自己PRの書き出しに迷ったら 一歩先行くコピーライティングのテクニック
就活の自己PR文、悩みますね……。
特に、どんな書き出しにするか悩んでしまう方が多い。そんな話をよく耳にします。自己PR文ではないですが、実を言えばサイエンスシフト編集部員も、いつも書き出しには苦労しています。
転職の自己PR文は具体的なエピソードがあり比較的書きやすいと思いますが、新卒の方は暗中模索、難易度がさらに上がります。
というわけで、主に新卒の方向けに、本サイトの編集部員・運営スタッフの知恵を集結して、古今のプロフェッショナルの文章の書き出しに関する知恵をまとめてみました。おそらく「正解」がない類のテーマだと思いますが、少しでもみなさんの参考になれば幸いです。具体的なアイデアの出し方もありますよ!
まずは基本を押さえておく 自己PR文の書き出しの基本
就活情報サイトには、すでに自己PR文の書き方がいろいろ掲載されています。まずはその中から、書き出し部分に関するエッセンスをまとめてみましょう。どれも重要な指摘で、参考になります。
- 読む側のことを考えて書く
- ⇒応募者の強みを知りたい
- ⇒応募者の人柄を知りたい
- どんな人か?
- そのニーズは?
- 結論から述べる
- 説得力を増すために、具体的なエピソードを織り込む
- その自己PRポイントを、どう仕事へ生かすつもりかを織り込む
- 短い言葉で言い切って、強い印象に
- だれにでもわかりやすい文章にする
- ベタな文章、紋切り型の表現を避ける
- ウソをつかない
これらのアドバイスに従うとすれば(すべてを満たすのはなかなか困難ですが)……、
「わたしは我慢強い性格です。」
「わたしの強みは忍耐力に優れていることです。」
「物事を粘り強く進められるところを、仕事に生かしたいと考えています。」
……などとなるでしょうか。ひとまずこれを(仮)として置き、後から、以下に述べていくような「一歩先行く」を試してください。
とはいえ、それも書けない、と考えてしまう方も多いでしょう。その場合は、そもそも自己PR文に何を書いたらいいのかわからない、というケースかもしれません。書き出しに取り組む前に、まずは以下の記事からご覧ください。
あなたにとって「自己PR」とは? 就活基礎講座
https://scienceshift.jp/blog/basic-of-job-hunting/就活生よ、それは「自己PR」ではない 相手の視点で考える
https://scienceshift.jp/blog/point-of-about-myself/企業は就活生の「自己PR」に何を求めているのか? マイクロソフトNo.1のプレゼンター澤円氏が語る就活の要
https://scienceshift.jp/blog/key-point-of-job-hunting/「自己PR」と「学生時代に力を入れたこと」の違いとは。後悔しない就活のコツ Vol.2
https://scienceshift.jp/blog/job-hunting-02/コピーライターから学ぶ、強いコトバの作り方
ここから、より効果的な書き出しについて、具体的に考えていきます。
まずはやはり、広告のコピーライターの技術が参考になりそうです。コピーライターは、世にあふれるテキスト情報の中でも、人の目をひく、ひときわ輝くコトバを作る人たちです。特に上記の基本ポイントにある「ベタな文章、紋切り型の表現を避ける」に効きます。
「強いコトバを作るのに使える、誰でも使えるレシピがある」と言い切るのは、広告賞を受賞したり作詞家としてアワードを獲得したりもしている、佐々木圭一氏です。
その技法の中から「赤裸々法」をご紹介します。赤裸々法とは、その名の通り、リアルな心情をリアルな言葉で吐露してしまう方法です。事務的で無味乾燥になりがちな自己PR文に人間味を加え、読み手の興味をそそります(やり過ぎは禁物ですが)。
「私は粘り強い性格らしい」。そう気付いたのは、とても難しいグループワークに取り組んでいたときのことでした。
この他の技法も、またその基礎になっている考え方も重要なものだと思いますので、ぜひご覧になってみてください。
「セールスライター」の知恵を盗む
セールスライターとはあまり使われない言葉ですが、広告の本場アメリカでは重要な職務です。DMなどの文章を書く人を指します。つまり、その文章のデキが売上を左右する、ということです。その知恵は、こんな本にまとまっています。
その中から、自己PRの書き出しに使えそうな部分を抽出してみましょう。
- 相手の利益になることを文章に
- 読者の好奇心をかきたてる
- ??と感じさせる要素を入れ込む 等
これを応用すると……、
私の粘り強さは、貴社の事業に必要なものではないか、と考えています。なぜならビジネスの交渉は一筋縄ではいかないもので……
これは基本ポイントにある「読む側のことを考える」に対応します。読み手は、「自分のことだけを考えているのではなく、読み手のことを考えている、伝えようとしている」と思うはずです。
「ランダム刺激」を使ってアイデアを得る
「ランダム刺激」とは、雑多なものごとから刺激を受け、これを発想につなげる方法です。
約800ページの分厚い『独学大全』が異例のヒットを続けている読書猿氏。その『アイデア大全』で紹介されている方法です。あのニュートンが、リンゴが落ちるのを見て万有引力をひらめいたとうエピソードがわかりやすいでしょうか。つまりたまたま目にしたリンゴが、ランダム刺激だったわけです。
例えば、図書館に行って、雑誌のキャッチコピーや書き出しを眺めてみてはいかがでしょうか。その中に、ご自身の自己PRに借用できる言葉があるかもしれません。編集部員Yが実際によく行っている方法でもあります。(本当の意味で「ランダム」とは言えないかもしれませんが……)
大学生活で、ぶあつい粘り強さが身についたと考えています。なぜなら……
※とあるゴルフ雑誌にあった「分厚いインパクト」という言葉をヒントにして
これは「強い印象」にすることと、「ベタな文章、紋切り型の表現を避ける」というポイントにつながります。単に「粘り強さ」とあるより、ずっと真に迫った印象が出ると思います。
「地図」。テレビのニュース原稿のわかりやすさを採り入れる
ニュース原稿は、分かりやすさをとにかく重要視します。そしてその冒頭は常に「地図」です。
地図といっても比喩的なもので、つまりこれから話すことをシンプルにまとめたものです。例を挙げれば、下記のようになります。
「昨日13日、○○○で□□□□サミットが行われました。主要7カ国の首脳が集まり……(以下、より具体的な内容を挙げていく)」
これが冒頭にあるだけで、「あ、これからサミットについて述べるんだな、これからこういう話が来るんだな」と理解でき、その後の情報を飲み込みやすくなります。
この技術については、テレビなどでおなじみの池上彰さんの本にまとまっています。
ここから学ぶとすれば、まず自己PR全体の内容を箇条書きにして整理し、それらをひとくくりにする文章から始めてはいかがでしょうか。結果として、「結論から述べる」「だれにでもわかりやすい文章にする」ことになります。
私が自分のことを粘り強いと考える3つの理由と、これをどう生かしたいかを述べます。
補足・上級編:「レトリック」という古典的学問を掘り起こす
レトリックとは、ギリシャ時代からの伝統的技能です。弁論術とするとわかりやすいでしょう。話すことによって誰かを説得したり、感銘を与えたり、自分の意見を聞き入れてもらったり……ということを目指す技術です。
話す、と書きましたが、これはその後の「書く」「伝える」ことの土台になっています。おそらく就活サイトにある自己PRの書き方も、またコピーライターの技術も、これが源流です。つまり、より上級編・原則としての「伝える技術」です。
このテーマについては、ハーバード大学の必読図書トップ10にも選ばれているという、下記の一冊が参考になります。
ひと言で言えば、あらゆる実用的な文章表現に使える「土台」です。就活でも論文でも、また日々のスマホでのメッセージのやりとりにも生かせる知恵です。さらに一段上の伝える技術を追求したいかたは、手に取ってみてはいかがでしょうか。
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残念ながら、この通りにすればいい、という文章を提示することはできません。なぜなら、価値観が異なる皆さんの自己PRが同じになるはずがなく、紋切り型の自己PRの書き出しを挙げたとしても結果を保証することができないからです。結果を保証することができない以上、むしろ「こうしなさい!」と言い切るのは不誠実だと思います。また、技巧にこだわるのは「痛い」かもしれません。
しかし一方、誰かに何かを伝えるということは、仕事の基礎の基礎でもあります。名コピーを書くとか飾り立てるとか、そういうことではなく、きちんと伝えるために考える。踏み込んで伝え方を考える。それは間違いなく自己PRにとどまらず未来につながる行動なのではないでしょうか。