未来を考える

2019/02/28

「面接でよくある質問の回答例30」「就活の面接対策はこれでOK」など、就職活動を進める際に皆さんも参考にしているであろう就活マニュアルサイト。そこにある回答例を自分の場合に軌道修正して、面接で聞かれた質問に応じて答える。流暢にうまく話せたらとりあえず成功。そんな風に思っていませんか? そして、それがとても勿体ないことに気づいていますか?

今回は新しい就活の形として「就活ゲーム」を構築し、『内定力』(すばる舎)に著している光城悠人氏に、マニュアルに頼らない就職活動が学生たちに必要とされている理由をお伺いしました。

「下手な能の発表会を見てるみたいですよね……」

数年前、大学で学生向けに面接対策セミナーをしていたときのことでした。

ひと通り学生たちの面接を終えて、隣に座っていた通販会社の面接官の方が私に発したこの言葉が、今でも印象に残っています。

 

「能」というのは、もちろん日本の伝統芸能の能のことです。

何百年という歴史を経てきた芸能と、ここ数十年で社会に浸透してきた就活を比べるのは失礼な話ではあるのですが、それこそ学生たちの面接での振る舞いは、まるで何かしらの「型」があって、いかに「型」通りに上手に振る舞うかを意識しているかのよう。

その所作は自信なさげで、動きを一つひとつ確認しながら動いているようで、むしろ面接を担当するこちらまで緊張してしまうくらいに、ぎこちない…。

まさに「下手な能の発表会」という言葉が言い得て妙だったんです。

 

「就活病」にかかった学生たち

今の就活を見渡すと、そうした「型」に縛られている学生ばかりに出会います。

自己PRや志望動機ではこういうエピソードを話すべき、面接ではこういう点をアピールすべき、マナーはこうで、スーツや髪型も「リクルートスタイル」じゃなければいけない。

そうした面接の「型」のようなものが当たり前とされて、内定をとるためには、その「型」を忠実に実行しなくちゃいけない。

 

そうした「型」に縛られて、本質からズレて、変なルールに合わせてしまう状態のことを、私は「就活病」と呼んでいます。自己分析に業界研究、OB訪問にインターンシップ、マナーや髪型、スーツに証明写真……、本来は就活の本質から遠いものでありながら、「就活なんだから」とそれに合わせなくちゃいけないと思い込んでしまう病気

学生のほとんどが、そんな就活病にかかってしまっています。

そんな「就活病」から抜け出して、企業が本当に知りたいことや求めていることに適切に応えてこそ、就活は有意義なものになるはずです。世の大部分の学生たちが就活病にかかっている状況の中で、その集団から抜け出すのは、実はとても簡単です。

 

その方法は、大きく2つ。

ひとつは、「おっさんに慣れる」こと。

そしてもうひとつが、「欲求を伝える」こと。

それだけです。

 

いわゆる「就活の常識」と比べると、あまりにもざっくりしすぎていて違和感があるかもしれません。ただ、これは私が何年もかけて学生たちに実践してもらった結果として、失敗確率がもっとも少ない(=成功確率が高い)方法論です。

 

「話し方」が変わるだけで、面接通過率が激変。

まずは「おっさんに慣れる」こと。

「おっさん」と言ってしまうと誤解があるかもしれませんが、つまりは年齢や価値観や育ってきた環境が異なる人。そんな人とのコミュニケーションに慣れていない。ほとんどの学生は、「おっさん」に慣れていないんです。

それで、面接では「ワタクシは」と言って、「貴重なお話」とか言って、「お伝えしたいことは3つ!あります」と言って、とりあえずノックの回数やお辞儀の角度さえ学んでおけば失礼にならずに済む。それで、マニュアル的なものにすがって、リスクを減らそうと考えてしまう。

でも本来、就活って、自分の生き方を決める活動のはずです。

企業にとっては、これから一緒に働きながら、自社や顧客にとって価値を生んで活躍してくれる人かどうかを判断する活動なんです。

そんなお互いにとって大事な機会に、表面的な「型」でどうにかしようとするのって、もったいないと思いませんか。

「型を捨てて、普通に話せる」だけで、企業の評価は激変します

 

たとえば有名人のインタビューを想像してみてください。

アスリートやアーティストが、テレビや雑誌で話しているようなイメージです。

そうしたインタビューの場面で、もし彼らが「はい! ワタクシがこの試合に備えて準備してきたことは、3つあります!」、「今回のアルバムに込めた想いは、人を愛する心と生きる力の2点。以上です!」と話していたら、あまりに不自然ですよね。

就活の面接も同じです。

変に肩肘を張らず、「面接官vs学生」と考えるのではなく、同じ人間として対等に話をする。面接を「面接だと思ってしまう」ことで、誤解やコミュニケーションの齟齬が生まれてしまうわけです。それよりも、あくまでも面接は「インタビューだと捉える」ことで、より自然な会話になるはずです。

 

それこそ私が関わってきた学生でも、何度も私と相談を重ねて自己PRも充分に納得のいくものができたのに、実際に面接に臨んでみると、10社受けて、20社受けても一次面接さえ通過しない…。そんな学生がいました。

そこで面接の練習として、実際の面接の雰囲気と同じように話してみてもらったところ、まさに「就活病」というほどに堅苦しく、用意した言葉をそのまま話し、質問には型通りに回答するという、紋切り型の受け答え。普段のその学生とはまったく違う雰囲気だったんです。

そこで、話す内容は全く変えずに、話し方のみを変えることを意識するようアドバイスし、面接に臨むようにしました。すると面接の通過率は一気に上昇。評価が激変したのです。マインドの変化に伴い、より自然な会話が続くようになった結果でしょう。その後この学生は1か月後には第一志望を含めた2社から内定を取りました。

 

面接というのは、たったそれだけで変わるものです。

「おっさん」との会話に慣れているかどうか。

変に「型」に縛られずに、自然体で話せるかどうか。

それだけで、相手の印象は変わり、伝わり方が変わるものなんです。

 

「欲求」がわかるから、人がわかる。

もちろん話し方だけで、相手の信用を得られるとはかぎりません。

あくまでも、企業が求めているのは「自社で活躍してくれそうかどうか」です。

それを判断するための材料を提供してこそ、相手を納得させられる。

 

だからこそ、そこで必要なのが、「欲求を伝えること」です。

一般的な就活アドバイスでは、面接や自己PRでは自分の能力やスキル、経験や成果、実績をアピールすることが大事だとされています。もちろん直接的にそうした質問を投げかけてくる企業もあります。

ただ、ここで何よりも大切なのは、企業は能力やスキルそのものや、成果や実績の大小によって評価を下しているわけではない、ということです。

考えてみれば当然の話で、学生が自己認知をしている能力やスキルがあったとして、それがそのまま社会で通用することはほとんどありません。成果や実績があったからといって、入社後に同じ成果や実績を求めるわけではありません。「空手の世界チャンピオン」だとしても、「アルバイトで経営改善をして、売上の前年比20%アップ」だとしても、「では入社後に、もう一度チャンピオンに」、「当社の売上を同じように」ということが求められたりはしませんよね。

彼らは彼らで、実はその奥に「本当に知りたいこと」があるわけです。

ただ、それをいきなり聞いたとしても、学生たちは必ずしも的確な答えを返してくれるわけではないので、そうした話題を切り口としているわけです。

 

そして、その「本当に知りたいこと」というのが、学生の皆さんの「欲求」です。

 

どういうことかというと、「成果や実績」が生まれるためには、何かしらの「スキルや能力」が必要です(もちろん運の要素もあります)。そして、そのスキルや能力は、過去の「行動や事実」の積み重ねによって身につくものです。

さらにそうした行動や事実を積み重ねるには、本人が何かしらの「考え方や思考」があって、何をするか、どう動くか、何をやって何をしないかといった判断が必要になります。その考え方や思考の根本にあるのが、「欲求や感情や動機」です。

 

魅力も強みも、「欲求ありき」のストーリー。

身近な例として、映画やマンガや小説の主人公たちに、私たちが共感したり感動したりするのはなぜでしょう。

それは、彼らの「欲求」が見えるからです。

登場するキャラクターはそれぞれの欲求があり、その欲求に突き動かされて、さまざまな判断や行動をします。そこに欲求がなければ、もしくは欲求が見えにくければ、彼らがなぜそこまで動くのか、何を目指しているのかがわからず、共感は生まれにくくなります。さらにいえば、彼らの魅力や強みは、常にそうした欲求や感情や動機に根ざしています。

私たちが、ストーリーや物語にハラハラしたり納得したり、ヤキモキしたり感動したりするのは、すべてそこに彼らの欲求や感情が見えるからなんです。

それは就活の面接でも同じで、その根本としての欲求を伝えること、欲求や感情が「伝わること」が、自分を理解させるためのポイントです。

 

成果や実績、能力やスキルは「結果」であり、その「原因」にあるのは欲求や感情です。

それこそ一時の成果や実績と比べて、過去20年間で繰り返してきた欲求や、欲求を抱いたときの動き方は、どちらが「再現性が高いか」という話でもあります。

だからこそ「どんな欲求」によって、「どんな考え方や動き方をする」人なのかを伝えるほうが、能力やスキル、成果や実績を伝えること以上に、より根本的かつ再現性の高い「自分らしさ」であると言えそうです。

 

「どんな人」として憶えられたい?

ここまでの話をまとめましょう。

・型にハマった就活をやめよう。

・おっさんに慣れて自然な会話をしよう。

・自分の欲求を伝えよう。

これが、「下手な能の発表会」から抜け出す方法であり、企業が求めていることでもあり、本当の自分をわかって、社会人として活躍していく方法でもあります。

たとえば、「世界最高の経営思想家」とも呼ばれたピーター・ドラッカーという人が、こんな言葉を残しています。

 

『私は、いつも「何をもって憶えられたいか」を自らに問いかけている』

 

みなさんはどうでしょう。

少なくとも、就活の面接で「どんな人」として憶えられたいでしょうか。

就活の常識と言われる「型」に縛られ、面接官(おっさん)に畏縮して、学生レベルの能力や実績によって憶えられたいでしょうか。もしくは、型から抜け出し、自分を自由に表現して、強い欲求によって期待される人として憶えられたいか。

ぜひ就活病を治して、本当の自分らしさで社会から求められ、価値を生み出す人になっていただければ、と思います。

「考えるプロ」による、アタマの使い方・いちばんたいせつなトコロ
タグ一覧 就活
記事一覧へ
光城悠人

立命館大学卒業後、エン・ジャパン(株)に入社。営業・ライター・クリエイティブディレクターとして7年間従事。退職後に、学生が新しい価値観に出会えるコミュニティの実現を目指し、2008年に京都で猿基地を開業。年間を通して学生とかかわる中で、「8キャラ」や「ぼうけんの書」などを活用した新しい就活の形として「就活ゲーム」を構築し、『内定力』(すばる舎)に著している。公式ブログ:『楽しく、気持ち良く、適当に。』

関連記事