいんだ」と思い込んでいる。ところが、双方の「これでいいんだ」に大きなギャップがあったりするのです。

結果として、フタを開けてみると「こんなつもりじゃなかった」「こんなはずじゃなかった」ということになってしまう。

それを防ぐために必要なことは、仕事のアウトプットについて、仕事をスタートさせる前に、しっかりイメージを揃えておくことです。ここで「聞く力」が活きてくるのです。

多くのケースで、仕事を依頼する側には、仕事のアウトプットのイメージはあるものです。それがどのようなものなのか、どのくらいちゃんと依頼者から話を聞き出せるか。それが問われてくるということです。

ここで聞く力を発揮できず、依頼者が考えていることをうまく聞き出せないままに仕事に向かうようなことになってしまったら、どうなるか。アウトプットイメージがつかめていないまま、さらには、お互いの「これでいいんだ」がズレたまま、やり直し、差し戻しになってしまう可能性は高くなる、というわけなのです。

とりわけ社会人の経験が浅いうちは、上司や先輩から仕事を依頼されることがたくさんあります。ここで、しっかり「聞く力」を発揮できるかどうかで、大きな差がついてしまうのです。

 

書類ひとつにも目的がある

書類ひとつにも目的がある

実際、よくあるのは、こんなケースです。書類づくりを頼まれた。てっきり社内向けの書類だと思って作っていたら、実はお客さまに向けた書類だった。

「こんな書き方をしていたら、お客さまに失礼じゃないか」となってしまう。何に使われるのか、「目的」をきちんと確認できていなかったから、こういうことが起きてしまったのです。

目的のない仕事というのは、基本的にありません。すべての仕事には何らかの意味がある。それをしっかり確認する必要があります。

こんなケースもあります。依頼する側は、自分の上司に提出する書類を作ってもらうつもりでいた。ところが、受ける側は依頼した相手に向けて書類を作ってしまった。

「いや、私が見る書類じゃなくて、私の上司が見る書類なんだよ」となってしまった。

きちんと聞かなかったために、仕事の「ターゲット」がずれてしまったのです。そうすると、ピント外れなものを作ってしまうことになります。そして上司の上司に向けた書類にするには、何が大切になるのかを、きちんと確認しなければならなかった、誰に向けた仕事なのかを、しっかり理解しておく必要があったのです。

こんなこともあります。依頼する側は、A4用紙5枚に書類をまとめてほしいと思っていた。ところが、10枚で作ってしまった。

「そうじゃないんだよ、5枚にまとめてほしかったんだよ」と返されてしまった。仕事の「アウトプットイメージ」をしっかり聞いておくべきだった、ということです。

実のところ、仕事を依頼する側が、仕事に必要なすべての情報を必ずしも与えてくれるとは限りません。だから、仕事をする上で何が必要になるのか、きちんと「想像」して、聞き出していかなければいけないのです。

端的にいえば、「聞く力」を使って正しい準備をする、ということ。やり直しや差し戻しをしないためにも、次の3つが特に重要になると私は考えています。

 1. 仕事の目的を確認する

 2. 仕事のターゲットを確認する

 3. 仕事のアウトプットイメージを共有する

目的は何か。ターゲットは誰か。アウトプットイメージはどんなものか。自分のアウトプットイメージが、依頼者が持っているものに近づくまで、しっかり聞いていかなければいけません。そして、しっかり聞くことができれば、実は仕事の醍醐味も変わっていきます。「やらされている」感が、どんどんなくなっていくのです。なぜなら、その仕事の意味がしっかり理解できるから。

 

その仕事は楽しいか

その仕事は楽しいか

レンガを積み上げる職人、という有名な逸話があります。道を歩いていると、職人がつまらなそうにレンガを積み上げている。何をしているのか、と尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「レンガを積み上げているんですよ」

ところが少し離れた場所では、同じ仕事をしているのとはとても思えないほど、いきいきしながらレンガを積み上げている職人がいました。尋ねると、こう言いました。

「教会を造っているんです」

レンガを積み上げる仕事は同じ。違いは、目的を理解し、ターゲットを理解し、アウトプットイメージを理解して、誰かを喜ばせられると気づいているかどうか、です。そうすると、仕事は単なる作業ではなくなる。人の役に立てる取り組みに変わるのです。

「聞く力」は、仕事の面白みも高めてくれます。ぜひ、頭に入れておいてもらえたら、と思います。

※本記事の内容は筆者個人の知識と経験に基づくものであり、運営元の意見を代表するものではありません。
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上阪 徹

1966年、兵庫県生まれ。早稲田大学商学部卒。リクルート・グループを経て、94年よりフリー。著書に『〆切仕事術』『「聞き方」を変えれば、あなたの仕事はうまくいく』『成城石井はなぜ安くないのに選ばれるのか?』『成功者3000人の言葉』『職業、ブックライター。』『書いて生きていく プロ文章論』など20冊以上。インタビュー集に累計40万部を突破した『プロ論。』シリーズ、『外資系トップの仕事力』シリーズ。インタビューで書き上げるブックライター作品も60冊以上を数える。公式サイト: http://uesakatoru.com

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