「自己PR」と「学生時代に力を入れたこと」の違いとは。後悔しない就活のコツ Vol.2
皆さんこんにちは。第1回の記事では、就職活動の全体的な流れについてお話ししましたが、その後、自分なりの就職活動のスケジュールを立ててみましたか?自己分析も進んでいるでしょうか?周りがやるからという受け身ではなく、自分のこととして意志を持って取り組んでくださいね。少しずつでもいいので着実に歩んでいきましょう。
さて、次のステージに進むに当たって、まずは学生の皆さんから頻繁に寄せられる相談を見ていきましょう。
- 自己PRについて
- 学生時代に力を入れたことについて
- 志望動機について
この3つは、エントリーシートで必ずと言っていいほど問われるテーマです。そして、学生の皆さんからの相談は、ほとんどが「強みが分かりません」「エピソードがありません」「同じ内容になります」「どう書けばいいですか?」というもの。上記3テーマは、選考が続く限り、多くの学生の悩みの種になるでしょう。なぜなら、これらは企業から面接の場でもよく聞かれる質問だからです。
今回は、第1回で説明した「自己分析」をもとに、「自己PR」「学生時代に力を入れたこと(略してガクチカと言われています)」について、企業の視点に立ちながら例を用いて考えてみます。なお、「志望動機」については第3回で詳しく取り上げる予定です。
「自己PR」とは何か理解する
誰に自分をアピールするのか
自己分析がある程度進んで、実際に履歴書やエントリーシートを書くようになると、以下のような相談がぐっと増えます。
「“自己PR”と“学生時代に力を入れたこと”は何が違うのですか?」
「同じような内容になってしまいます」
「エピソードがありません」
「強みが分かりません」
皆さんも既にこうした悩みの渦中にいるかもしれませんね。確かにこの2つはハッキリとした線引きもなく、そもそも「こう書けば間違いない」というセオリーも存在しません。
学生の皆さんは「正解」を求める傾向がありますが、就職活動において「正解」というものはありません。まず「自分を伝えていくのは自分自身であり、自分が決める」と言い聞かせてください。「正解」を探すのではなく、自分で決めていくのです。
では、まず自己PRについて考えてみましょう。
就活における自己PRは誰に向けておこなうものでしょうか?そう、採用担当者=企業ですね。では、企業の使命や目的は何だと思いますか?「社会貢献」「事業拡大」「社会の発展」……こう答える学生がほとんどです。特に「社会貢献」は非常に多い答えで、もちろん企業が担っている役割のひとつでしょう。
しかし「社会貢献」とは、会社が安定した利益を上げて存続し事業を継続していくなかで、「世のなかに価値を提供し、よりよい社会の実現に貢献すること」に他ならないのです。つまり、企業の安定した存続なくしては、社会貢献も成り立たないということを理解してください。
だからこそ企業は、選考を通して「将来、活躍してくれそうな社員」となる人を見極めたいと思っているのです。ここで言う「活躍してくれそう」とは、
「成果を出せる人」
「事業を広げていってくれる人」
「会社の将来を担ってくれる人」
そんな期待を抱かせる人ではないでしょうか。それぞれの企業に合った「能力やスキル」「人柄」「価値観」があり、その上で魅力を感じられる人を採用するのです。そのような立場にいる企業に対して、皆さんは自分をアピール=自己PRするのです。「誰に対して自己PRするのか」そこをしっかり押さえてほしいと思います。
自己分析の活かし方
例えば、次のような自己PRがあるとします。
「私は笑顔が自慢です」
「私の強みは明るく元気なところです」
これは女性に多い例です。ゼミやアルバイトで初めて会う人たちに対する自己紹介ならOKかもしれません。しかし、これから働いてくれる人を探している企業側からすると「それが我が社にとってどんなメリット(利益)になるのだろう?」と思うのではないでしょうか。
また、男性に多く見受けられる例としては「私は忍耐力があり、責任感もあり、最後までやり遂げることができます」という盛り込み型。単語ばかり並んでいて具体的なイメージがつかないため、いったい何がその人の強みなのか分からないケースです。
さて、第1回では、「行動面+内面」をセットにして自分を振り返り、自己分析するようアドバイスしました。それをどう活かすか、先の例で考えてみましょう。
「なぜ笑顔が自慢になったのか」
「なぜ明るく元気でいるのか」
例えば、アルバイトやゼミなど集団で何かに取り組むことが多く、「その場の雰囲気を良くするため常に笑顔を心がけていた」、あるいは「周囲の人たちが意見を言いやすいよう明るく元気に振る舞っていた」のかもしれせん。理由はそれぞれ自己分析で掘り下げていると思いますので、そこまできちんと伝えましょう。
このように内面の情報が追加されるだけで、単に「笑顔が自慢」「明るく元気」というより、例えば「周囲との調和を心がける」「場の空気を読んで行動する」という人柄が伝わってきませんか?同時に「集団で物事に取り組むことができる人」ということも伝わりますね。きっと仕事でも、そのような人柄で活躍してくれそうだとイメージがつきます。ぜひ、そうした点をアピールしてみましょう。
一方で、盛り込み過ぎの場合、まずどんな自分を伝えたいか少し絞ってみてください。その際、どうしてその自分を伝えたいのか、どのようなシーンでそのあなたらしさを発揮したのか、というエピソードも考えてみましょう。とにかく具体的にすることが大切です。
自己PRのまとめ方のコツ
このように考えると自己PRのポイントは、
- 企業が「期待できそうだ」と思えるか
- 企業にとってメリットにつながるか
- いずれも具体的にイメージできる内容か
といった「採用する側の目線に立つ」ことです。
- 私には○○という強みがあります(あるいは私は○○な人間です)。
- それをこんなふうに発揮します(具体的なエピソードを入れる)。
- 将来はその力を活かして○○な仕事(○○な働き方、○○な活躍)をしたいと思っています。
- それは御社(貴社)にとって○○というメリットにつながります。
少し乱暴ですが簡単に言うと、企業に対する自己PRとは
「私は御社で活躍する人材ですよ!採用するとメリットがありますよ!」
と伝えることではないでしょうか。
このようなアピールになれば、企業も皆さんの良さを具体的にイメージでき「一緒に働きたい」と、心が動かされるのではないでしょうか。もちろん上記の○○や具体的なエピソードは、自身のことをじっくりと考え、自分の言葉で伝えていってください。自己分析で掘り下げたことを、十分に活かしてほしいと思います。
「学生時代に力を入れたこと」と「自己PR」との違い
“ガクチカ”で何を見ているか
では、もうひとつの悩みの種である「学生時代に力を入れたこと(ガクチカ)」について考えてみましょう。重ねてお伝えしますが、「こう書けば良い」というマニュアルはありませんし、ある意味「自己PR」の一種と捉えることもできます。事実、「あなたが学生時代に頑張ったことはなんですか。そのとき、どんなあなたらしさを発揮しましたか」といった質問のエントリーシートも見かけます。ここでは、あくまでも一般的に言われていること、そして私が思うことをお伝えします。
こうした質問では、「物事に対する取り組み方」や「成長の過程」を見られています。実際に社会人を経験したからこそ言えますが、社会人は大変です。イイコトばかりではありませんし、つらいことや思い通りにいかないこともたくさんあって、いろいろな壁が立ちはだかります。その壁とどう向き合って乗り越えていくのか、そのなかでどんな学びや成長をしていくのか、企業は知りたいのではないでしょうか。
多くの学生が「長く働きたい」と希望しますが、そのためには努力し成長し続けることも必要です。困難なことに向かっていく勇気と行動力も要りますね。企業は、皆さんがどんな努力をしてきたか、どんな経験をしてきたかを知りたいのだと思います。
ポイントは体験談ではなく、「自己成長」という視点で考えることです。「学生時代に力を入れたこと」は、熱が入る人も多いようでついつい体験談を綴ってしまいがち。「やってきたこと」をただ並べるのではなく、いかにして成し遂げたのか、困難や壁をどのように克服したのかを伝えるようにしましょう。採用担当者に、あなたの考え方や物事に対する取り組み方が伝わるように、自分なりに表現してください。
同じエピソードでも何を伝えるかで変わる
両者の違いは正直なところ、なかなか難しいと私も思うことがあります。ただ、あえて簡単に言うなら自己PR(特徴や強み)とは、「(もともと備わっている)あなたらしさ」を伝えるもので、普段から発揮していたり表れていたりするもの。一方、学生時代に力を入れたこととは、「物事に対する取り組み方や成長過程」を伝えるものと、私は学生の皆さんに説明しています。少し抽象的ですが、線で考える(自己の特徴)か、点で考える(ガクチカ)か、と言えるかもしれません。
例えば「飲食店でのアルバイト」というエピソードがあったとします。
- シフト制なので自分のスケジュールと合わせて計画を立て休まないよう心がけた
- アルバイト当日は引き継ぎ事項を確認してその日にやるべきことを整理した
- やるべきことの優先順位をつけてスムーズにおこなえるようにした
このような内容からは、「計画性」や「段取り力」など、その人に備わっている特徴を発揮した具体例として受け取れます。では、次の内容の場合はどうでしょうか。
- お客様アンケートで接客態度を指摘され店長に注意を受けた
- もっと良い接客ができるようになりたいと自分の接客を見直し練習した
- 他の人からもアドバイスを受け、自分では気づけなかった点を再発見し確認した
- 結果として接客態度が良くなりアンケートの評価も上がった
- 周りから客観的な意見をもらうことで気づきがあると学び、その後にも活かした
その人らしさ(特徴)というよりは、できなかったこと(壁)や物事に対する姿勢、その経験を通しての学びについて具体的にイメージできるのではないでしょうか。
このように同じアルバイトの話でも、何をどう伝えるかで焦点は変わります。「書くことがない」という人も、あらためて自分の経験を振り返ってみましょう。何か印象に残っていることがきっとあるはずです。
おわりに
人それぞれ強みや特徴も異なりますし、これまでの経験も違います。何をどう書くかによって、あるいは見方次第では自己PRにもなるし、学生時代に力を入れたことにもなる、というケースもあります。実際、私もよく学生と一緒に悩みます。そして行き詰まったときに聞くことがあります。
「どんな自分を伝えたい?」
エピソードからいったん離れてシンプルにそんな質問をすると、意外と「こんな自分を伝えたい」とスッと答えられるもの。つまり、エピソードありきで考えると、結局何が言いたいのか分からなくなって、同じことばかり頭のなかでグルグルしてしまうのですね。
自己PRにしてもガクチカにしても、まずは「どんな自分を伝えたいのか」。そこを考えることができればエピソードは自然と出てくるように思います。ただし、あくまでも伝える相手は企業であることを忘れずに。独りよがりの話にならないよう気をつけてください。
皆さんはどのような自分を伝えたいのでしょうか。まずはシンプルにこの質問に対して、いくつか答えを考えてみてください。一言でなくてもOKです。自分の言葉で自分らしさを表現してみましょう。
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