「志望動機」と「企業研究」のつながりを理解しよう。後悔しない就活のコツ Vol.3

皆さんこんにちは。3回にわたってお届けしてきたシリーズも、今回が最後となります。

今回は第2回に引き続き、多くの学生が書けないと悩む、志望動機について考えてみましょう。最終回ということもありますので、私自身の民間企業で採用担当を務めた経験も踏まえ、少し辛口トークで皆さんに「喝!」を入れて締め括りたいと思います。

ところで皆さんは、日本にどのくらい企業があると思いますか?法人・個人含めて、日本には400万社近い企業が存在しています¹。もちろん、新卒採用をおこなっている企業は限られますが、それでも例えば、リクナビ2017に掲載された社数は約24,000社²にのぼります。

これだけの会社数があっても、学生の皆さんが実際にエントリーするのは数社~数十社、プレエントリーで3桁いくかどうか、といったところです。24,000社が、ぜひ我が社へとアピールするなか、皆さんはそれぞれ企業を選んで(プレ)エントリーしていますよね。

つまり、その時点で何らかの理由があって、選んでいるのです。その理由こそが、志望動機の「種」になります。その「種」をどう育てて企業にアピールしていくか。どんな花を咲かせて実をつけるのか――。そのために必要な栄養が「自己分析」や「企業研究」と言えるでしょう。

第3回では、志望動機に欠かせない企業研究についても触れます。2017年3月1日³の解禁に向け、ここでもう一度自分を振り返り、そして企業のことも理解して自分の進む道を見つけていきましょう。毎回のようにお伝えしてきましたが、就活の舞台では皆さん自身が主人公なのです!

¹ 2016年版中小企業白書より
² 2016年4月1日現在
³ 2016年4月1日現在

志望動機と自己分析について

後悔しない就職活動のコツ「志望動機と自己分析」

企業が志望動機を聞く理由

では、皆さんはどんな学生が採用されると思いますか?「能力が高い人」と答える人が大半ではないでしょうか。しかし、恐らく企業は「新入社員で即戦力になれる人」を求めているわけではないと思います。第2回でも述べた通り「近い将来、活躍してくれそう」と期待させる人、「できるだけ高いモチベーションを持って、長く働いてくれそうだ」と思わせる人を採用するでしょう。

つまり、企業が志望動機を聞くのは

「どれだけ本気で働きたいと思っているか」

という、皆さんの意思や意欲を知るためです。私も何百人もの志望動機を読みますが、皆さんの意思の強さや思いの熱さがよく反映されると感じます。自己PRができていても、志望動機でガッカリするケースも多く、その場合、熱意が伝わらず「本当にこの企業に入りたいのかな?」と思ってしまいます。

例えば、皆さんも、サークルや部活動、アルバイト先で新しく人を入れたいと思ったとき、どんな人が欲しいか考えますよね。そして、応募してきた人に「なぜ入りたいの?」と聞くのではないでしょうか。企業も同じように考えているのです。

 

よく見る志望動機の例

最近は、キャリアセンターの利用やガイダンスの参加などで、志望動機の書き方を習うことも多いためか、業界別あるいは職種別に志望動機がパターン化しているように感じます。

いくつか例として取り上げてみましょう。

<製薬会社の場合>

「私は○○や△△など専門性の高い医薬品を開発されている貴社でMRを志望します。MRを志望する理由は、人の役に立ちたいからです。私は大学の実習先の病院で小児病棟の担当となり、子ども達のことを考えながら院内学級の行事を企画しました〜(以下、実習の話が続く)~」

医療・医薬品業界や福祉、健康関係や保険など、人の生命に関わる仕事に多く見られる「人(患者さん)の役に立ちたい」という動機。もちろん、そのこと自体に問題はありません。しかし、本当に「人の役に立ちたい」の一言でサラッとまとめていいものでしょうか?どんな人のどんな役に立つことが、自分のやりがいや喜びにつながるのか、そこをきちんと伝えないと個別の動機になりません。また、思いが強すぎて自分の経験や体験、意見ばかりを語ってしまうケースも見受けられます。

 

<一般メーカーの場合>

「私は大学3回生のとき、東南アジアでボランティア活動をしました。そこで、日本の製品がその国の生活を豊かなものにし、現地の人から高い評価を受けて感謝されていることを知りました。そんな日本の技術力を世界にもっと広めたいと思い貴社を志望します」

メーカーの志望動機でよく見られるパターンです。どんな製品のどんな技術なのか聞いても答えられず、応募先の企業とその技術力がどうつながるのかも分からない。これでは、留学先での感動体験を述べているに留まってしまいます。

 

<インフラ・エネルギー系企業の場合>

「私は社会貢献をしたいと思っており、そのような企業を探しています。貴社の○○という事業は、地域の人々の生活を豊かにするものだと思います。私もこのような事業を通して、地域貢献ひいては社会貢献できる人間になりたいと思い志望しました」

「社会貢献をしたい」という動機も非常に多く、これからの日本を背負って立つ皆さんの世代がそう思うことは頼もしい限りです。しかし、第2回でも述べたように、(民間)企業において社会貢献とは、利益を出して事業を継続しながら価値やサービスを提供することで生まれるもの。まずは、その企業の事業内容そのものに目を向けて考えてほしいと思います。

 

よくある志望動機の共通点

後悔しない就職活動のコツ「よくある志望動機の共通点」

こうした志望動機に共通して言えるのは、

  • 企業のことは最初の1〜2行程度のみ。後はほとんど自分の体験談がメイン
  • 企業のことはホームページや会社案内などを丸写し
  • 漠然とした表現(社会貢献、日本の技術力など)が多く具体性に欠ける
  • 「なぜそう思うのか?」と聞いても答えることができない=自分の考えを深められていない

ということです。これでは企業も「なぜわが社を志望するのか」「なぜその仕事を希望するのか」分からないでしょうし、「自分たちの会社でなくてもいいのでは」と思ってしまうでしょう。

 

企業と自分の接点はどこか

こうした志望動機がなぜNGなのか。それは、その人自身と企業の接点がほとんど見えないからです。会社のことも自分のこともある程度は述べていますが、そのつながりや関連性が具体的に見えてこない。企業としては「将来、活躍してくれそうだ」というイメージが持てないのです。

自分のことも会社のことも掘り下げ、どんな点で結びついているのか、きちんと説明する必要があります。先の製薬会社の例で言うと、以下の質問に対する回答と言えるでしょう。

「なぜ専門性の高い医薬品に関心があるのか」

「なぜMRを志望するのか」

「人の役に立つとはどういうことか」

「なぜその企業なのか」

例えば、大学で学んだ専門知識が活かせるのかもしれませんし、小さい頃の原体験があるのかもしれません。人のために努力したことが報われ、感謝されて嬉しかった経験があるのかもしれません。

いずれにせよ、過去の経験で手に入れたスキルや能力、あるいは自分の強みや特徴、価値観を活かせそうな要素がその企業にあり、何か結びついたことがあるはずです。そうした接点を自分で見つけてみてください。そこには、正解も間違いもありません。自分の思いや考えを素直に伝えようとすれば良いのです。

同時に、やはり「自己分析は大事なこと」と心に留めてください。なぜなら、このように自分を深めていくことで「自分の軸」が見えてくるからです。こうした軸についても企業から面接でよく聞かれる質問です。

また、以前こんな話をしてくれた学生がいました。

「自分の軸が見つかったら就活がとても楽になった。なぜなら、たとえ選考が通らなかったとしても、その会社と自分の軸が単に合わなかっただけだ、と思えるようになったから」

彼は有名企業数社から内定をもらい、自分で道を決め、今もその会社で活躍しています。就活中は、悩んでもがいて焦っていましたが、自分なりの「軸」を見つけようと一生懸命でした。皆さんも、ぜひ納得いくまで自分への理解を深める努力をしてください。

 

志望動機と企業研究について

後悔しない就職活動のコツ「志望動機と企業研究」

 企業研究と情報収集は別物!?

志望動機を考えるうえで、必要かつ重要になるのが企業研究です。「どうやればいいか分からない」という相談も多く、やはり「答え」を求める傾向があると感じます。

例えば、皆さんは、好きな相手のことをもっと知りたい、近づきたいと思ったときはどうしますか?きっと、いろいろな手段を使って調べたり、人に聞いたりするのではないでしょうか。そして、自分との共通点や意外な一面を発見して、気持ちが高まったり逆に残念に思ったりしますよね。企業研究も、基本的に、こうすべしという決まりはありません。自分が働く場としてどうなのか。そんな視点を忘れずにおこなえば良いのです。

しかしながら、学生を見ていると、情報収集だけをおこなって安心している人が多いように思います。例えば、社名や設立年月日、資本金や従業員数、経営理念や事業内容など、ホームページや会社案内などに書いてあることをただノートに書き写す……これが企業研究だと思っている人が多いのです。果たしてこれは研究でしょうか。こうした情報は誰もが目にする事実に過ぎません。あくまでも企業の情報収集であり、研究とは言えないのです。

 

情報をもとに想像する

では、研究とはどういうことでしょうか。先の例で考えてみましょう。好意を寄せている相手について何らかの情報を得ると、例えば、デートプランや会話の内容などを想像しますよね。もっと言うと、彼(彼女)と結婚したらこんな家庭になりそう……という未来までイメージするかもしれません。企業研究もこうした「イメージする」ことが大切です。

例えば、事業内容が物品販売という会社はたくさんあります。しかし、同じ販売でも高級ブランド品の販売と、100円均一ショップの販売では、求められるスキルや能力、人柄は異なります。

つまりその企業は、誰に対してどんな事業をどのようにおこなっているのか、そこで求められるのはどんなスキルや能力あるいは人柄なのか、ということを、情報をもとに想像してほしいのです。自分がその企業で働く姿をイメージしてみてください。

そして、自分が想像した通りかどうか、企業説明会やOBOG訪問を通して検証しましょう。「既存の得意先回りの営業と想像していたけれど、実際はアポなし営業もあった」という話はよくあるものです。このように、自分の想像やイメージと事実を刷り合わせていくことが、企業研究の一例になるのではと思います。

ホームページに書いてあることを鵜呑みにせず、自分の目や耳で確かめながら働く姿をイメージしてみてください。そして、その企業その仕事において、自分はどんな強みや人柄を発揮できそうか想像してみてください。志望動機が書けない理由の多くは、働く姿をイメージすることができていないからです。

 

企業はプレーヤーを求めている

もうひとつ気になるのが、褒め言葉の羅列で終わる志望動機が多いということです。「貴社の技術力は素晴らしいと思いました」「貴社の社風に魅力を感じました」「小さい頃から貴社の商品が好きです」「貴社の企業理念に感銘を受けました」など、褒め言葉の数々が並びます。

もちろん、そうした純粋な気持ちもとても大切なことですし、働くきっかけやモチベーションになっていることも分かります。しかしながら、読み手・聞き手である企業はどう受け取るでしょうか。もし私が企業の担当者だったら、ウチの会社の熱心なファンなんだなと思うでしょうし、そうして、また同じような“ファンレター”が届いたと苦笑いしてしまうかもしれません。

企業は、仕事で活躍してくれそうと期待できる人を採用します。つまり、単なるファンを求めているのではなく、働きながら自社のファンを増やしてくれる人=プレーヤーが欲しいのです。

志望動機を伝える上で大切なのは、主語は誰か、ということです。皆さんの志望動機の多くは、最初から最後まで「貴社は~」「御社は~」となっており、企業が主語になっています。そうではなく、「私は」どうなのかを伝えてほしいのです。本章の最初に述べましたが、そこに皆さんの意思や意欲が表れるのです。

自己分析や企業研究をした結果、その企業で働く姿をどうイメージしたのか、主語を「私」にしてしっかり伝えていきましょう。

 

おわりに

いかがでしたか?志望動機を書く際に必要なことを少しでもイメージできたでしょうか。志望動機に関する相談の多くは「書けません」「全部同じになります」「動機が分かりません」という3つに集約されます。こちらからすれば「動機も(書け)ないのに、よくエントリーできるなぁ」というのが正直な感想です。ところが「どうしてエントリーしたの?」と聞くと、それぞれきっかけや理由がきちんとあるのです。このように、「聞けば答えられる」けれど「聞かないと答えられない」というのも、今の多くの学生に共通している特徴であると言えます。

控え目と言えば聞こえは良いですが、受身な態度だなと思うこともしばしばあります。自分の将来のことを、もっと真剣に考えてほしい、自分で考え決めてほしいと思います。受身で決めた就職先では、やりがいも見つけにくく、モチベーションを高く維持して働くことは難しいでしょう。新卒で入社した社員の3割以上が、3年未満で辞めていく事実がそれを物語っていると思います。

本シリーズでは3回にわたり、それぞれのテーマと一緒に、

「就職活動は自分の将来のこと、自分自身のためのこと」

「正解はないので自分で考え、自分で決めていくことが大切」

というメッセージを皆さんにお伝えしたいと思いながら綴ってきました。仕事、つまり働くということは、一筋縄でいくものではありません。それでも、本当に多くのことを学ぶことができ、自己成長、自己実現のチャンスを与えてくれるものです。そのはじめの一歩が就活だと考え、皆さんも勇気を持って明るい気持ちで臨んでください。

 

そして、一人でやろうと思わず周りを巻き込みながらいろいろな意見を聞き、そうして最後は自分で決めていきましょう。皆さん一人ひとりが納得して就活を進められるよう、いつでもエールを送っています。

 

就活のキホンは「スケジュール管理」と「自己分析」から。後悔しない就活のコツ Vol.1

「自己PR」と「学生時代に力を入れたこと」の違いとは。後悔しない就活のコツ Vol.2

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