第2回 就活で存分に生かせる「聞く力」!質問することで、人に何が伝わるか
「聞く力」をテーマとした上阪徹さんによる連載、第2回は、”就職活動”で使える「聞く力」について。OB・OG訪問、説明会や面接など、具体的な場面を例に解説してもらいました。「質問する」上で、おさえるべきポイントも要チェックです。
OB・OG訪問で使える「聞く力」
コミュニケーション力というと「話す力」をイメージする人が少なくありませんが、実は「聞く力」こそ重要だ、という話を第1回ではしました。実際、就活においても「聞く力」は、とても重要な役割を果たします。
例えば、就活での重要なプロセスに、OB・OG訪問があります。どんな会社なのか、どんな雰囲気を持っているのか、実際にどんな仕事があるのか……。企業を理解するのに、とても有効な方法のひとつですが、訪問は基本的に学生からのアクション。先輩に会っても、具体的に何をすればいいのかわからない、という声もよく聞こえてきます。
ここで、最も力を発揮することこそ「聞く力」なのです。OB・OG訪問をしたら、先輩にどんどん聞いていけばいいのです。先輩は「学生だからなぁ」と気を遣って、いろいろ語ってくれるかもしれませんが、それではもったいない。企業の本当の姿を知るためにも、自分からいろいろと聞いていきたいものです。
では、OB・OG訪問で「聞く」ときには、何がポイントになってくるのか、考えてみましょう。
OB・OGは学生に何を期待しているか
「聞く力」で大切なことのひとつは、相手の立場に立ってみるということです。学生の訪問を受けた先輩の立場に立ってみましょう。どんな気持ちでしょうか。どんなことをしてもらえたら、先輩はうれしいでしょうか。
間違いなく言えることは、学生の皆さんにいろいろ聞いてもらいたい、ということです。少なくとも、自分の会社に興味を持ってくれている学生が来てくれたのです。これは先輩にとってはうれしいことなのです。ならば、その良さをもっと聞いてほしいと思っているはずです。だから、先輩にどんどん質問してみると良いでしょう。
そしてもうひとつ大切なこと、それは時間が限られていると気づくことです。先輩は仕事の時間を抜けて来てくれているのです。1時間なら1時間。その時間内で仕事に戻らなければいけない。となれば、時間通りに終えなければいけません。 時間通りに終えるために何が必要になるのか。それは、事前に準備をしておく、ということです。「当たり前」と思われる人もいるかもしれませんが、意外とできていない人が多いのも事実。その場の思いつきであれこれ聞こうとしても、実はそうそう出てくるものではありません。
また、言葉のキャッチボールをしていると、あっという間に時間が過ぎてしまいます。そのためにも、事前準備として、質問内容を考えておきましょう。
さらに、もうひとつ大切なこと、それは聞くことを楽しむ、ということです。せっかく先輩がしゃべってくれているのに、つまらなそうな顔や、上の空のように見えてしまっていては、しゃべるほうはとても残念な思いになります。どうして、この学生に話をしないといけないんだ、なんて思われるかもしれません。そのような誤解を生まないためにも、聞くことを楽しみ、きちんとリアクションをとることです。しっかり相手の目を見て話を聞く。うなずきをしっかりする。メモ帳を広げてメモを取る。こうした態度ひとつで、相手の話の内容は大きく変わってきます。ちゃんと聞いてくれていると思えば、もっといい話をしてやろう、と思うものなのです。
コミュニケーションをスムーズにする「聞き方」のコツとは
もちろん慣れない大人とのコミュニケーション。難しさもあるでしょう。よく聞くのが、どうにも場が盛り上がらなかった、という話。これには、ひとつの要因があると思います。準備段階での質問項目の作り方です。
私は仕事でインタビューをしていますが、必ず事前に質問を用意します。そしてそれだけではなく、どういう順番で聞いていけば、最も話がスムーズに流れるのかを考えます。
例えば、小学校の話から新入社員時代に飛び、30代の話になったと思ったら、大学時代の話に飛び……。なんてことでは、話すほうも混乱してしまいます。私はインタビューを受ける機会もあるのですが、実はこういうケースはよくあるのです。しっかり準備をしないまま、アトランダムにただ質問をしてしまう、では、いい「聞き方」はできません。
ヒントのひとつは、アトランダムに質問内容を出すのではなく、テーマを決めてしまうことです。
私は実際のインタビューでも、これをやっています。「会社について」「事業について」「仕事について」「社風について」「福利厚生について」「先輩の学生時代について」など。こうして出したテーマごとに、質問を考えていくのです。テーマを立てていると、時間配分もしやすくなりますし、「次は××のテーマで伺います」と伝えておけば、先輩も話しやすくなります。
もうひとつは、自分が聞いてみたいと思う質問の中で、その先輩にしか答えられない質問を必ずひとつは用意しておくことです。
例えば、その人自身の思いや、考え。「今の仕事の面白味はどんなところですか」「先輩の感じる会社の魅力はどんなものですか」といった具合です。会社のホームページを見ればわかるようなことや、その人でなくても答えられるようなことだけでなく、その先輩にしか語れない内容を聞き出すことで、自分ならではのOB・OG訪問になると思います。
説明会・面接での質問で相手に何を伝えるか
最近では、説明会や面接で質問を求められるケースも増えています。そんなときには、どんな「聞き方」が大切になるでしょうか。まずしっかり理解しておかなければいけないのは、質問とはメッセージである、ということです。
何のことか、と思われるかもしれませんが、質問を受けた側に「ああ、この学生はこういう人間なんだな」と受け止められてしまいかねない、ということです。
例えば、面接の最後に質問を問われて、福利厚生について尋ねたとします。「有給休暇はしっかり取れる会社ですか」と。たしかに聞きたい質問だったかもしれません。一方で、「私は××という職種を希望していますが、この職種の醍醐味はどのようなものでしょうか」と聞いた学生もいたとします。果たして会社からすれば、どちらの学生を採りたくなるでしょうか。どちらが、仕事にやる気がある学生と思ってもらえるでしょうか。
最近では、「就活カフェ」にいろんな会社のリクルーターが来ていることも少なくないようです。リクルーターからいろいろと話しかけられるかもしれませんが、お勧めするのは、ぜひ思い切ってこちらからリクルーターへいろいろ質問してみることです。なぜなら、それはそのままリクルーターへのメッセージになるからです。
自分から何かを主張しているわけではないのに、前向きな質問を投げかけることで、「お、この学生はウチの会社に興味を持ってくれているぞ」「この学生は仕事に対して意欲的だな」「学ぶ姿勢が強いんだな」という受け止め方をしてもらえる可能性が高いのです。それこそ、「聞く力」によって、印象をアップできる、ということなのです。
ただ一方的に自分のアピールをするだけが、相手からの好印象につながるわけではありません。みなさんも、自分にいろいろ質問してくれる人と、一方的にまくし立てる人と、果たしてどちらが好印象を持つでしょうか。「聞く力」には、そんな力も潜んでいるのです。
次回、第3回は、「聞く力」を高めるために学生時代から始められること、についてお届けします。
※本記事の内容は筆者個人の知識と経験に基づくものであり、運営元の意見を代表するものではありません。
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第3回 「聞く力」を高めるために学生時代から始められること
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第1回 面接も仕事も良い「質問」から プロインタビュアーに学ぶ「聞く力」