学び続けるための技術、4つの最重要ポイントとは
人間が生き続けるということは、すなわち学び続けること。そう考えるならば、少しでも楽に、効率的に学びたい。そして、そのための技術を人生の早いうちに身につけたいと思いませんか? 「学びの達人」であるスポーツ選手を数多く分析してきた児玉光雄さんによる連載2回目は、学び続けるために重要なポイントについて紹介してもらいます。
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今回は「学び続けるために身につけたい技術」についてお話しします。 あなたにとって学ぶ時間は限られているはずです。そのためには、その限られた勉強時間において、集中力を高めて、いかに効率よく学習するかが求められます。このことに関して、もっとも重要な4つのポイントについてお話ししましょう。
「初頭効果」と「終末効果」を使い、効果的に学習する
まず最初の技術は、「初頭効果」と「終末効果」という心理学の法則にのっとった勉強法を取り入れること。この心理法則は、「何事をするにも、最初と最後に集中レベルが高まる」というもの。言い換えれば、それ以外の時間は中だるみの時間であり、そこでは勉強の効率がどうしても低下するのです。これは誰もが経験のあることではないでしょうか。
実は、人間の集中していられる時間はせいぜい1時間であることが判明しています。小・中学校の授業が大抵50分であるのはそのためです。例えば、あなたが週末に3時間英語の勉強をすると決意したとき、3時間ぶっ続けで勉強するのではなく、50分勉強したら必ず10分のブレイクタイムを入れましょう。そして、それぞれの50分の勉強時間のうち、最初の15分間に難易度の高い箇所や、まったく学習していなかった新しい学習をする時間に充てて、最後の15分間はその日勉強した内容を復習することに努めましょう。
ブレイクタイムではお茶を飲んだり、机から離れて軽いストレッチをして気分転換しましょう。ただし、気分転換しようと思ってブレイクタイムにゲームに興じたりすると、かえって逆効果になりかねませんから慎みましょう。リフレッシュできるブレイクタイムを1時間ごとに設定して、初頭効果と終末効果を活用した勉強法を取り入れることにより、勉強の効率化が劇的に改善されるのです。
すきま時間を徹底して活用する
2つ目の技術は、すきま時間を活用すること。すきま時間をばかにしてはいけません。日常生活の中にはすきま時間がたくさん存在します。そんな細切れの時間を活用してこまめに勉強時間を確保しましょう。もしもあなたが英単語を記憶するなら、5分間のスーパーのレジの待ち時間を活用して10個の単語を記憶することに努めましょう。5分間で10個の英単語を記憶することはそれほど難しくないことに気づくでしょう。
通勤電車での行き帰り、スーパーや銀行のATMでの待ち時間、あるいは人との待ち合わせ時間といったすきま時間をかき集めると、簡単に毎日1時間の勉強時間を確保できることにあなたは気づくはずです。
すきま時間には中だるみの時間が存在しません。つまり、連続した1時間よりも、すきま時間をかき集めた1時間のほうが、集中力も高まって効率よく勉強できるのです。そのためにも、バッグに参考書や本を入れて持ち歩きましょう。たとえ1分間のすきま時間でも、その時間をうまく活用して参考書や本に目を通す。そういう習慣を身につけてください。すきま時間を徹底して活用できる人間だけが、勉強の達人の仲間入りができるのです。
「分散学習」をする
そして、3つ目の技術は、学習を持続させるというルールです。同じ時間学習しても、その密度によってその効果はまったく違ったものになります。一般的に、集中して一挙に学習する形態を「集中学習」、ある程度時間を分散させてコツコツ学習する形態を「分散学習」と呼んでいます。 このことに関して、単語学習に関するある実験がおこなわれています。
二つのグループに分けて被験者に単語の組合せを記憶させました。もちろん、総学習時間は同じです。まず、Aグループには、テスト前日に一気に詰め込みの学習をしてもらいました。そして、Bグループには、テスト前二日間に分散して学習してもらいました。
結果はどうだったでしょう。二つのグループのテストの成績はほぼ同じでした。しかし、翌日に再テストをしたところ、明らかに「分散学習」をしたBグループのほうが成績が良かったのです。このことから判明したのは、「詰め込み学習は忘れやすい」という事実でした。
つまり結論はこうです。一夜漬けに代表されるような「集中学習」は、一気に記憶する反動として一気に忘れてしまうのです。このことから推測されるのは、集中学習は短期記憶としては記憶されるけれども、長期記憶に移行しにくいという事実です。
この実験から、結局毎日コツコツ勉強するほうが、明らかに効率的に脳裏に記憶されることが判明したのです。特に長期的な勉強を強いられる受験勉強や弁護士や公認会計士に代表される資格試験には、明らかに「分散学習」のほうが有効なのです。
人間の脳にとって最適なのは「画像学習」
そして4つ目の技術は、脳にとって得意とする画像学習を取り入れること。もともと、文字で学習するよりも画像で学習するほうが、脳という臓器にとっては自然な行為なのです。これは当たり前のことなのですが、文字を使いこなせるのはいまだに人間だけ。
しかも、その歴史はせいぜい数千年という脳が直近に身につけた新しい能力です。 いっぽう、人間に限らず多くの動物は、視覚で獲物を認識してそれを捕獲する能力をもっています。
例えば、鷲や鷹などの猛禽類など、この能力にかけて人間よりも優れている動物は枚挙に暇がありません。 しかも、私たちは文字をそのまま認識して物事を理解するのではなく、脳内でその文字を意味する画像に変換してからその言葉の持つ意味を理解しているのです。
このように、文字よりも画像で理解するほうが脳の機能として自然であり、かつ効率的なのです。
ウィスコンシン大学の調査でも、子どもたちが語彙を学ぶ時に、言葉に映像を組み合わせると2倍記憶の保持率が高まったという報告があります。例えば、「犬の画像を脳裏に描きながら「Dog」という英単語を記憶すれば、明らかにその記憶は定着しやすくなるのです。
もちろん試験で解答するのは画像ではなく文字なのですが、記憶する際、主役はあくまでも画像であり、言葉は脇役にすぎないということをしっかりと肝に銘じてください。これこそ脳科学的に即した学習法なのです。
以上、今回は学ぶ際に留意すべき4つの技術についてお話ししました。
(1)「初頭効果」と「終末効果」を使い、効果的に学習する
(2)すきま時間を徹底して活用する
(3)粘り強く「分散学習」をする
(4)人間の脳にとって最適なのは「画像学習」
これらの技術を日常生活の中に取り込むことで、あなたも学ぶ達人の仲間入りをしてみてください。次回は、学生の皆さんにお伝えしたい、社会に出る前にやっておくべき才能の磨き方についてのお話をしたいと思います。
※本記事の内容は筆者個人の知識と経験に基づくものであり、運営元の意見を代表するものではありません。
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