製薬業界を知る

2019/03/29

84.175。

これが何の数字が分かりますか?

これは現在の日本の平均寿命(2017年現在)で、男女の平均を取ったものです。

厚労省が公開した「平成29年簡易生命表」によれば、日本人の「平均寿命」は過去最高を更新して、男性は「81.09歳」、女性は「87.26歳」と発表されています。また2025年には、現在約800万人いる団塊の世代(1947~49年生まれ)が75歳(後期高齢者)を迎え、現在1500万人程度の後期高齢者人口は、その頃には約2200万人まで膨れ上がり、実に全人口の「5人に1人が後期高齢者」という超高齢化社会となります。こうした超高齢化社会の中で医療業界にどういったことが求められているのかをご紹介します。

 

急がれる地域包括ケアシステムの構築

第二次世界大戦後の直後の1947~1949年の間に生まれた第一次ベビーブーム世代である「団塊の世代」。現在約800万人もいるこの世代が、2025年には75歳以上になり、反面出生率の低下に伴い、日本の医療費が圧迫されることが確実です。

後期高齢者の生活を支えるのには、医療と介護の両方が不可欠です。しかし現状でさえ救急医療を中心に医療従事者への負担は増加。医師不足という大きな加害を抱える中で、今後の医療費不足も伴い、このまま何も手を打たなければ日本の医療は崩壊してしまいます。そこで政府が推し進めようとしているのが「地域包括ケアシステム」です。

2000年からはじまった介護保険制度。この制度により昔のように家族にだけ介護の負担を強いることはなくなりました。しかし、高齢化とともに少子化が進み、税収が減少して社会保障費が予想以上の速さで増大しています。そのため介護保険や医療保険などの公費だけで高齢社会を支えるのは無理が生じてきました。

そこで国は、医療と介護を病院などの施設で行うものから、在宅で行うものへと切り替え、地域の人たちが相互につながることで安全と安心を確保していく「地域包括ケアシステム」の考え方を打ち出しました。

地域包括ケアシステムは、各市区町村がその地域の特性に応じて創り上げていくものです。そのための構成要素を厚生労働省では次の5つとしています。

 

1.医療と介護の連携

24時間対応の在宅医療、訪問介護やリハビリテーションの充実。介護職員による、たんの吸引など医療行為の実施を可能とすること。

2.介護サービスの充実強化

特別養護老人ホームなどの介護拠点の緊急整備。24時間対応の定期巡回、随時対応サービスの創設など、在宅サービスの強化。

3.予防医療の推進

できる限り要介護状態にならないための、健康づくり、保健衛生面でのサポートなど、予防の取り組みや自立支援型の介護の推進。

4.生活支援サービスの確保や権利擁護

見守り、配食、買い物など、一人暮らしや高齢夫婦のみ世帯の増加、認知症の増加を踏まえ、さまざまな生活支援サービスを推進。

5.高齢者住まいの整備

高齢者の住まいの確保、賃貸住宅入居時の保証人の確保、空き家の活用など

このように、地域包括ケアシステムでは、医療、介護、予防という専門的なサービスとともに、その前提となる住まい、生活支援・福祉サービスが連携し、高齢者の在宅での生活を支えることを前提としています。

 

 

地域医療構想で質の高い医療を届ける

地域包括ケアシステムとともに、2025年に向けて病床の機能分化、連携を進めるために、医療機能ごとに需要と病床の必要量を推計し、定めるものが「地域医療構想」です。

 

具体的には病床の機能の分化と連携を推し進めることになります。現状では多くの病院で急性期病床をはじめ多くの病床が過剰に供給されています。高齢化に伴い必要となる回復期病床が不足している状態です。このまま病床機能の再編が進まなければ、患者の状態にあった病床機能が不足することになってしまいます。このため「地域医療構想」を推し進め、急性期の入院病床を絞り込み、亜急性期や回復期の病床を拡充。さらには退院支援、療養生活の支援を充実させ、在宅移行が可能な患者をできるだけ在宅医療に移行させることを目指しています。

 

 

ビッグデータを活用したデータヘルス事業

データヘルス事業とは保険者が保有するレセプト(診療報酬明細書)や特定検診・特定保健指導などの情報を活用し、加入者の健康づくりや疾病予防、重症化予防につなげるものです。

 

増加する国民医療費や後期高齢者医療費など医療を取巻く環境の中で、日本の医療制度を保ち、医療費抑制し、国民の健康寿命を伸ばすためには、臨床データを用いた健康管理および健康指導が必要とされています。

2013年の6月に閣議決定された「日本再興戦略」において、全ての健康保険組合に対し、レセプト等のデータの分析、それに基づく加入者の健康保持増進のための事業計画として「データヘルス計画」を作成・公表、事業実施、評価等の取り組みを求めることが盛り込まれました。

データヘルス事業の特長としては、「データの利活用により、保健事業の効果が高い対象者を抽出し、その対象者および他の加入者に全般的・個別的な情報提供を実施、費用対効果を追求した保健事業を実施する」ことなどが挙げられています。これにより、効果的・効率的な健康状態の把握と指導実施が可能となり、また個別の情報提供等により、国民一人ひとりの健康に対する理解と、予防や非重症化などに対する自発的な行動への効果が期待されています。

 

数量シェア80%を目指すジェネリック医薬品

ジェネリック医薬品は、後発医薬品とも呼ばれ、「新薬(先発医薬品)」の特許が切れたあとに販売される、新薬と同じ有効成分の薬です。

先発医薬品に比べて薬価が安い後発医薬品(ジェネリック医薬品)の普及は、増え続ける医療費の抑制につながるほか、患者の経済的な負担の軽減にもつながります。

そこで厚生労働省は平成25年に「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」を策定。平成27年6月ではジェネリック医薬品の数量シェアを平成29年に70%以上とするとともに、平成29年6月では「平成32年9月までに、後発医薬品の使用割合を80%とし、できる限り早期に達成できるよう更なる使用促進策を検討する」と定め、ジェネリック医薬品の使用促進のため積極的に取り組んでいます。

 

 最後に

このように後期高齢者が増える2025年を前に、業界は急速に変化の兆しを見せています。大きな課題を抱えるとともに、待ったなしで大胆な対応が求められる医療業界。今回ご紹介した業界動向だけでなく、今後はテクノロジー・医療技術の飛躍的な進歩とともに、新しい技術・製品開発、それらを支援するサービス・製品も増えてくることが予想されます。変化にあふれ、やりがいにも満ちた医療業界。もしこの業界で働くことを考えるなら、現時点で課題やトレンドを押さえ、ポイントをつかんだうえでの対策が、将来の仕事選びにも役立ちます。

 

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SCIENCE SHIFT編集部

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