「理系就職」の成功ガイド
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理系学生の皆さん、就職活動を進めるにあたって不安を感じている方も多いのではないでしょうか。自分のやりたいことは何なのか、自分の専攻はどんな業界や企業で活かせるのか、研究と就職活動が両立できるのか。特に就職活動のために研究に支障をきたしてしまうことや、逆になかなか就職が決まらず研究に集中できない状況は避けたいと考えていることでしょう。
就活と研究の両立するために必要なのは、効率良く就職活動を行い志望する企業の内定を勝ち取ること。そのために必要なのが戦略的な思考です。自分がその企業に入社する目的はなにか、そのためには何をしないといけないのかをしっかりと認識して、就職活動を進めていきましょう。
就職活動とは?
そもそも就活とはなにか。初めて就活に直面した人は、就職という未知の事柄に対して漠然とした怖さを感じているかもしれません。しかし、恐れることはありません。就職活動とは単純に言うと、あなたと企業のお見合いであり、マッチングです。正しい回答を求めるテストではなく、「企業が求めること」と「学生の提供できること」をすり合わせる作業です。企業が学生を一方的に品定めする場ではなく、学生も企業を見極める場でもあるのです。そのため、学生である自分の武器はなになのか、何を企業に提供できるのか、自分がその企業に求めるものは何なのかを、しっかりと見極める必要があります。
理系学生の就職活動
専攻を活かせる職種に就くか、専攻外の職種を選ぶか、学部卒で就職するか、大学院に進学するか。学校推薦を利用するか、自由応募か。理系学生の就職活動の進め方は様々です。ここではその選択肢についてみていきましょう。
専門分野を活かすか、専門外へのチャレンジか
理系学生ならではの進路選択に、大学で学んだ専門知識を活かす専門分野就職があります。自身がゼミなどで専攻・研究した事柄に関連した業界・職種に就くという進路です。ただ、理系イコール専門分野での就職というわけではなく、専門分野以外で就職をする人も少なくありません。
専門性を活かす専門分野就職
理系学生に企業が期待していることに専門性があります。機械、電気、情報、建築、薬学など業界とのつながりが強く、「技術系職種」においては即戦力としての期待されることが多くあります。
学生にとっても仕事が自分の学んだことの延長線上にあるため、その企業で自分が働いている姿もイメージしやすいことでしょう。ただ、注意したいのは「専門であることは志望する理由にはならない」という事です。企業は大学と違って、やりたい研究をさせてもらえる場所ではありません。大学は学費を払っているので好きな研究をさせてもらえますが、企業では利益の出る研究をしなければなりません。つまり、新卒採用において、企業が重視するポイントは、その専門性を発揮して「組織の中で、どの様に活躍してくれるのか」ということです。専門性よりポテンシャルを重視していることを忘れないようにしましょう。
専門分野以外にもたくさんのフィールドが
理系学生の強みは専門知識だけではありません。研究を通して身につけた「論理的思考力」「数理能力」「データ分析・解析力」などの実践的な基礎的学力も強みです。実はこの強みを生かせば、専門分野外でも活躍できる業界や職種が数多くあります。例えば、応用物理学で学ぶ「量子論」「量子力学」は、物理学の専門分野に進まない限り活用できない学問のように思われます。しかし、ナノサイエンスやナノテクノロジーは医薬品や化粧品の新商品開発にも広く活用されており、医薬・化粧品メーカーでの商品開発といった進路選択が考えられます。研究で培った専門知識を技術職や研究職で直接活かすのではなく、別の形で活用することで、職種の幅が広がるのです。
大学院進学か、学部就職か
理系学生の進路の大きな分かれ目に、大学院へ進学するかどうかがあります。文部科学省の「平成30年度学校基本調査によると、理系学生(理学・工学・農学系)が学部卒で就職する割合は59.5%、大学院への進学率は34.8%となっており、文系学生(人文科学・社会科学の平均)の学部卒就職率84.2%と進学率4.5%と比べても高いことが分かります。
※数値は資料から平均値を試算
分野別卒業者の進路状況
出典:文部科学省「平成30年度学校基本調査」
研究職志望なら大学院進学は有利
理系学生の皆さんが、将来的に理系専攻分野の知識を活かした職種に就きたい、または研究者として活躍したいと考えているのであれば、大学院進学の必要性は高まります。
メーカーの研究職の場合では修士課程修了見込み者を条件とする場合もあるぐらいです。しかしそれは研究職としての採用を保証するものではありません。数多くの大学院生が研究職に応募する中で、選考をくぐり抜けた人だけが研究職に就くことができます。また専攻分野によっては、社会に活かすのが困難な分野もあります。そのためかなり限られた市場しかなく、結果として就職の機会も限られている場合もあります。しかし専門分野が産業と直結しない場合でも、大学院まで行って鍛えた知性と思考能力は無駄にはなりません。研究を通じた思考プロセスや課題発見力、分析力は、どんな産業であっても発揮できます。研究で鍛えた能力と知性が、いかに企業組織の発展に寄与できるかをアピールできるよう、しっかり準備をすることが重要です。
学部卒で実務経験を早く積む
理系学生にももちろん、学部卒で就職するという選択肢があります。修士課程に進む人よりも2年早く実務を経験できるのはメリットであり、キャリア形成においても大きな意味があります。特に日本の製造業では社員の教育は会社で行うという風潮も少なくありません。若い内の2年でできることや成長は、早く戦力になって企業に貢献できるということを意味します。会社環境にいち早く慣れ、経験を積むことは、会社の求める成果を出すうえでも、自分自身の成長にとっても有益です。
学部卒か修士卒か。大学院進学率が高い理系ならではの悩みです。どちらかが一方的に有利でも不利でもなく、それぞれのキャリアや特質を客観的に見て、自身の将来を考えましょう。
学校推薦か、自由応募か
理系の就職活動の特長の一つとして、学校の紹介で応募する「学校推薦」と、自ら企業に応募する「自由応募」の2つがあります。それぞれにメリットとデメリットがあり単純に優劣を決められるものではありませんので、両者の特質を理解したうえで上手に利用しましょう。
専攻プロセスが短い学校推薦
学校推薦とは、企業が大学から推薦を受け、採用に値する学生であれば優先的に選考を行うというものです。理系学生が学校推薦を受けるには、大学の選考を受け、推薦資格を得る必要があります。そのうえで所定の審査を受け、採用の可否が決定します。所属する学科・専攻、学部・研究科に企業から寄せられる学校推薦枠があり、多くのケースは筆記試験やエントリーシートなどの審査を割愛して面接に進めたり、面接回数を減らしたりなど、自由応募に比べて優先的な選考となります。選考プロセスが省かれるため、上手く進めばきわめて短い期間で内定まで至ることができます。
反面、学校推薦は、内定が出た場合に辞退ができないという制約があります。推薦を出した企業が大学の推薦を信頼して推薦枠を設けた以上、内定を受諾した後での辞退は企業と大学の信頼関係に影響します。推薦を受ける企業は、内定が出れば必ず入社しなければなりません。万一推薦学生が内定辞退をした場合、個人の問題ではなく、大学と企業間の大きなトラブルになります。こうした理由から学校推薦を2社以上同時にもらうことはできません。
選択肢の広い自由応募
自由応募とは、自ら受けたい企業を探し選考を受けて採用される方法です。自分で選ぶのでその選択肢は広く、これこそが自由応募最大の特徴でありメリットだと言えるでしょう。複数企業にエントリーして同時並行で就活を進め、結果として複数内定を得られるのも自由応募です。
反面、自由応募では人気のある企業に応募が殺到し、高い競争率となります。多くの応募者を段階的に選考していくため、内定まで長い時間がかかることが多いといえます。
「学校推薦」と「自由応募」。それぞれの特質を理解したうえ自分自身の行きたい業界、志望する企業を検討したうえで上手に活用しましょう。
文系就職という選択肢も
理系学生が文系就職をするという選択肢もあります。理系学部出身の学生が、商社や金融、マスコミの営業職や事務職など、文系が多く就職する職種に就職をするという選択をする方が増えつつあり、実際企業もそのような人材を求めています。これば業務の複雑化が進み、多くの仕事で統計や分析スキルが必要になるケースが多くなってきたためで、理系出身者がメーカーの営業、企画、マーケティングなどの職種に就くケースが増えているからです。
理系学生の出身学部別進路
「理学部」「工学部」「農学部」「医学部・薬学部」などの代表的な理系の学部。ここでは学部別に理系の学生が卒業後に進む業界や業種、職業をご紹介します。
理学部
理学部の特長は、科学の本質を追及することで基礎研究を重視し、学問の進歩に寄与する研究を行う学術的な学部であることです。数学や物理を専攻した学生は、論理的思考や分析能力に優れており、研究職や開発職をはじめあらゆる分野で活躍できる可能性を秘めており、こうしたスキルを武器にエンジニアやアナリストの道を選びやすいでしょう。化学系の場合は、メーカーで化学繊維や薬、食品などの研究開発や品質管理に携わったりする人が多いようです。また製薬メーカーの「MR:医薬情報提供者」などは、特に化学系の出身者が歓迎される職業のひとつです。生物学、生命科学系の方も製薬メーカーや食品メーカーの研究開発や製造技術にかかわる人が多く、大学のカリキュラムによっては臨床検査技師を目指す道もあります。
工学部
理学部が学術的であるのに対し、工学部は科学を社会にどう活かすかモノづくりの実践的な知識や技術を磨く学部であると言えるでしょう。自動車・輸送機器、電機・機械、鉄鋼などの「製造業」、住居やビルを建設・管理する「建設・不動産業」、IT関係の事業を行う「情報通信業」など、学科により卒業後に進む業界が大きく変わってくるのが工学部の特長です。職種としては研究、開発、品質管理、生産管理、設計、施工管理、プログラマ、システムエンジニアなど様々です。
農学部
農業や畜産といった食料生産分野から、環境、食品、生物・バイオなど幅広い学問領域を持っている農学部。獣医学科のような特殊な学科では当然多くの人が獣医師になりますが、学科によって幅広い業界へ就職する人が多いのが特徴です。例えば食品業界。食品メーカーの中でも製粉、調味料、お菓子、パンなど、さまざまな種類があり、その中でさらに冷凍食品、美容食品、加工食品、健康食品と細分化されます。またコンビニやスーパーなどと連携して商品開発を行う菓子メーカー、最近ではサプリメントも開発する飲料メーカーなど、新しいビジネスが続々と生まれている状況で業界が複雑化。幅広い企業で農学部出身者が活躍しています。
また、農学部出身者は食品業界だけではなく、製薬業界や化粧品業界にも活躍フィールドがあります。大学で学んだ化学、バイオ、生物といった知識を活かして製薬業界での研究職や開発職で力を発揮することが出来るでしょう。また理学部出身者同様に「MR:医薬情報提供者」として製薬メーカーに採用されることも考えられます。病気や薬の知識はもちろん、化学やバイオ、生物の知識も必要不可欠なので、農学部出身者の方にアドバンテージがあるといえるでしょう。
医学部・薬学部
医学部や保健関連学部の出身者は医師や歯科医師、保健師、看護師などとして医療機関に就職する人が大部分かと思いますが、薬学部についてはその専門性をいかして一般企業に就職する道もあります。薬学部出身者のキャリアパスは大きく2つに分かれ、国家資格の薬剤師免許が必要な「薬剤師職」と、薬学知識や技能を活かす「非薬剤師職」に分けられます。薬剤師職には、病院・薬局・ドラッグストアや企業の管理薬剤師などがあります。近年、在宅医療などにも積極的に取り組む薬局・ドラッグストアが増えてきており薬剤師の活躍の場が広がっています。
非薬剤師職には、製薬・化学・食品・化粧品、医療系ベンチャーなどの研究・開発・生産技術職など多くの選択肢があります。製薬会社で新薬の研究・開発に取り組むほか、化学・食品・衛生関連の企業などで新製品の開発にかかわる研究者・技術者として活躍することもできます。
理系学生に人気の企業
理系就職について、出身学部ごとの進路がある程度イメージ出来たところで、具体的にどのような企業が人気なのか見ていきましょう。文系学生に人気の企業も含めると、その範囲が広く判断に迷ってしまうこともありますので、ここでは就活関連サイトが発表している理系学生に限定した人気企業のアンケート結果を見ていきましょう。
理系学生が選ぶ「就職人気ランキング」100社:東洋経済OnLine
https://toyokeizai.net/articles/-/220226
東洋経済オンラインでは理系学生「就職人気」トップ100社ランキングを発表しており、理系の人気ランキングでは明治グループが3年連続でトップとなっています。明治グループは乳製品やお菓子などの分野に強く、薬品の分野でも幅広く活躍している企業です。活躍できる職種が社内にたくさん用意されていることが、理系学生に人気の理由と思われます。2位の住友林業は「木」を扱う仕事が多く、資源、資材としての「木」をどのよう開発できるか、再生使用できるかが重要視されており「木」の需要は今後、拡大が見込まれています。成長力の高い分野でスキルを伸ばすことができるのが理系学生に人気の理由です。
3位は味の素、4位はロッテ、9位森永製菓、10位森永乳業、12位カゴメ、13位キユーピーと、食品メーカー・飲料メーカーが続き、食品人気が高まっている印象です。食品メーカーは学生になじみがあるだけでなく、理系女子の就職先として人気も高いことがその要因になっていると思われます。
2019年卒 大学生就職人気企業ランキング:マイナビ
https://job.mynavi.jp/conts/2019/tok/nikkei/ranking19/ranking_index.html
株式会社マイナビと株式会社日本経済新聞社の両社が共同で実施したアンケート結果で、2019年卒の先輩たちに人気が高かった企業ランキングを公開しています。
理系学生の男子、女子両者の結果をまとめた「理系総合」で一位に輝いたのはソニーで、昨年に引き続き2年連続の首位獲得。テレビやデジタルカメラ、スマホやウォークマンなどでなじみのある企業ですが、最近では新型「aibo」の発売で話題になり、その技術力の高さが特に理系男子に人気をうかがわせます。また、ここでもTOP10入りをした企業のうち6社が食品・飲料メーカーであることは注目すべきところです。食品・飲料を扱う会社の商品は普段の生活の中で目にすることが多いので、大学生にとって身近な存在なのかもしれません。
理系/2019年卒 就職希望・人気企業ランキング:キャリタス就活
https://job.career-tasu.jp/2019/guide/study/ranking/1_3.html
2019年卒業予定の理系の大学生・大学院生を対象に調査した“就職希望企業ランキング”です。
理系総合ランキングの首位はトヨタ自動車。2位にソニー、3位は日立製作所と大手メーカーが続き、5位の三菱電機、7位の旭化成グループ、9位の東海旅客鉄道と、売り手市場の中、インフラや総合電機、化学・素材メーカーといった比較的安定したイメージの業種に注目が集まっていると言えそうです。
就活関連サイトにより結果にはばらつきがありますが、総じて人気が高いのは食品・飲料メーカーという結果でした。しかし、理系学生はどの業界に就職しても可能性は無限にあることはお判りいただけましたでしょうか。就職する業界の選択、企業選びに迷っていても焦る必要はありません。自分自身の学んだこと、好きなこと、やりたいことと相談しながら、進むべき進路について自分の物差しで考えてみてください。
理系就職の成功戦略
では、理系学生が内定獲得という目的に向かって就職活動を進めていくには、具体的に何をしていけばいいのでしょう。ビジネスの世界では常に目的があり、その目的を達成するための資産を最大限に活用する戦略的な思考が求められます。就職活動でもこの考え方を取りいれ、自分がその企業に入社する目的と入社するための手段を認識して、就職活動を進めることが大切です。ここではその方法論を説明します。
科学的・論理的思考で、戦略的な就活を
理系学生は忙しくて就職活動が大変。
就活に直面した理系学生の間でよく言われるフレーズです。専門分野によって差はありますが、確かに理系学生は実験や観察、研究、レポートといった学業に割く時間とエネルギーが文系学生に比べて大きいことは間違いありません。とくに大学院生は学部生よりも自由に使える時間が少ないため、部活動やサークル活動、アルバイトをしない人もそれほど珍しくありません。
それなのに、就活対策の一般的な書籍やウェブサイトで紹介される実例では部活動やサークル活動、アルバイトの話が多く見られ、「自分の場合は何を書けばいいのだろう?」と悩む理系学生は多いのではないでしょうか。
結論を言いますと、大学の勉強に集中した結果、部活動やサークル活動などの課外活動は何もしなかったとしても問題ありません。その分いかに本業の勉学において努力したかをアピールすることで、理系の就活は成果につながります。
理系学生の武器
理系学生が就職活動を成功するにあたって大切なのは自分の武器を見つけることです。
では、理系学生の強みとは何なのでしょう。自分自身が大学で学んだことを思い返してみてください。
理系学生の一番の強みは、研究を行う上で培われた、論理的な思考能力、プレゼン力、文章を作成するスキル、調査能力といった、ビジネスを行う上でも必要とされる基礎的な能力が高い点です。また研究は受け身では進められないので、自主性や自己管理能力が高い人も多いのが特徴です。
◎自分のしたいことは何か?
◎自分のしたいことを実現できる業界、企業はどこか?
◎自分はその企業に何を提供できるのか?
◎自分のやりたい道に進むには、どのタイミングで何をすればよいのか?
◎自分の熱意を伝えるには、どうプレゼンすればよいのか?
これらのことを、論理的に考え整理することろから始めてみてください。
自分のやりたいこと、企業の求めることを科学的に分析
理系就職において、「自分のしたいこと」「入りたい企業」を考えるのは、この先何年も携わる仕事選びの上で重要です。しかし思考をそこで止めずに、自分が志望している企業に就社し、希望する職種に就くには何が必要なのか、そのプロセスまで含めて考えてみましょう。
採用基準を満たすための資格の取得や面接対策なども重要です。しかしそれ以上に、相手企業に自分のやりたいことがあるのか、自分が提供できるものがあるのかを見極めることも重要です。そのためには綿密な企業研究を経て、その企業がどう社会に貢献し成り立っているのかというビジネスモデルを理解することが欠かせません。そのうえで自分がその企業に入社したことで、そのビジネスにどう貢献できるのかというイメージが描けたら「やりたいことが実現できる」可能性は高まりますし、あまり具体的にイメージが浮かばないなら、その可能性は乏しくなります。
会社のウェブサイトを詳しく見るだけでも、企業の正確な情報は得られます。たとえ実験や研究が忙しくとも、例えば通学中の電車の中、夜寝る前の数分でもよいので企業研究に取り組む習慣がつくと、毎日少しずつでも実践することで後に大きな差ができます。
理系学生特有の分析力やデータの読み取り能力など、科学の目を駆使して相手先企業を見極めてください。理系の勉強を通じて身に付けている専門性は大きな武器です。科学的思考、論理的思考は理系の優位点なのです。
理系就職に求められる英語力
理系学生にとっては意外かもしれませんが、理系就職には英語力が求められることが多くあります。というのも企業の研究職や開発職では、新製品や新技術の開発を行う上で、海外のデータや論文を参考にする機会が多くあるためです。特に研究職の場合、英語を使用する機会は必ずあると言っても過言ではありません。そしてこのことは、グローバル企業や外資系企業だけに当てはまるものではありません。国内の中小企業や産業でも今の時代海外への市場開拓や情報発信も盛んに行われており、海外からの人材を採用している企業も多くあります。このようにもはや、ものづくりと英語は切っても切れない関係にあると言えるのです。自分の英語力を測る基準としてはTOEICが一番わかりやすい指標でしょう。ここで高いスコアを取ることで、自身の。英語力をアピールしやすく、評価を受けられると言えます。
理系学生は数字やデータに強ければいい、という時代は終わりました。英語に自信のない理系学生が研究職・開発職を目指すなら、今から準備をしておくことをおすすめします。
面接で大切なのは、質問力と会話力
理系就職では本業の勉学においていかに努力したかをアピールすることが成果につながると、この章の冒頭でも触れました。そのためには自身の研究の内容や成果を明確に相手に伝える能力が必要で、それは特に面接の場面において求められます。
面接では論理的に筋道を立てて話をするスキルが重要ですが、理系学生の皆さんは日々の研究やプレゼンテーションの場で自然に培われているはずです。例えば、あなたが研究職や技術職を志望している場合、単に研究してきた内容とその企業が取り組んでいる内容が似ているというだけではアピールになりません。自身の研究内容で学んだ知識や実績を、志望する企業でどう活かしたいかを明確にしておく必要があるでしょう。また、面接は企業が学生を見る場であると同時に、あなた自身も企業を観察・情報収集できる場であるということも忘れないでください。実際に会って話をしてみると、これまで会社案内やウェブサイトで得た情報とは、違った側面が見えてくることも多いものです。特に第一次、第二次などの面接の初期段階には現場の社員が出てくることも多いので、その企業の仕事内容が具体的に分かるはずです。
特に研究・開発職の場合では、同じようなテーマでも企業によってどのような進め方の違いがあるのか、チームは何名くらいで編成されそれぞれの役割はどうなっているか、長期で行う研究開発と納期が決まっている短期的な製品開発ではどのような過程を踏むのかなど、企業ごとの特徴が出ることがあるでしょう。面接で質問するチャンスがあれば、企業ごとに同じ質問を繰り返し比較することで、自分に適した企業を判断する材料になります。
面接で重要なのは、「うまく話すテクニック」ではありません。受け身になるばかりではなく積極的に質問してみることで、判断の指針となる材料もしっかりと集めましょう。
面接で大切なのは、自己分析やエントリーシートを作成するプロセスにおいて見えてきた「等身大の自分」をきちんと伝えること。つまり面接とは、自分が本当にやりたいことの軸や方向性をしっかりと持ち、その会社で何をしたいのかを伝え、自分がその会社に合うかどうかを肌で感じ取れる場である、いうことを意識して積極的に会話をしていきましょう。
理系就職の誤解、間違い
理系学生の多くに、自分が大学で学んだ研究分野に関連のある業界や企業に限定して就職先を考えがちということがあります。また職種についても、研究職や開発職だけにターゲットを絞りその他の職種については目もくれない方も多くいます。実はこれ、理系学生が陥りがちな失敗の代表的なものです。ここではそんな理系学生が陥りがちな間違った就職活動の例を紹介していきます。
専門分野に特化して、業界・企業を選ぶ
例えばあなたが農学部の生物生産学科で魚類の研究をしているとします。すると自ずと志望業界として水産業界が筆頭に上り、水産加工品メーカーや養殖業、水産に関連する研究所などを志望することになるでしょう。しかしこの選択方法が本当に正しいとは限りません。そもそもその学科に進む際、あなたは将来進むべき職業を明確にイメージして学科を選んだでしょうか。それが就職活動をする段階になって、自分の専攻分野だからといって志望する業界を限定してしまうのは、可能性を狭めてしまうことに他なりません。
仮にあなたが魚類の油に多く含まれる成分であるEPAを研究していたとしましょう。EPAとは血液の性状を健康に保ち血栓ができにくくし高脂血症を予防する働きがあるなど、血液をサラサラにする効果があるとよく言われています。だとするとその知識は、製薬メーカーで健康食品メーカーの製品を開発するなど、人の健康や命をまもるやりがいのある業界でも活かせるのではないでしょうか。
このように、大学での研究とは関係がなさそうな企業にも研究分野を生かせる場合が多くあり、専門分野に特化して就職活動を進めると、職業選択の幅が狭まってしまうことが多くあります。企業名や業界だけでなく、一見関係なさそうな業界にも幅広く目を向けることで、意外と自分に合った業界や企業を発見できることが出来ます。就職活動中は選択肢の幅を広く持ち、本当に自分の力が生かせる場所を探しましょう。
研究職と開発職の違いが分かっていない
理系就職のイメージとして抱かれているのが、理系学生のほとんどは研究職や開発職を目指すというものです。でも実際、その2つの職種の違いを、あなたは本当に理解していますか?
業種によって細かな部分は異なりますが、一般的に研究職とは長期的視野に立って新しい技術などを生み出す基礎研究のことを指し、開発職とは短期的に製品化のための研究を行うことを指します。
根気と我慢強さが必要な研究職
研究職は主に「基礎研究を行うことが仕事」です。研究室で実験を担当するなど、製品開発に繋がる基礎となる研究を行います。研究は成果が出るまでに数年から数十年もかかる場合もよくあり、自分の行っている仕事が社会でどう役立っているのかを実感しにくいなど、根気と我慢強さが求められる仕事と言えます。研究職は大学などの学術機関だけでなく多くの企業でもそのポストが存在し、製薬メーカーでは医薬品などの新しい薬を生み出すための研究、食品メーカーでは新商品の研究、素材メーカーでは新しい素材の研究と、様々なものがあります。しかしすべての研究職において言えることは、そのポストと人数は非常に少ない反面、研究職を志望する学生が多いことから競争率が高いということです。自身に絶対的な強みや研究を活かせる分野がないと、研究職での就職は難しいということを知っておかなければなりません。
社会への貢献が実感できる開発職
開発職とは、簡単に説明すると「製品化を行う仕事」です。企業によっては研究開発職と呼ばれていることもあり、主な仕事内容は、研究職が出した結果をもとに社会に必要な製品、競合よりも優れた製品を開発することです。例えば製薬メーカーでは、研究職と同じように臨床試験や治験を担当して研究を行うなど、同じ開発職でも仕事内容は企業によって異なります。開発職の仕事の幅は研究職に比べて広いことも特徴です。直接製品に携わることから、人前に出る機会も多いほか、どういう製品が世に求められているのかを判断するマーケティングの力量を求められることもあります。基礎研究にとどまらず、実際に製品化するまでの流れにも携わりたい場合は、開発職を目指したほうが良いと言えるでしょう。
研究職や開発職以外にも、理系の職種には技術開発職や生産技術職、品質管理など、業種によってさまざまな職種があり、それぞれの違いや魅力が多くあります。本当に自分のやりたいことにふさわしい職種はなになのか、それぞれの職種の仕事内容までしっかり確認した上で、就職活動を進めましょう。
知名度の高い数社だけを受ける
先述した人気企業ランキングをみると、ソニーや明治グループ、味の素など、名だたる有名企業が並んでいます。しかしこうした人気のある企業や職種は極めて倍率が高く、また、人気企業への願望が強すぎると、その他の企業の魅力に気づけなくなり、選択肢を自ら狭めている可能性もあります。
例えば、企業の規模だけで志望先企業を選んだ場合、必然的に一部の大企業しか見えなくなってしまいます。しかし、企業規模にとらわれずに、やりたい職種や注目している技術を観点に就職活動を行えば、これから研究分野に力を入れていく成長性ある中小企業を発見できるかもしれません。また動きの遅い大企業でなく、決定スピードの速い中小企業なら、自分の手がけた新商品を若いうちから生み出せるかもしれないのです。知名度の高い企業が自分に合った企業とは限りません。事前に企業研究をしっかり行った上で、視野の広い企業選びを心がけましょう
コミュニケーション力は必須
理系学生にコミュニケーション力は必要ない。こんな誤解をしていませんか。理系女子(リケジョ)や理系男子といった言葉が一般的になりつつある一方で、理系学生は「根暗」「コミュニケーション力がない」というイメージがあるのも事実です。
しかし実は、理系だからこそコミュニケーション力は必要です。研究や開発など理系の職種は専門的で、一般的な方には理解するのが難しい事柄がいっぱいあります。これが大学などの学術的な世界でなら、その狭い世界だけで通用するかもしれませんが、ビジネスの世界ではそういうわけにはいきません。今から皆さんが仕事をする企業では、一人の力だけで完結する仕事はほとんどありません。マーケティング部や営業部などの同僚や先輩、取引先などとコミュニケーションを取りながら、企業の利益につながるプロジェクトを進めていくことになり、ここでは企画会議やプレゼンで研究の内容や結果を相手に説明しなければなりません。そしてここで必要とされるのは、研究に対する専門的な知識や技量ではなく、相手に伝える力です。例えどんなに素晴らしい研究結果が出たとしても、その意味やメリットを伝えることが出来なければ、相手を説得することはできません。
もしコミュニケーション能力に自信がない場合でも、「理系だから、研究職だから、コミュニケーション力は不要」と短絡的に思わず、それを磨くための準備を行いましょう。コミュニケーション力を磨くことは、就職活動であなたがその企業で働く意味を面接官に伝えることにもつながります。
理系就職の進め方
理系学生が就職活動を進める上で、スケジュール管理は何よりも重要です。
実験や研究、レポートのまとめなどで大変な上、修士以上に進めばほとんど毎日研究室にこもりっぱなし。こんなに忙しい理系学生が、就職活動と実習や研究を並行して進めるのは想像以上に大変です。大学であれば自分の与えられたテーマの研究をこなしておけば大丈夫ということはあっても、会社に入れば、1つの仕事だけをこなしていれば良いという人はまずいません。複数のタスクをこなしながら、新たなタスクが入り、さらには専門外の業務も追加される「マルチタスク」を処理できる能力が求められます。
これと同様に、授業を受けながら実験や研究・レポート作成・発表をこなし、さらに人によっては部活やアルバイトに時間を割き、そのうえで就活も行わなければならない理系学生。その忙しい日々は、普段からマルチタスクの処理能力を訓練されていると言っても過言ではありません。大学との両立は大変なことだろうと思いますが、それを乗り切る力こそ、企業が理系学生に期待しているものといえます。
理系の就活スケジュール
ここでは一般的な理系の学校行事と就職活動スケジュールを紹介します。2020年3月卒業の学生であれば下記のスケジュールやプロセスを参考にして活動計画を立てましょう。
2020年3月末卒業予定学生の就活スケジュール(2019年2月現在)
ここでポイントとなるのは、3月1日を境にした準備期間と活動期間。就活は3月1日に始めるのではありません。スポーツの試合や勉強の試験と同じように、本番前のトレーニングや準備をする期間が重要です。つまり、3月1日のエントリー開始前に、自己分析や業界・企業研究を終わらせておくことが必要です。反面、就職活動は準備が大切とばかりに、学業を疎かにしては本末転倒です。理系学生の最大のアピールポイントは、普段の研究内容から得た知識や技術。しっかり勉強をしておかないと説得力のある志望動機や自己PRができなくなります。授業、研究、発表、部活やアルバイトなどの課外活動に忙しい理系学生ですが、時間管理とスケジュール管理をしっかりとして就職活動にのぞみましょう。
準備期間(~3月1日までに)
3月1日からスタートダッシュが出来るよう、この期間に自分自身がやりたいことを見つめる自己分析、相手先の企業に自分がやりたいことがあるのかを見つける業界・企業研究を行い、リアルな仕事経験が出来るインターンシップに参加するなど、学業と両立しながら就活準備を進めておくことが重要です。エントリー開始が3月1日だからと言ってそこからスタートを切っていたのでは、その後の就職活動が後手に回ってしまうのは当然です。
活動期間(3月1日~)
準備期間で見つけた志望業界や企業に向けて、具体的な行動をスタートします。
「企業セミナー」「個別企業説明会」「合同会社説明会」などの説明会に出席することで、企業情報や採用情報を得ることができます。企業はこれらの説明会で、好感触を感じる学生に目星をつけておき、面接へ誘導します。中にはセミナー出席者だけにエントリーを認める企業もあるので、3月1日までに準備が出来ていなければ、そうした流れにも乗り遅れることになってしまうので注意が必要です。
決定期間(6月1日~)
いよいよ選考開始です。優秀な学生はこの時期に内々定の知らせを受け取る人も珍しくありません。受諾するか否かの判断は熟考する必要がありますが、その企業に自分のやりたいことがあれば、あなたの就職活動は大成功です。
内定(10月1日~)
大部分の企業は10月1日に内定式を行います。
この時期にまだ内定を得ていない学生は結構いて、同様に企業側でも予定していた採用枠が充足していないこともあります。そのためこの時期に決まっていないからと言って必要以上に焦る必要はありませんが、周りの友人が内定を得ている中で、就活を続けるのは大変です。準備期間に綿密な準備を終え、3月1日からスタートダッシュをするのが成功への一番の近道です。
まとめ
どんな仕事についても、正解が分からないことが起こります。そうした時に理系学生の中でも特に問題解決のプロセスをしっかりと身に付けている学生は強いです。それに加えて、論理的に説明できるプレゼンテーション能力を身に着けていれば、チームを引っ張るリーダー的な存在にもなれます。
これまでも何度か述べましたが、就職活動は正解を当てるテストではありません。マニュアルや内定を受けた人の意見を参考にするのもいいですが、それをそのまま真似をしても採用されるものではありません。
就職活動は、あなたと企業のお見合い=マッチングです。あなた自身の魅力と能力、熱意を最大限に相手に伝えることが重要です。