「質問の仕方」で、自分のアタマで考えているかどうか分かる〜考えるプロによるアタマの使い方・応用編①

常に「自分のアタマで考え、行動していきたい」という人に向けて、そのためのコツをまとめたeBook『考えるプロによる、アタマの使い方・いちばんたいせつなトコロ』はもうご覧いただけましたか?

今回はeBookの応用編として、考える力をつける方法について、引き続き細谷功氏に語っていただきました。日々しっかりと「自分のアタマで考える」ことができているかどうかチェックしたい方にも、ぜひ。ここでは、「質問をする」という行為を例にあげて「自分のアタマで考える」方法を解説します。

「考える力」を養うためということで、eBookの中で「知識教と正解病からの脱却」についてお話しましたが、実際に「正解病」がどんな場面で出てくるのか具体的に考えてみましょう。その一つが、これもeBookで紹介した「アドバイス」ではなく「意見」を聞く姿勢を持つことです。

学生の皆さんは就職活動で先輩の話を聞く際やこれから社会に出て上司や先輩の話を聞くときに「アドバイス」ではなく「意見」を聞くのが「自分で考える」ための第一歩であると述べました。ここでいう「アドバイス」と「意見」という言葉の定義とともに簡単におさらいしておくと、「アドバイス」というのは「あなたはこうした方が良いですよ」という相手の行動にまで踏み込んだ具体的な発言で、「意見」というのは「自分はこう思いますよ」という個人の見解を述べたもので「相手はどうすべきか」は含んでいないものです。

「自分の頭で考える」というのは、「意見」は聞いた上でそこから自分がどうするかは自ら考えて具体化するというものでした。ここで解説するのは、そのような違いがビジネスなどの場面での「質問の仕方」に現れるということです。

 

「自分のアタマで考えていない」人の典型的な質問

「自分のアタマで考えていない」人の典型的な質問
質問の仕方や表現方法を観察しているとその人が「考えている人」か「考えていない人」かを簡単に見抜くことができます。例えば皆さんは就活時代に以下のような質問をしたことがないでしょうか?

  • 「学生時代にはどんな本を読めば良いですか?」
  • 「どの会社がお勧めですか?」

これらが典型的な「アドバイスを求める」タイプの質問です。これらの質問の背景には、誰にもあてはまる本や会社という「正解」があるという前提があり、「正解を教えてください」という姿勢が根底にあるのです。

このような質問の仕方をする人はほぼ間違いなく「自分の頭で考える姿勢がない人」と言って良いと思います。どんな本(や映画)が面白いかなんて、「個人の判断基準によって変わる」に決まっているのです。またどの会社が良いかも当然、「人によって異なる」に決まっています。ところが「正解病」に毒された人はとにかく「正解を教えてください」となるわけです。

では「自分で考える人」はどのように質問するのでしょうか?例えば先の2つの質問を「意見を聞く」型の質問に置き換えるとしたらどのように尋ねたら良いか、考えてみてください。例えば以下のような聞き方でしょうか。

  • 「◯◯さんが学生時代に読んで良かったと思う本は何ですか?またそれはどんなところが良かったですか?」
  • 「△△さんがいま転職するとしたらどの会社を選びますか?またその理由は何ですか?」

こちらの方がより「意見を聞く」という聞き方になるのではないでしょうか。

 

自分のアタマで考える練習をしよう

自分のアタマで考える練習をしよう
少し練習問題をやってみましょう。次の「アドバイスをください」型の質問を「意見をください」型の質問にするとしたらどのように表現を変えますか?

  • 「仮想通貨は買っておいた方が良いですか?」
  • 「将来どの資格が役に立ちますか?」
  • 「何歳ぐらいで結婚するのが良いですか?」

このような質問をする場面は日常的に発生するものではないかと思いますので、日頃から意識してみてください。

以上で、「アドバイスはもらわずに意見をもらうようにしよう」という本稿の意図が理解できたのではないかと思います。日常生活において、このような2通りのどちらの人が多いか、いますぐにでも周りの人の人間観察に使ってみると面白いと思います。人によって、あるいは場面によってはっきりと判別が可能なはずです。

このような人間観察は「アドバイス(意見)される側」だけでなく「アドバイス(意見)する側」にも適用できますから、今後先輩(社員)や上司と話をするときにも観察してみてください。実は上の世代の方がこのような思考停止型の人が多いことにも気づくことができると思います。

やたらに「アドバイスしたがる人」は思考停止型ですから、その人の言うことが常に正解であると思って「そのまま」行動すると長い目で見ると痛い目に遭うことになります。

逆に言うと、自分が「正解型」の思考回路の場合、「意見を述べる」型の先輩は少し頼りなく見えるかも知れません。「オレ(私)はこう思うよ」だけ言われても「では私はどうすれば良いんでしょうか?」と思ったら、そこがまさに思考回路の起動しどころと考えましょう。そこで「自分はどうすべきか?」と考えることが格好の思考力のトレーニングになるからです。

では「アドバイス型」の先輩からのアドバイスにはどのように対処すれば良いのでしょうか?せっかくしてくれるアドバイスを(ある意味で「大きなお世話」なわけですが)むげに「私は私で考えますから」などと言って聞く耳を持たなければ、人間関係が壊れるだけでなく、貴重な成長の機会を失ってしまいます。

「アドバイス」されたときには、それを「文字通り」受け取る(What型思考)のではなく、その人の言っている「背景や理由」(Why)をくみ取った上で自分なりのアクションに「翻訳する」ことが重要なのです(Why型思考)。ここでいう「翻訳」というのが「自ら考える」ことを意味しています。

 

Why 型思考になる

「1年間に100冊は本を読め」と言われたら、単に「100冊読む」ことを目的にするのではなく、「なぜ?」多くの本を読む必要があるのかを考えて(例えば仕事の領域以外の知識の方が先の読めない時代には役に立つとか)、それならさらに「年に一度は未知の国を訪問してみよう」といったような自分なりのアクションを追加してみることが、真の意図をくみ取る「Why型思考」で重要なことです。

皆さんはぜひこのようなことを頭に入れて、何気ない質問をする時の「2通りの聞き方」を常に意識してみれば、これまでとは違った世界が見えてくるのではないかと思います。常に「自分ならどうするか?」を考えること、そのためにはアドバイスを求めず、意見(とその理由)を聞いてから、それを自分なりにかみ砕くことが思考の習慣をつけていくことになるでしょう。

さて、ここまで読んだ皆さんはこの記事そのものを「『意見』であって『アドバイス』ではない」という認識で受け取ってもらえたでしょうか?

まずはこの記事そのものを「練習問題」として、自分なりのアクションを自分の頭で考えてみて下さい。

 

★この記事の基礎編として「考える力」の基本をまとめたeBook、『考えるプロによる、アタマの使い方・いちばんたいせつなトコロ』をまだダウンロードしていない方はこちら

 

※本記事の内容は筆者個人の知識と経験に基づくものであり、運営元の意見を代表するものではありません。

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