未来を考える

2020/10/06

変化が激しく、正解のない時代。そういわれる近年ですが、withコロナの今後、その傾向はより加速するとも考えられます。この“大変な時代”に就職活動や就職をする人は、どんな戦略をもって臨むのが賢明なのでしょう?

そこで人材開発のエキスパートであるリクルートマネジメントソリューションズ研究員・小松苑子さんに、いま就活生や新入社員が企業に何を求められているのかと、それに応える方法を聞きました。

そのキーワードとして真っ先に挙がったのが、「自律」でした。

 

取材協力:
リクルートマネジメントソリューションズ ソリューション統括部
HRD事業開発部 研究員
小松 苑子さん

人材派遣会社にて営業職を経験後、新人・若手社員の教育体系の構築、研修の企画・運営、ナレッジマネジメントを行う。2017年にリクルートマネジメントソリューションズに入社し、主に営業職、新人・若手社員領域のトレーニングの企画・開発に携わる。

 

VUCAを乗り越えるには、自律型人材が不可欠

 
──まず、小松さんが所属するリクルートマネジメントソリューションズがどんな会社かを、簡単にご紹介ください。

小松:リクルートのグループ会社で、企業の人材採用・育成、組織開発に関するサービスを提供しています。新入社員や若手社員向けの研修プログラムも手掛けていて、最近はeラーニングをはじめオンラインでの研修にも力を入れています。また、就活生のみなさまにはおなじみのSPI3を提供している会社でもあります。

 
──変化の激しいこの時代に就活や就職をする人は、どんな戦略をもって臨むのが賢明でしょう?

小松:最近クライアント企業さまや、弊社の営業担当からよく聞かれるのが、「自律」というキーワードです。よく自律型人材といった形で使われる言葉ですね。ただ、いま企業が求めているのは、仕事を自律的にできるというレベルだけではなく、自分の能力を自ら開発していくことも強く感じます。

自分から能動的に動いて、動いた結果を振り返り、それを次のサイクルに活かす。そうやって経験学習のサイクルを自分で回すことができ、自分自身でキャリアをデザインしていける人。いま多くの企業で求められているのが、そうした人材なのです。

 
──企業がそうした自律型人材を求めるのはなぜですか。

小松:近年のビジネス環境はVUCA/ブーカ(※)であるといわれて久しいですが、その傾向は今後一層増していくでしょう。そこに今年はコロナ禍により、ますます先が見えない状況となっています。そんな激動の時代を、企業がなんとか乗り切っていくには、どんな状況であっても自分で考えて何かを生み出していける人材が不可欠である。そんな危機感を多くの企業が抱いていることが、大きな要因ではないでしょうか。

※ Volatility=変動性、Uncertainty=不確実性、Complexity=複雑性、Ambiguity=曖昧性の略で、取り巻く環境が複雑性を増し、将来の予測が困難な状態を指す

 

若者世代の多くは、自発行動が苦手…

小松:また、「チャレンジできる人」というのも、企業さまから近年よく挙がる人材像です。受動的ではなく能動的に動いて挑戦できる人というのが会社の人材開発ポリシーに入っていて、そういった人材を積極的に採用し、育てたいという意欲を持つ企業が多く見受けられます。

 
──「自律型人材」も「チャレンジできる人」も、自分から動いていくという点で、根っこは共通している気がします。対して前記事で紹介した通り、今の若者は「自発」や「試行」が苦手という現状があります。そのギャップはどう埋めればいいでしょう?

小松:就活生や新入社員の方々にぜひ採り入れていただきたいのが、小さな「Try&Learn」を意識的に回すことです。要は、どんな小さなことでもいいので、「経験学習」を習慣づけましょうということです。

Try&Learnという行為を深堀りすると、以下の3つの工程に分けられます。

まずは対象となるものごとを注視する「Focus」です。ここでは、自分の基準から脱却し、相手の期待は一体何なのかを思い込まずに尋ねたり、最終的な目的は何なのかをふまえたりすることがポイントになります。続いては、これだと思うことを実際にやってみる「Action」です。不安や葛藤を乗り越え実際に行動することは、自発や試行を実現する上で何より重要になります。そして3つめが、うまくいってもいかなくても、その経験から学びを得て次に活かす「Reflection」です。

この3つからなるサイクルを常に回すことで、小さな経験も大きな経験も、そこから学んだことが蓄積され、「自分のやり方にはこんな特徴があるのか」と自己理解につながったり、「次はこうしてみよう」と自身を成長させることにつながったりします。そしてそれは、自己肯定感や自己効力感、経験値・持論として積み重なっていきます。

 

小さな「Try&Learn」を習慣化する

小松:たとえば、Reflectionの部分でいうと、それまでは文章を書くのが苦手だと思っていたのが、今日は2時間も続けて書けた。それを自分の中での大きな変化ととらえ、「意外とできるんだな」と肯定し、「なんで続けて書けたのだろう?『ここまでやろう』と最初に目標を決めていたからかな…」と、成功の要因を振り返ります。そうすると、次に何かチャレンジする時に、「前にも同じレベルのことをやってみて、成功したよな」と、また踏み出すことができる。そんなふうに、難しいことに一足跳びで挑戦するのではなく、小さな踏み台を積み重ねながら次々と無理なくトライしていくイメージです。

本当に小さなことでいいので、こうしたTry&Learnのサイクルを、ぜひ習慣化していただきたいです。寝る前に、その日の出来事・経験をReflectionするのもいいかもしれません。

 
──他に、いまの就活生や新入社員に有効な戦略は何かありますか?

小松:もう1つぜひお伝えしたいのが、何ごとも「決めつけない」ということです。

今は便利な自己分析ツールもいろいろあって、自分のことをよくわかっている方や、自分の特徴をすらすらとプレゼンできる方が多いです。とはいえ、あまり「自分はこうなんだ」と決めつけてしまうと、かえって柔軟な発想がしにくくなります。また、自分の可能性や成長課題を見逃すことにも繋がりかねません。だから、便利なツールを使うことは否定しませんが、あまりそこにとらわれないでもらいたいのです。

それは社会人になってからも同じことがいえます。人間はいくつになっても成長し、変化するものです。だから、「私はこうなんです」「それは自分には向いていません」と頭ごなしにシャットアウトするのは、もったいないことでもあるのです。そこはぜひ「本当に自分はそうなのかな……まあ、ちょっとやってみようか」くらいのライトな感覚で、体験することに重きを置いて行動を起こしてもらえたらと思います。

 

決めつけずに、自分に問いを立てる

小松:決めつけないというのは、就活生の会社選びや業種・職種選びにも当てはまります。

たとえば就活業界では数年前から大手企業に入れば安心という概念が崩れてきていますが、今年は新型コロナの影響で、なるべく安定した企業にいきたいという志向がまた高まっているようです。でも安定といっても、人によって求める“安定さ”は大きく違います。自分はどんな“安定”を求めているのか?年収?事業の存続?そもそも、本当に“安定”を求めているのか。自分がやりたいことは、本当にその業界でないとできないのか。こちらの職種や業種は、自分には関係ないと思っていたけれど、本当にそうなのだろうか…。

今や“業界”といっても、VUCAの時代においては既成概念に囚われず変化に対応し、他業種に進出したり、他業種と手を組んで新事業を創造したりして可能性を拓いていくことは企業の重要テーマです。あまり業界や職種を決めつけず、“ダウトな”(=疑う)視点を持ち、自分に問うて、自分の本当の声を探しに行く感覚で、会社を見ていただければなと思います。

 
──では、そうした戦略をふまえたうえで、身につけておくべきスキルやテクニックはありますか。

小松:「決めつけない」というのは、人とのコミュニケーションにおいても同じことがいえます。社会に出ると異世代の人ともコミュニケーションをとることになり、意思疎通がうまく図れないケースも出てきます。そんな時に、「この人、何を言っているかわからない…」とすぐにシャッターを下ろすのではなく、ぜひ一度相手の意図を知る努力をしていただければと思います。たとえば「すみません、●●というのは、どういう意味でしょうか?」と聞き直す、などですね。

そうすることで相手の意外な意図がつかめるかもしれないし、「この世代の人は、そんなふうに考えるものなのか」と、世代全体の理解にも繋がります。また、相手に「こちらの意図を理解しようとしてくれている」と思われて、信頼につながることも。「意図を知る」、その一手間を惜しまずに行っていただきたいです。

 

オンラインだからこそビジネスマナーを意識

 
──オンラインでのコミュニケーションに関してはいかがでしょう?

小松:オンラインのミーティングや研修の場合、オフィスに出社するわけではないので、自宅の延長ではないですが少しカジュアルな立ち居振る舞いになりがちです。実際にそういった声を、よく新人と対面する人事担当の方から聞きますし、私自身もそう感じることがあります。

だからこそオンラインであっても初めにきちんと挨拶したり、会議の休憩・退出時に一礼したりするといったビジネスマナーが重要になってくるのかなと思います。受け手によって基準が変わってくるので、念のため丁寧にやっておくと安心です。

もう1つ意識していただきたいのが、リアクションです。オフラインであれば、相手の話をきちんと聞いていることは、合いの手の声や前傾姿勢などですぐ伝わります。でも平面的なモニタに顔だけが映るオンラインだと、それがなかなか伝わりません。それをふまえてオンラインでは表情やうなずき、相槌などにより、意識的にそれを伝えるようにしたいところです。

今後、オンラインのやりとりが増えることは充分考えられても、なくなることはまず考えられません。ビジネスはもちろん就職活動に際しても、オンライン上でどう振る舞うかの重要性が増していくのではないでしょうか。

 
──最後に、2020年代の就活生や新入社員に向け、メッセージをください。

小松:「経験の質」と「自己認識力」を意識してほしいです。これらは、先に述べた「Reflection」が鍵です。例えば、振り返る時に自分の課題ばかりに目がいってネガティブ思考に陥ってしまう人は、「中でもうまくいったことは何か?」と小さな「OKサイン」を出しながら自分に問いかけてみてください。さらに「違うやり方をするなら?」「関係者はどう感じた?」など、多角的に自問することも有効です。
また、「Reflection」が頭の隅にあると「ネガティブループにはまっている」「忙しさにかまけてきちんと振り返れていない」と自分の思考や状態・言動に気づけるようになります。すると、「このままだと何事もマイナス思考に陥る」とか「同じ過ちを繰り返しそう」とアラームを出せて、楽になります。就活や仕事に限らず、学生生活やバイトでもぜひこの「Reflection」を意識して、「経験の質」と「自己認識力」を高めていってください。

 

 

現代の新入社員の意識を紹介・分析した前記事もあわせてお読みください。
これから働くみんなが大切にしていること|人材開発のエキスパートに聞く、2020年代新入社員のリアルな意識

※本記事は取材により得た情報を基に構成・執筆されたものであり、運営元の意見を代表するものではありません。

 

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SCIENCE SHIFT編集部

当メディアの編集部員です。学生の皆さんに今お届けすべき話題は何か?を日々考え、より良い情報を発信していきたいと思います。

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