未来を考える

2021/09/24

話題になった「2025年問題」が目前にまで迫ってきています。サイエンスシフトも何度かこの2025年問題をテーマに、医療業界・製薬業界の視点で読者の皆さまに問題提起をしてきました。

※過去の2025年問題がテーマの記事はこちらから

今さら聞けない「2025年問題」とは何か。また、さらにその先に待ち構える「2030年、2040年問題」とは何か。これからの未来の中心となる読者の皆さまに、ぜひ読んでいただきたい、20XX問題の総まとめです。

 

 

はじめに

■2030年問題の前提にある「2025年問題」をおさらい

「20××問題」という言葉を頻繁に耳にする機会がある方も多いでしょう。本記事では2030年問題をメインに取り上げ、この先の日本が向き合うべき問題について概要を学んでいきます。

2030年に起き得る問題は、突然降ってくるものではなく、現在と地続きになっています。それを示すために簡単におさらいしておきたいのが、2025年問題です。2025年には第1次ベビーブームの時期に生まれた団塊の世代全てが75歳以上になり、「超高齢化社会」がさらに進みます。高齢者の増加率は、2025年にピークを迎えると言ってもいいでしょう。
今後の人口推計値を見てみると、2025年に75歳以上の人口は、総人口の1億2254万人に対し、2180万人に増加します。65歳以上の人口と合算すると、3677万人。人口の3分の1の割合にまで達する計算です。高齢者人口の推移をみていくと、高齢化率の高さが問題化していくことになります。
しかも、日本の総人口は2010年をピークに減少傾向が続いています。超高齢化社会の訪れ、人口減少、そしてそれに伴う少子化。これらの要素が重なることで生じるのが、2025年問題です。
起こり得る問題として特に大きいのが、医療・介護負担の増加や社会保障の不安、経済成長の鈍化、労働力の減少などです。

これらの問題が2030年にはどのような状況になるのか、一つずつ詳しく紐解いていきましょう。

 

2030年問題について

■「2025年問題」より、さらに一歩進む高齢化

先ほどご紹介したような人口の推移は、2030年になるとさらに深刻化します。総人口の推計が1億1913万人であるのに対し、65歳以上の人口は3716万人に達する見込みです。
日本の高齢化の推移は欧米諸国やアジアと比較しても非常に速いスピードで進んでおり、2005年に最も高い水準となりました。この傾向は、2030年まで変わらず続くと見られています。

 

■取りざたされる医療・介護、社会保障、経済の抱える問題

 
・問題1:医療・介護業界の不安
65歳以上の高齢者の割合が人口の3分の1に達すると考えたときに、最初に思い浮かぶのが医療・介護の問題かもしれません。超高齢化社会に対して現在日本人の平均寿命は右肩上がりで伸びており、「人生100年時代」と呼ばれるほどです。
財務省の資料によれば、75歳以上になると他の世代に比べ、1人当たりの医療費や要支援・要介護認定率は大幅に上昇します。高齢者が健康な状態を保ち続けるのは難しいのが現状です。認知症や寝たきりの患者が増えれば、当然医療・介護のニーズは今まで以上に高まるとともに、医療・介護費用は増加していくことになります。一方で20~64歳の現役世代の人口が減少する中では医師や看護師、介護士などの不足が深刻化し、需要と供給のバランスが取れなくなる可能性にも目を向ける必要があります。
患者数は増加の一途をたどり医療業界における労働環境がより一層過酷な状況になれば、地域医療の崩壊のみならず、国民全体の健康が脅かされることになるでしょう。

 
・問題2:社会保障費負担の増大
医療費・介護費の増加による、若い世代の社会保障負担の問題もあります。2030年までに75歳以上の後期高齢者が大幅に増加することが見込まれており、75歳以上になると他の世代に比べ一人あたりの医療費・介護費が増大は避けられず、保険料が今よりさらに高くなるのです。

厚生労働省が発表している「2040年を見据えた社会保障の見通し」によれば、社会保障給付費のうち医療費は2018年時点の39.2兆円から、2040年時点では66.7兆円にまで増大する見込みです。さらに財務省は公式に、「仮に医療費・介護費の伸びを放置すれば、今後も保険料負担の増加は免れない」としています。

医療費・介護費負担が上昇する要因としては、労働者の報酬の伸び悩みも指摘されています。この後に述べる「人手不足による経済成長の鈍化」の問題も踏まえると、「収入は増えないのに社会保険料だけが増えていく」という状況が今後も続いてしまう可能性があります。

 
・問題3:人手不足が招く経済成長の鈍化と地方の衰退
2030年問題でもう一つ懸念されるのが、労働人口の減少による人手不足が招く経済成長の鈍化です。パーソル総合研究所の調べによれば、2030年には労働需要7073万人に対して、644万人の不足が出るとされています。

内閣府では経済成長にブレーキがかかってしまう状態を、以下のような図で示しています。

引用:内閣府「人口急減・超高齢化の問題点」

人口の急速な減少と超高齢化が及ぼす影響として、経済活動を担う労働力人口が著しく減少する。労働力人口の比率が下がることで社会保障費などがかさみ、経済にマイナスの不可をかける状態になる。このことによって産業の成長力が低下し、国内の市場規模が縮小。結果的に新たなイノベーションが生じにくくなり、投資が不活発に。さらに成長力が低下するという負のスパイラルです。
政府は、労働力不足を補うために一人あたりの労働時間が長くなるとさらに少子化が進行し、さらなる労働力人口の減少を招く悪循環の懸念も示しています。

また、現在でも問題になっている若者の都心への流出が、少子化の時代においては一層進むことが予測されます。都市部に人が集中し地方自治体に過疎地域がさらに増えれば都市と地方の経済格差が増大し、地方の衰退は免れないでしょう。

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参考:
パーソル総合研究所・中央大学「労働市場の未来推計2030」
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/research/activity/spe/roudou2030/
内閣府「人口急減・超高齢化の問題点」
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/future/sentaku/s2_3.html

 

■現在期待される政府や産業界の対策

ここまでは2030年問題の具体的内容を見てきましたが、これらに対して現在どのような対策がとられているのかについても簡単に押さえておきましょう。

・貴重な労働人口を守る働き方改革
「働き方改革」と聞くと、副業解禁のニュースなどを思い浮かべる方も多いかもしれません。多様な働き方を認める働き方改革は、2019年の本格施行以降すでに一般に浸透しはじめています。

働き方改革は、労働人口の減少による人不足の解決を目指してスタートしたものです。雇用形態による待遇格差の是正や労働時間の見直し、多様な働き方を実現することによって、一人あたりの生産性の向上を狙います。
簡単に言えば、国民一人ひとりが自分の持つ才能を得意分野で存分に発揮し、誰もが働きやすい社会を作ることで、不足する労働力を賄おうとしているのです。働き手がワーク・ライフ・バランスの取れた暮らしができれば生活に余裕が生まれ、出生率の向上も見込めます。

また、逼迫する医療業界に対しても「医師の働き方改革の推進」が検討され、2021年5月に改正医療法が成立しました。今後医師の働き方が是正されていけば、将来懸念が高まっている医療人材の確保につながるかもしれません。

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参考:
厚生労働省「「働き方改革」の実現に向けて」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html

NHKニュース「勤務医らの働き方改革推進 改正医療法 参院本会議で可決・成立」2021年5月21日
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210521/k10013043671000.html

 
・女性や「生涯現役」で活躍する高齢者の社会進出
働き方改革とも少し関係しますが、労働人口減少に歯止めをかけるためのもう一つの対策として期待されているのが、女性や高齢者の活躍です。

従来は結婚・出産などのライフステージによってキャリアの断絶が起きやすかった女性が、働き方改革が推奨する柔軟な働き方によって自分の望むキャリアを築けるようになれば、「働きたくても働けない」現役世代を最小限に抑えることが可能です。

そして近年特に注目を浴びているのが、「生涯現役社会」の構築――すなわち、高齢者が定年後もこれまで培った知見や経験を活かして、活躍し続けるという考え方です。実際に、現在は定年後も同じ企業で働ける「継続雇用制度」の導入が進み、民間企業による高齢者向けの就職支援サービスも登場しはじめています。

 
・DXによる生産性向上
働き方や雇用面での変革以外に、2030年問題に向けて日本が注力しているのがDXの推進です。DXとは「デジタルトランスフォーメーション」の略称で、デジタル技術によって人々の暮らしをより良いものへ変革させる意味合いを持ちます。
これを労働の現場に当てはめて考えると、AIなど最新技術の活用やRPA(Robotic Process Automation)による業務の自動化、IoTの導入などが該当します。

DXによって期待できる効果はさまざまですが、中でも業務効率化による生産性向上は欠かせないポイントです。すでに新型コロナウイルス感染症によってリモートワークなどITを活用した働き方が浸透する状況を鑑みても、各企業のDXの推進は急務と言えるでしょう。

これは社会保障――医療・介護の現場も同様で、厚生労働省は2030年、そして2040年の社会が迎える大きな時代の変化に対して、「社会保障や働き方の在り方はDXを前提として考えていく必要がある」としています。

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参考:
厚生労働省「令和2年版厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える- 第2章 令和時代の社会保障と働き方のあり方」P.131
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/19/dl/1-02.pdf
掲載元:https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/19/index.html

 

■2030年を見据えたSDGsの動きにも注目が集まる

最後に言及しておきたいのが、2015年の国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)です。これは2030年に向けて、「世界全体として掲げる課題」を示したものです。内容は例えば貧困や飢餓、健康、ジェンダーなど全部で17の目標と、具体的な169のターゲットによって構成されています。
「2030年」という近い将来に向けて、日本だけではなく世界中が今見えている大きな問題の解決にあたっている、ということです。

こうした世界的な動きに伴って投資家の動きも大きく変化を見せており、近年ではESGやSRIに対する投資活動が活発化しています。つまり、「社会や環境問題とビジネスを結び付け、積極的に取り組んでいる企業」の価値が高まっているというのが、世界の潮流なのです。

 

2040年問題について

ここまで2030年問題にまつわるトピックの概要を見てきました。ではさらにその10年先、2040年はどうなるのでしょうか。

推計値では、2040年の日本の総人口は1億1092万人。65歳以上の高齢者は3920万人を突破する見込みです。高齢者数自体はさほど増加しない代わりに、どんどん若年層の割合が減っていくような状況です。

「2040年問題」とも言われますが、基本的に課題となる内容は2030年問題と変わりありません。高齢者の割合が増加し労働人口が減少する中で、我々は医療崩壊や経済衰退の懸念と向き合い続けなければなりません。各企業も、2040年を見据えながら自社のサービスの開発、人材の育成に取り組んでいくことになります。

 

まとめ

「VUCAの時代※」とも言われるように、現代の社会情勢は先行きが不透明で、これまではスタンダードだとされていた常識があっけなく崩れ去る可能性もあります。実際、新型コロナウイルス感染症によって、人々はニューノーマル(新しい生活様式)時代を迎えました。

一方で、このままでは必ず訪れるだろうと推測できることもあります。それが人口の変化であり、医療・介護、社会保障費、経済などを巡る問題です。人々が2025年、2030年、そして2040年問題にどう向き合っていくべきなのか、本記事が考えるきっかけとなれば幸いです。

※Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取って作られた言葉

 

※本記事の内容は筆者個人の知識と経験に基づくものであり、運営元の意見を代表するものではありません。

 

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SCIENCE SHIFT編集部

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