スキルを磨く

2017/09/14

インタビュアー・ブックライターである上阪徹さんによる「聞く力」に関する連載、いよいよ総まとめです。聞く力は就活や仕事でどのように役立つか、聞く力を学生時代のうちに身につけるにはどうしたら良いか、などについてお届けしてきました。最終回は、「聞く力」が、人生全体に及ぼすものについて。

「聞く力」の大切さについて語ってきた本連載、第5回最終回は、聞く力は仕事でもプライベートでも大きな力を発揮してくれる、というお話です。

聞くことは、「あなたに関心がある」というシグナル

聞くことは、「あなたに関心がある」というシグナル

私はこれまで、著名な方々から一般の方々まで、3000人以上の方にインタビューしてきました。その経験から、これは間違いなくそうだろう、と確信していることがあります。「人は自分のことを話したい生き物だ」ということです。
なぜなら、多くの方が本当に楽しそうにインタビューを受け、たくさんのことを話してくださるから。
もちろん、しゃべることについての好き嫌い、得意不得意はあるのかもしれません。しかし、基本的に自分について知ってもらうことが嫌いな人はいない。それが、私のひとつの結論です。
人に聞いてもらえて、しゃべる機会を得られるというのは、とてもうれしい時間であるということ。つまり、聞くことは、相手の満足を生み出すことにつながるのです。

では、どうして聞いてもらうことはうれしいのか。それは、自分自身を振り返ってみるとわかると思います。自分の話を聞いてもらっているということは、相手は自分に関心があるということ。自分に興味を持たれて嫌な人はまずいないでしょう。
逆に、「オレはしゃべりがうまい」「コミュニケーションは得意だ」とばかりに、一方的に話をずっとする相手だったとしたら、どうでしょう。こちらに、ひとつの質問すらない。「ああ、この人は自分には関心はないんだな」と思ってしまうのではないでしょうか。そしてそういう人に、果たして良い印象を持てるかどうか。

 

聞く力があると、信頼感を生みやすい

聞く力によって、相手のニーズ、相手が聞きたいことを引き出すことができ、仕事がスムーズに行く、という話をこれまでにもしてきましたが、聞く力はプライベートでも力を発揮します。

例えば、よく言われる話に、「合コンでモテる男子は聞き上手」があります。自慢話や武勇伝を合コンで延々としたところで、実は女の子はなびいてはくれない。むしろ、そんなことをするよりも、自分について、いろいろ聞いてくれるほうがよほど印象が良い、ということです。聞くことは、相手への関心のシグナルだから。また、聞かれることは心地良いことだから。

実際、合コンに限らず、まわりを見てみても、信頼感のある人というのは、えてして聞き上手ではないでしょうか。必ずしも、話し上手で、自分についてうまくしゃべることができる人が信頼感のある人、とはならないのではないでしょうか。
これには、聞いてもらえるうれしさに加えて、もうひとつ理由があります。それは、人に話をすることによって、実は自分の中で物事を整理していくことができるから。
私は仕事柄、経営者のインタビューもよく行いますが、以前「インタビューだけしてくれないか」という依頼を受けたことがあります。その理由は、質問されているうちに、自分の頭の中が整理されていくから、ということでした。

 

聞いてあげることは人助けになる

聞いてあげることは人助けになる

頭の中にぼんやりとあることが、質問されて外に出てくることで、はっきりと見えるようになっていったりすることは、実は多いのです。
例えば、悩み事があるとき、もやもやと思っていることを、人に聞いてもらうだけですっきりした、ということは誰にでもあるでしょう。これは、取材で精神科医に教えてもらった話でもあるのですが、そもそも悩みや不安は、もやもやぼんやりしたものだからこそ、大きくなってくるものなのです。何で悩んでいるのか、何を不安に思っているのか。それがぼんやりしているから、不安になるのです。

ところが、ぼんやりしたものが、話すプロセスではっきりしたものになっていく。もやもやや、ぼんやりが少しずつ晴れていく。結果的に、物事が解決したわけでもないのに、すっきりできる、というわけです。
人の話をうまく聞いてあげることの効能は、思った以上に大きいのです。人の話を聞こうという意識と、聞くことができる力を持っておくことは、大きな意味を持ってくる、ということです。

 

初対面の場でも役に立つ「聞く力」

社会人になり、年次を経ていくと、初対面の人と顔を合わせて、コミュニケーションを交わす必要がある機会も増えていきます。ビジネスの現場でもそうですし、パーティーなどのような場でもそう。プライベートでも、仲間の垣根を越えた集まりがあったり、知人から紹介を受けたりすることもあります。
そういう場合、何を話していいかわからない、という声をよく耳にします。相手のことがよくわからない中で、どんな話題をしゃべっていいのか、悩んでしまう、と。
しかし、こういう場合でも、ぜひ知っておいてほしいのが、聞く力なのです。話をしようとするから、困ってしまうのです。そうではなく、相手から話を聞こうとすればいいのです。

話すことには困っても、聞くことには実は困りません。聞く内容は、いくらでもあるからです。「会社ではどんなお仕事をなさっているのですか」「何年お勤めですか」「会社はどこにありますか」「お生まれはどちらですか」「休みの日はどんなことをされていますか」「最近、ご覧になった映画や本はありますか」「スポーツを見たりしますか」……。
もちろん、そのときそのときのシチュエーションにもよると思いますが、その場で相手に聞けることはたくさんあると思います。それを聞いていけばいいのです。そうすれば、相手は答えを返してくれる。関心を持って質問をしてくれているわけですから、悪い気はしないでしょう。
そして戻ってきた内容に対して、聞いてみたいことを、また返していけばいい。もしかすると、「サッカー好き」など共通の話題が見つかって、思わぬ盛り上がりになるかもしれません。それも相手から聞こうとするから、出てくるものなのです。

もし、相手が興味もない内容なのに、こっちが詳しいとばかりにダラダラしゃべっていても、これではいいコミュニケーションにはならないでしょう。初対面では、しゃべる力ではなく、「聞く力」こそが、実はコミュニケーションを活性化してくれるのです。

 

聞くことは自分の学びになる

聞くことは自分の学びになる

もとより私は取材やインタビューの形で聞くことが仕事のひとつになっているわけですが、これは人生の幸運だったと思っています。なぜなら、聞くことを通じて、たくさんの学びを得ることができるから。それこそ1時間の取材で、本1冊分ほどあるのではないか、という学びを得られることもあります。
学びはしゃべることで得られるのではありません。聞くことによってこそ、得られるのです。話すことはアウトプットであり、聞くことこそインプット。聞くことによって、なにがしかを得ることができる。聞くことによって、知識を得たり、気づきを得たり、発見を得たりすることができるのです。
あらためてまとめてみると、筆者の考える「聞く力があること」のメリットは以下のようになります。

聞く力があると、

  • 相手への興味、関心を示すことができる
  • 相手からの信頼感を生みやすい
  • 相手の悩み、もやもやをスッキリ整理してあげられる
  • 初対面の相手とのコミュニケーションに役立つ
  • 自分の学び=インプットを増やすことができる

「聞く力」の効能。仕事でも、プライベートでも、ぜひ意識してもらえたらと思います。それはきっと人間関係を、さらには人生を、大いに豊かにしてくれると私は思います。

※本記事の内容は筆者個人の知識と経験に基づくものであり、運営元の意見を代表するものではありません。

 
前の記事はこちら:
第4回 新社会人として、大きく差がつく「聞く力」

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上阪 徹

1966年、兵庫県生まれ。早稲田大学商学部卒。リクルート・グループを経て、94年よりフリー。著書に『〆切仕事術』『「聞き方」を変えれば、あなたの仕事はうまくいく』『成城石井はなぜ安くないのに選ばれるのか?』『成功者3000人の言葉』『職業、ブックライター。』『書いて生きていく プロ文章論』など20冊以上。インタビュー集に累計40万部を突破した『プロ論。』シリーズ、『外資系トップの仕事力』シリーズ。インタビューで書き上げるブックライター作品も60冊以上を数える。公式サイト: http://uesakatoru.com

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