完璧な正解よりも「仮説思考」ができる人こそ、アタマを使っている〜考えるプロによるアタマの使い方・応用編②

常に「自分のアタマで考え、行動していきたい」という人に向けて、そのためのコツをまとめたeBook『考えるプロによる、アタマの使い方・いちばんたいせつなトコロ』はもうご覧いただけましたか?

今回はeBookの応用編として、考える力をつける方法について、引き続き細谷功氏に語っていただきました。日々しっかりと「自分のアタマで考える」ことができているかどうかチェックしたい方にも、ぜひ。ここでは「仮説思考」の実践方法を解説します。

eBookの中で「地頭力」の構成要素について述べましたが、その一つである、「仮説思考」を日々実践する方法について解説します。また、仮説思考の有無の習慣がどのような口癖に現れるか、という側面も紹介します。

「仮説思考」とは何か

「仮説思考」とは何か
皆さんが会社や組織に入って仕事を始めたばかりのときは「わからないことだらけ」のことが多いのではないかと思います。突然「◯◯の会議を開催して」とか「☓☓の報告書を書いて」と言われた場合、自分がその分野に経験や知識がないことだらけのところからのスタートになるはずです。そのような場面ではどのように対応すれば良いでしょうか?

もちろん「まずは情報収集から」ということで、周りの人にどうすればいいか聞きまくったり、ネットで検索したりといったことを始めるのも一つの手です。ところがここにも「正解病」のわなが潜んでいます。

学生時代の学問の世界とビジネスの世界での決定的な違いの一つが、スピードと正確性に対しての感度です。学問の世界では「正解がある」場合が多く、時間をどんなにかけてでも正しさを追求する、つまり「100点を取りに行く」場面も多かったと思います。

ところが「正解がない」ビジネスの場面では、しょせんどれほどのデータを集めようが最終的に「絶対に正しい」という確信が持てる場面のほうが少ないため、たとえ「65点」でもスピードを重視しその時点での最善の結論を出して先に進むことを求められることの方が多いと言えます。

このように、「その時点における時間と情報で求めうる最善の結論」を仮説といい、常に仮説を持った状態で仕事に取り組む考え方を仮説思考といいます。

特に学生時代に試験で優秀な成績を取ることができた優等生だった人ほど陥りやすいわなが「正解病」であり、「完璧主義」です。常に十分な情報を集めて完全に自信が持てる状態になってからアウトプットするという考え方で、ある程度やり方や結論が確立された世界においては高い品質につながるという点で長所になるのですが、完成度は低くてもまずはスピーディーに結論を出すことが求められるビジネスの現場ではむしろマイナスに働くために、注意が必要です。

完璧主義と正解病は表裏一体で、正解が存在すると信じている人ほど陥りやすいのです。

完璧主義を捨て、仮説思考を身につけるべき理由

新卒の皆さんがまずこのような仮説を持って話をする必要性に迫られると想定されるのが、上司への報告・連絡・相談、いわゆる「ほうれんそう」の場面においてです。
例えば2週間という期間の納期で頼まれた仕事に対して、ちょうど中間の1週間後に上司から「あの件、どうなった?」と言われて「まだ十分な自信が持てない」と理由で「少し待ってください」と言ってしまうのが、完璧主義の人の行動パターンです。

その結果どうなるかと言えば、さらに2日たっても「もう少し」、また数日たっても「もう少し…」となり、納期の前日に業を煮やした上司から「とにかく現状を見せろ」と言われて渋々見せた結果が上司の期待値とは大きくかけ離れたもので、もう挽回ができず、手遅れになってしまうという状況が発生します。

なぜこうなるかと言えば、最初から「正解でなければ出しても意味がない」と思っている完璧主義の考え方が災いしているのです。そもそも正解なんかないと考える人はたとえ10点でも20点でもその場であるもの(つまり仮説)を早い段階で上司に見せながらすり合わせをしつつ作業を進めるので、少なくとも納期寸前に大きな認識のズレが発生することは決してありません。

要はスピード>正確性でなるべく早く仮説を持って作業を確認しながら進めることが、正確性>スピードで最後まで答えが出ないという進め方よりも効率的に作業を進められ、ビジネスにおいては圧倒的に有利な場面が多いということです。

仮説思考を身につける方法──まずは「口ぐせ」の矯正を

仮説思考を身につける方法──まずは「口ぐせ」の矯正を
「そうはいっても」完璧主義の人が曲がりなりにも「65点」(場合によっては10点や20点)で結論を出してみるというのは、いうほど簡単なことではありません。心の奥にまで染み付いてしまった完璧主義からくる「良心の呵責(かしゃく)」からまだ完成していない生煮えのものを出すことへの心理的抵抗から抜け出すのは容易ではないからです。

そこでお勧めしたいのが、「まず形から入る」ということで、以下のような口癖の矯正です。まずは以下の言葉を決して口にしないようにしてみてください。

  • 「情報がない/足りない(からできない)」
  • 「時間がない/足りない(からできない)」
  • 「予算がない/足りない(からできない)」
  • 「人がいない/足りない(からできない)」

これらは典型的な思考停止、仮説を放棄した表現です。

ではこう言いたくなった場合どうすれば良いでしょうか?
それは、

  • 「いまある情報でできることは・・・」
  • 「いまある時間でできることは・・・」
  • 「いまある予算でできることは・・・」
  • 「いまいる人員でできることは・・・」

という表現に変更するのです。
ここでのポイントは「・・・」の後に来ることに対しての自分の中での「合格点」を下げて、「何も言わないよりは10点でも20点でも言ったほうがまし」と発想を切り替えることです。

「情報がないからできない」と言っている人は、実は集めたら集めたで「もっと欲しくなる」ことがほとんどです。
足りないのは情報(時間・予算・人員)ではなく仮説を構築する力であると認識を変えた時点で大きく行動パターンが変わります。

皆さんもぜひ仮説思考を応用して、学生脳からビジネス脳への思考回路の転換をなるべく早い段階で行ってみてください。

 

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※本記事の内容は筆者個人の知識と経験に基づくものであり、運営元の意見を代表するものではありません。

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