製薬業界を知る

2017/01/31

「薬」と聞いて、みなさんは何を想像しますか?例えば、花粉症の時期になると病院でもらえるいつもの薬を思い浮かべる人もいれば、ドラッグストアでよく買う風邪薬や湿布などを想像した人もいるでしょう。どちらも薬であることは間違いありませんが、それぞれ種類が違います。実は、薬には「医療用医薬品」と「OTC医薬品」という2つの種類があります。厚生労働省のHPから引用すると、医療用医薬品は“医師・歯科医師の処方せん、もしくは指示によって使用されることを目的とする医薬品”であり、OTC医薬品は、“一般の人が薬局などで購入し、自らの判断で使用する医薬品”のことを指します。つまり、病院で処方される花粉症の薬は医療用医薬品、ドラッグストアで買える風邪薬や湿布などはOTC医薬品、ということです。そして、これらの薬を開発し製造販売するのが製薬メーカーです。当記事では、薬の種類別に見た製薬メーカーの特徴についてご紹介します。

 

【1】医療用医薬品メーカー

医薬品産業は「知識集約型産業」とも呼ばれており、資源が乏しい日本にとって、経済成長を担う重要な産業として位置付けられています。また、日本は医薬品市場規模が世界第2位1であり、その市場規模は世界中の製薬メーカーにとって魅力であるため、外資メーカーも多く参入しています。ここでは、「新薬メーカー」「ジェネリック医薬品メーカー」それぞれの特徴について見ていきましょう。

1 2016年にIMSジャパンが発表した「IMSジャパン トップライン市場データ」によると、2015年度の医療用医薬品市場規模は10兆8377億8500万円となっている。

新薬メーカー

薬の種類別にみる製薬メーカーの特徴01

新薬とは、長い研究開発期間をかけて新しい成分の有効性・安全性が確認された後、国の承認を受けて発売された医薬品のことです。新薬とは特許の期間が残っている医薬品、長期収載品等で構成される医薬品です。

新薬開発にかかる研究開発費は、数百億〜数千億程度と言われており、売り上げに対して平均で約11%を占めています。日本が世界に誇る自動車産業で約5%、製造業全体の平均でも約4%という数字から見ても、研究開発費の高さが新薬メーカーの特徴としてあげられます。また、研究者一人当たりで見ると平均して約6,710万円という調査結果がでており、全産業の平均2,815万円と比較して、非常に高水準であることが分かります。

このように莫大な研究開発費が必要なのは、新薬の開発プロセスが10年〜20年と長く、成功率約3万分の1という厳しい世界だからです。新薬の開発プロセスは、以下の通りです。

・基礎研究(2~3年)

・非臨床試験(3~5年)

・臨床試験(3~7年)

・承認申請と審査(1~2年)

・発売

新薬を開発するためには莫大な研究開発費と時間がかかるため、新薬は特許により一定の期間保護されることになります。そのため、開発に成功した企業が独占的に販売することが可能となります。新薬を開発するメーカーは、特許により保護されている間で新薬開発にかかった研究開発費を回収し、次の新薬開発へと投資するわけです。

一方で、いずれは特許が切れるわけですから、新薬メーカーでは最近世の中に出たばかりの新しい薬だけでなく、当然長く使われている医薬品も製造販売しています。このような特許が切れた後も長く使われている医薬品は「長期収載品」と呼ばれており、これまで日本の新薬メーカーは長期収載品でも一定の収益を確保してきました。

しかし、現在は長期収載品についてジェネリック医薬品の使用が促進されているため、長期収載品による収益確保からの脱却が求められています。

そして、いま新薬メーカーはグローバルに展開できる革新的新薬の創出を役割として期待されているのです。そのため、過去に行われたような規模拡大のためのM&Aではなく、現在は研究開発を選択・集中すべく、領域単位での業界再編が動きとして見られるようになってきました。

同時に、繊維業や食品業などの医薬品以外の他業種から派生して独自の強みを活かす企業、特定の領域に特化する企業、ジェネリック医薬品も同時に扱うことで新たな事業を模索する企業など、「新薬メーカー」と言っても、そのビジネスモデルはさまざまです。

規模では外資メーカーにおよびませんが、日本は世界で第2位の新薬創出国でもあります。どのようなビジネスモデルを選択するにしても、新薬メーカーはその実力を世界に向けて発揮し、今後より一層国際競争力を強化していくことが必要になるでしょう。

 

ジェネリック医薬品メーカー

ジェネリック医薬品とは、新薬の特許が切れたのち、同じ有効成分を用いて製造販売される医療用医薬品のことを指します。ジェネリック医薬品メーカーには、ジェネリック医薬品のみを扱うメーカー(専業メーカー)だけでなく、新薬とジェネリック医薬品の両方を製造販売するメーカー(兼業メーカー)も存在します。

ジェネリック医薬品は、有効成分や含量が新薬と同じであり、治療効果や安全性は同等のものと国に承認されなければなりません。一方で、添加物や性状(薬の色や外観等)、剤型は異なることが認められています。そのため、ジェネリック医薬品の研究開発では、大きくて服用しづらい錠剤を小さくしたり、コーティングなどで苦みを少なくしたりと、さまざまな付加価値を追及しています。

ジェネリック医薬品は新薬と同じ有効成分を用いて開発されるため、基礎研究、非臨床試験、臨床試験の一部の過程を省略できます。ジェネリック医薬品の開発プロセスは、以下の通りです。

・製剤研究(1~3年)

・承認申請と審査(1~2年)

・生物学的同等試験 2(1〜2年)

・発売

2 ジェネリック医薬品が新薬と同等の効能・効果を持っていることを示すために実施する試験。通常、健康な成人を対象として実施し、ジェネリック医薬品と新薬の、血中濃度の推移を比較することで行う。

新薬に比べると、発売までにかかる研究開発期間が短く、コストが少ないので、ジェネリック医薬品は新薬よりも低価格で販売されています。

このジェネリック医薬品は、医療費の削減にも一役買っています。少子高齢化が進む日本において、社会保障制度の維持は無視できない問題であり、今後もより一層の医療費削減が強く求められています。 このような背景のなか、ジェネリック医薬品の使用促進が国の政策として実施されており、薬剤費を抑え、医療費の削減に貢献しています。過去には、海外よりもシェアが低い傾向にあった日本においても、ジェネリック医薬品の国内市場の規模は直近10年で急成長を遂げており、シェアも約60%まで伸びています。富士経済の2016年の発表によれば、2015年度の国内市場規模は7,897億円。前年度比59.4%増となっており、急速な市場の拡大が見て取れます。

今後ジェネリック医薬品メーカーには、高付加価値製剤の開発、高品質な製品を安定供給する体制の構築、海外市場への展開などが期待されています。

高付加価値製剤の開発においては、水なしでも服用可能な口腔内崩壊錠の開発、といった患者さんにとっての付加価値だけでなく、薬の表面の文字を印刷したり、吸湿性の高い薬を通常の薬と同じように保存可能にするといった、医療従事者にとっての付加価値への要望に応えていく必要があります。 安定供給については、日本製薬団体連合会により、ジェネリック医薬品供給ガイドラインが定められており、ジェネリック医薬品メーカーは新たな工場の建設等、設備投資に積極的な姿勢を示して、安定供給体制の確保を目指しています。

さらに将来的な成長戦略のため、海外市場への参入を表明する企業、バイオシミラー市場へ参入する企業など、新薬メーカーと同様に、これまでと違ったビジネスモデルの構築が模索されています。

 

【2】OTCメーカー

薬の種類別にみる製薬メーカーの特徴02

OTC医薬品は、医療用医薬品とは異なり、健康管理や軽い病気の緩和などを目的としたセルフメディケーションの担い手として期待される医薬品です。OTC医薬品の国内市場規模は約6,500億円。よくCMなどで目にするため、医療用医薬品に比べて市場規模が小さいことに驚かれる方もいるかもしれません。実は、医療用医薬品には広告に厳しい規制が課せられているため、あまり馴染みがないように感じる方が多いのだと思います。

一方のOTC医薬品は、CMで目にすることも多く、ドラッグストアなどでも購入できることから、OTC医薬品メーカーは生活者に近い存在と感じられるでしょう。

OTC医薬品は、効能効果や使用方法、販売方法などの違いにより、要指導医薬品と一般用医薬品(第一種〜第三種)に分類されています。医師の処方せんは必要ありませんが、一部で対面販売による薬剤師の説明や書類の保管が必要なOTC医薬品もあります。

2017年1月から、医療費削減を目的とした「セルフメディケーション税制」が導入されました。厚生労働省は、“健康維持増進及び疾病の予防への取り組みとして一定の取り組みを行う個人が、平成29年1月1日以降にスイッチOTC医薬品(要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品)を購入した際に、その購入費用について所得控除を受けることができる”と発表しています。そして日本OTC医薬品協会は、10年後のOTC医薬品産業のあるべき姿を「OTC医薬品産業グランドデザイン」として策定し、OTC医薬品によるセルフメディケーションの必要性を示しています。

 

おわりに

製薬メーカーにはさまざまなタイプがあるため、企業選択で迷う学生さんも多いことでしょう。私が製薬会社に入社した8年前と比べても、医療ニーズの変化に伴い選択肢がさらに増えていると感じます。しかしこれは、自分にあった企業を見つけられるチャンスが増えている、とも捉えることができます。それぞれの特徴と自身の考えを照らし合わせながら、あなたらしい答えを見つけてみてくださいね。

 

製薬業界・超入門
タグ一覧 OTC医薬品 新薬 製薬業界
記事一覧へ
KEI

私立大学薬学部卒業後、内資製薬メーカーにてMRとして6年間勤務。その後退職し、2年のブランク後にCSO企業に入社。現在はコントラクトMRとして外資製薬メーカーで勤務している。

関連記事