心がしんどいとき、自分を整える〜人生と就活と仕事に役立つ「自己肯定感」の技術〜

ここ数年、書店の棚には「自己肯定感」をテーマにした書籍が多く並び、小さなブームになっています。

自分の弱さや欠点を含めて、あるがままでいいという感覚。
これでいいのだと受け入れる感覚。
自分が自分であって大丈夫と感じる感覚。

自己肯定感にはさまざまな定義がありますが、人間が生きていく上で欠かせない感覚であることは間違いありません。しかし、学生時代に自己肯定感について学ぶ学生はわずかです。
そこで今回は、「自己肯定感の教科書」を出版し、心理カウンセラーとして1万5000名を超えるクライアントにカウンセリングを行ってきた中島輝さんに、「心がしんどいとき、自分を整える。人生と就活と仕事に役立つ「自己肯定感」の技術」をテーマに自己肯定感について解説してもらいました。

取材協力:

中島輝さん

5歳で里親の夜逃げという喪失体験をし、9歳ごろから、HSP、双極性障害、パニック障害、統合失調症、強迫性障害、不安神経症などに苦しむ。10年間実家に引きこもりつつ、代表取締役としてグループ会社を運営。独学で学んだセラピー・カウンセリング・コーチングを実践し続ける。
「恩師の死」がきっかけとなり35歳で引きこもりを克服。会社員や学生からJリーガーなどのスポーツ選手、上場企業経営者など15,000名を超えるクライアントにカウンセリングを行い、回復率95%、6ヵ月800人以上の予約待ちに。「奇跡の心理カウンセラー」と呼ばれ上場企業の研修オファーも殺到。現在は資格認定団体「トリエ」(旧国際コミュニティセラピスト協会、他5団体)を主催し120以上のオリジナル講座を開発。新しい生き方を探求する「輝塾」、好きを仕事にする起業塾「The・DIAMOND」を主催し、週末の講座は毎回即満席となっている。

※HSP:Highly sensitive personの略。人一倍繊細で人の気持ちや光・音・香りなどの刺激に敏感な人たちを表す概念のこと。

中島さん自身、5歳で里親の夜逃げという喪失体験をし、9歳ごろから、HSP、双極性障害、パニック障害、統合失調症、強迫性障害、不安神経症などに苦しんできた経験の持ち主です。しかも、25歳で実家の商いの借金を背負い込んだことからパニック障害と過呼吸の発作が悪化。その後、10年にわたって家業の経営を担いつつも、プライベートの時間はほとんど自宅にこもる引きこもり生活を送っていたそうです。
当時を思い返すと「まさに自己肯定感が超低空飛行を続けている状態だった」と言います。

自分の考えに自信が持てない。何をしてもうまくいく気がしない。不安が膨らみ、行動に移ることができない。人のことが信じられないにもかかわらず、自分で自分に「イエス」と言うこともできない。

できないばかり積み重なるなかで、中島さんは心理学や心理療法を独学し、自己肯定感を研究。自らさまざまな手法を実践することを繰り返しながら、35歳のときに引きこもり状態を克服しました。

 

心の揺れを自ら回復させる鍵となるのが、自己肯定感

引きこもり状態を克服してから私は心理カウンセラーとして活動をはじめ、現在まで1万5000名を超えるクライアントの方々に心理カウンセリングを行い、95%の方が回復を実感されており、その過程で実感していることがあります。
それは、クライアントが抱えている悩み自体を解決しようとしなくとも、本人の自己肯定感を高めるだけで人生の重しとなっていた悩みそのものがなくなってしまうという現象です。

病に対する自己回復力があるように、心の揺れに対しても私たちは自ら回復する力を持っています。その鍵となるのが、自己肯定感です。

自己肯定感とうまく付き合う術を身につければ、あなたの人生は大きく変わります。低くなっているときは自ら高められるように、高い状態のときはそれをキープできるように。すると、人生の軸が安定し、幸せな毎日を過ごせるようになります。
もしあなたが今、自己肯定感の低い状態にあったとしても、大丈夫です。その経験があるから人にやさしくなれます。おごらない心を持つことができます。そして、自己肯定感が自然と高まっていく方法はいくつもあります。

 

「一喜一憂しなさんな」と自分に声をかけ、客観的な視点を取り戻す

たとえば、日頃から感情を大きく上下動させないように心がけること。
うれしいことがあって大いに喜ぶのもいいです。つらいことがあって、ずんと落ち込むのもいいです。でも、喜びすぎたり、落ち込みすぎたりを繰り返していると心が疲れてしまいます。
大きく感情を上下動させて、そのギャップで消耗しないために「一喜一憂しなさんな」と。そう自分に言葉をかけて、いつもフラットな状態でいられるようにしましょう。

就職活動に挑んでいる学生の皆さんは、多くの初めての体験に出くわし、感情が大きく揺れる場面が増えていくはずです。これは社会に出て1年目、2年目の新社会人の皆さんにも共通することでしょう。
そんな状況だからこそ、「一喜一憂しなさんな」です。

これは「なぜ、自分がこう感じているのか」を客観視するためのキーワード。心理学の世界では、客観的に自分を見る視点を「自己認知」と呼びます。
なぜ、自己認知が大切なのかと言うと、私たちの感情はマイナスの状態から一気にプラスに転じることがないからです。必ず一度、フラットな状態になってからプラスないし、マイナスに転じていきます。

自己認知がうまくできていると、調子がいいときは「今は自己肯定感が高い状態だから、小さな失敗があってもすぐに切り替えられるのだな」と客観視することができます。
逆に、調子が悪いときは「些細な問題が大事のように感じて仕方ないのは、自己肯定感が落ちているからだな」とわかります。
つまり、「今、自分の自己肯定感はどういう状態にあるのか」を意識することで、どんな環境下でも自分をフラットな状態に戻すことができるのです。

 

「誰それに比べて……」という比較で幸せになることはありません

また、自己肯定感は他人との比較で高まるものではありません。
偏差値で例えるなら、偏差値55だった私が努力し、56、57、58と少しでも上昇したとき、結果を出した自分を認めていくことで自然と高まるのです。
ところが、友達のAくんは偏差値65だと知ったとしましょう。そこで、Aくんと自分を比較し始めると「自分がこれだけがんばったのにAくんに負けているなんて勉強ができない」と考え、自己肯定感が下がってしまうのです。

身近にいる人をライバルとして定め、ライバル心を持って競い合うことで力を伸ばすというのは、勉強や仕事で成果を出すために有効な方法ではあります。しかし、それが正しく機能するのは自己肯定感が高まっているときのこと。
偏差値のたとえ話に戻るなら、「偏差値55だった私が勉強して、56、57、58と積み上げてきた。よくやった。これからまたがんばろう」と自分自身を認めることが重要です。
そのステップを踏まず、「でも、Aくんは65だから」と比較してしまうと自己否定が始まってしまいます。自分で自分のことを前向きに評価できないと人は周囲から認められたいという承認欲求が強くなります。

 

強すぎる承認欲求は、就活にも悪影響を与えることに

承認欲求は誰もが持っている欲求ですが、自己肯定感の低い状態で欠乏感から「認めて、認めて」となると、行動が依存的になってしまうのです。自分で自分を認められないから心が満たされず、欠乏感から他者からの評価を求めてしまいます。
勉強に置き換えると、教師や親の求めに応じてがんばる状態。就活に置き換えるなら、本命ではない企業から「あなたのがんばりが必要だ」と言われ、親から「安定した会社でいいじゃない」と促され、就職先を決めてしまうような状態です。

仮にこの状態で学校の成績が上がったり、社会人としてのスタートを切ったりしたとしても、「自分で自分を認めていない」ので充足感は得られません。むしろ、「次は何をしたらいいのだろう?」とまた周囲に指示を仰ぎ、そんな自分に無力感を覚えて、自己肯定感をさらに低くすることになってしまうのです。
行動の動機が「やりたい」ではなく、「承認欲求を満たすため」になったままでは、いつまでもやらされ感から脱することができず、結果を出しても自己肯定感が低下する負のスパイラルに陥ってしまいます。
重要なのは、「他人との比較で自分を評価しないこと」です。

私自身、企業の経営者として採用面接をする側になることがあります。
そのとき、「この人と一緒に働いてみたいな」と思うのは、素直な人です。

面接室に不安そうに入ってくる人。
緊張して受け答えがギクシャクしている人。
疑問に思ったことをそのまま言葉にして聞いてくる人。

素直な自分をそのまま出せる人は、強いなと思います。就活に向けて最低限の準備はした方がいいでしょう。しかし、人柄を演じることはできません。考えても仕方のないことは「ま、いいか」と、手放すことです。

eBookでは自己肯定感をキーワードに、就職活動中にぶつかりやすい悩みについてQ&A形式で答えていきます。合わせて、心がしんどい状態を切り抜けるためのさまざまな心理的テクニックを解説していきますので、ご一読ください。

※本記事は取材により得た情報を基に構成・執筆されたものであり、運営元の意見を代表するものではありません。

シェアする

関連記事

Search