コミュ力:生活がラクになるコミュニケーションのドラッカー的原則を井坂康志さんに聞く
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お待たせしました、人気シリーズ「井坂康志さんに聞くドラッカー的仕事術」です。
今回のテーマは、「コミュニケーション」。研究でも面接でも仕事でも、大きな課題として扱われていることは、みなさんが日々体感していることでしょう。ただ、苦手意識がある人にとっては、できれば関わりたくないぐらい、難しいと感じるテーマでもあります。
しかし、ドラッカーのコミュニケーション論は、一味ちがいます。目からうろこ、かもしれません。コミュニケーションに苦手意識がある人、できれば避けて通りたい人にこそ、ぜひ読んでいただきたい記事です。
「博士」と、コミュニケーションが苦手な「若者」の対話篇でお届けします。
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コミュニケーションはなぜ難しいか
先生、実は結構深刻な悩みがあるんです。
コミュニケーションが苦手で困ります。話すことがなくなったかと思うと、ついべらべらしゃべってしまったりするんです。いつも何か話すたびに自己嫌悪に陥っているくらいです。どうしたらコミュニケーションが上手になるのでしょう。
なんですか、急に。幽霊ですか? ありませんね。
昔の人は、話には聞くけれど、正体を見たことのないものを幽霊にたとえたのです。人づてにいろんな話を聞きますが、実物を見たという人はほぼいない。
まあ、そうですね。確かに。枯れ尾花が正体なんて言いますから。
コミュニケーションに実体などはないというのですか。
なんだかほめられているような、けなされているような、不思議な気分です。よく大学のゼミとかサークル、バイト先や就活の説明会とかでも、コミュニケーション能力を磨けと言われます。本当にしょっちゅう聞きますよ。一日に何度も聞いている気がします。
あるいは、あの人はコミュニケーション能力が高いからモテるんだとか、友達が多いんだとか、いくつも内定をもらえたんだとか。あれはいったい何なんでしょうか。
そうなんだ。知らなかった。でも、ちょっと安心しました。
僕にはよくわかりません。わかるのは、どうもうまくコミュニケーションができなくてつい重たいため息をついてしまう。それだけです。
うーん、何だろう。上手な言葉遣いとか、熱心な立ち振る舞いとか? 考えるほどわからないな。
「無人の山中で木が倒れた。音はするか」
確かに。子供の頃なんて考えたことさえありませんでしたからね。
なんだ、そんなことか。当たり前じゃないですか。
口に出して言ってみてください。
嫌です。みっともない。
わかりました。「コミュニケーションは一人ではできない。相手を必要とする。」
口に出していってみたら、なんだか本当にそうなんだという実感が湧いてきましたね。
驚きました。考えてみたこともなかったです。わくわくしてきます。
「無人の山中で木が倒れた。音はするか」。こんな考案だそうです。どうでしょうか。音はすると思いますか。しないと思いますか。
うーん、やはり木が倒れるのだから音はするでしょう。
どうして?
なんだかわかったような、わからないような。
要は、聞き手が受け取って初めてコミュニケーションは成り立つということ。言い換えれば、相手の意味世界に入っていくことができなければコミュニケーションは成り立たない。そうしなければ、せっかくの言葉も雑音になってしまう。チューニングの合わないラジオみたいに。
まずその口を閉じよ
まだ少しもやもやしていますが、ぼくの最初の質問にまだ答えてもらっていませんよ。ぼくはどうすればコミュニケーションの苦手を克服できるのでしょう。ドラッカーの説くところから導き出せるこつのようなものがあれば、ぜひとも教えてほしいのですが。こう見えてこれからぼくは就職活動だって控えていますし、生涯の伴侶だって見つけなければならない。人生がかかっているんです。真剣なんですよ。
それはどんなことですか? ぼくでもできることなんですね。
第一に言わせてください。大切なことです。あなたは、沈黙を友としなければなりません。
沈黙を友? なんだか古臭い表現ですね。
ところで、さっきからあなたは、私が話し終える間もなく自分の話を始めてしまっていることに気づいていますか? しばしば私の発言をさえぎるように自分の話をしている。そのことを知っていましたか?
ああ、そうかもしれません。ごめんなさい。無意識なんです。よく母からも言われるんです。お前は人がしゃべっているのをさえぎる悪い癖があるって。
さっき私は、コミュニケーションは相手があって初めて成り立つと言いましたね。あるいは相手の意味世界から始めなければ成立しようがないとも言いました。だとすれば、最初に行うべきことは何か。相手に口を開いてもらうことだ。そうしなければ、相手が何に意味を感じているかなんてわかるはずもないでしょう。
ならば、こちらにできることは何か。耳を傾けることです。そうではないですか?
いや、まったくその通りです。自分がべらべら話してしまったら、それはただの大きな独り言みたいなものですものね。
あなたは、自分の話をしながら、相手の話を聞くことができるでしょうか。キャッチボールでボールを受け取りながら投げるような曲芸のようなことができるでしょうか。自分の好きな映画の話をしながら、相手が話している旅行の話を聞くことができるでしょうか。
できるわけありません。
沈黙を友とすることです。黙っている人のほうが饒舌な人より賢く見えるというのは、旧約聖書でも語られている太古からの知恵なんです。
どんなふうに相手を論破してやろうかとか、心をつかむトーク術なんていうのは、聞く力と比べたら、安っぽいプラスチック製のおもちゃみたいなものです。
就職活動の面接なども同じですよ。あなたがなすべきは、きちんと面接官の話を聞くことです。その後で、とつとつと自分のことを語り始めて全然遅くはない。グループ面接でも、ゼミの発表でも同じ。相手の世界を理解しなければコミュニケーションは始まらないのです。
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後編はいよいよ「実践編」。コミュニケーションの扉を開く、「魔法の言葉」とは?
▼ドラッカー的:コミュニケーションの扉を開く魔法の言葉と「対立」について
※本記事の内容は筆者個人の知識と経験に基づくものであり、運営元の意見を代表するものではありません。