未来を考える

2020/10/05

「競争」よりも、「助け合い」や「社会貢献」を重視。

これは2020年入社の新入社員に行った意識調査で、有意に見られた傾向です。他にも「お互いの個性を尊重したい」「自発的に行動したりチャレンジしたりすることが苦手」といった興味深い回答が見られました。

同調査を分析したリクルートマネジメントソリューションズ研究員・小松苑子さんに、現代の新入社員のリアルな意識と、その背景にあるものを聞きました。

 

取材協力:
リクルートマネジメントソリューションズ ソリューション統括部
HRD事業開発部 研究員
小松 苑子さん

人材派遣会社にて営業職を経験後、新人・若手社員の教育体系の構築、研修の企画・運営、ナレッジマネジメントを行う。2017年にリクルートマネジメントソリューションズに入社し、主に営業職、新人・若手社員領域のトレーニングの企画・開発に携わる。

 

合計約2000人の新入社員に意識調査を実施

 
──今回取り上げさせていただく2020年の新入社員への意識調査について、簡単にご紹介ください。

小松:弊社は、経営・人事課題の解決と、事業・戦略の推進を支援するリクルートグループのプロフェッショナルサービスファームです。事業の一つとして、新人や若手社員の育成を支援する事業を手掛けています。2020年3月2日~5月14日に、弊社の新入社員向けeラーニングサービスである「ビジネスマナー」や「ビジネスパーソンの基本行動とスタンス」の受講者1680名に対し、仕事に関する意識調査を行いました。

また2020年3月24日~4月2日に、全国各地で開催した新入社員導入研修「8つの基本行動」の受講者350名に対しても、意識調査を行いました。今回ご紹介するのは、その2つの調査結果から見えることです。

 
──調査結果で印象的だったものを教えてください。

小松:まずは『仕事をする上で重視すること』という質問に対し、「成長」と「貢献」が2大キーワードとして挙がったことです。特に印象的だったのが「貢献」の方でした。これは上の世代とちょっと違うなと感じました。

引用:2020年 新入社員意識調査(リクルートマネジメントソリューションズ)

貢献を紐解くと、「社会的な責任」「社会的な貢献」といったニュアンスが強いことがわかります。人材開発に関する世界最大の国際会議であるATD(Association for Talent Development)の2020年会議では、アメリカ国内における以下のような調査結果が紹介されました。

 

報酬や地位よりも、社会的責任を重視

小松:その調査では、ミレニアル世代(※1)の75%が、社会的責任を果たす企業で働くことを、高い報酬や社会的地位を得ることより優先したいと答えました。また彼らより若いZ世代(※2)の82%が、社会的責任をきちんと掲げる企業が好きであると答えています。このように業績や地位よりも、その組織や人員が社会に対して貢献していることを重視するという傾向が、ミレニアル世代やZ世代ではっきり見られます。

そして日本においても、これと同じような傾向が見られます。

※1 主に1981年以降に生まれ、2000年以降に成人を迎えた世代
※2 1990年代中盤以降に生まれた世代

 
──その世代が社会的貢献を重視するのはなぜでしょう?

小松:日本に関していえば、彼らが育った時代背景が、1つの要因になっていると考えます。経済的な豊かさや少子化により、一人ひとりに教育が行き届きやすかった。また、多様性を重視する“ナンバーワンよりオンリーワン”といった教育方針が採られた。だから、競い合うことをあまり求められてもこなかった。

もう1つこの世代で無視できないのが、東日本大震災や9.11など大きな災害や紛争・分断を、成長段階で目の当たりにしてきたことです。それにより物質的・経済的な豊かさよりも、人の本質的な幸せへの関心が高まり、それが結果的に社会をよりよくしたいという欲求になって表れているのではないでしょうか。

同じく『仕事をする上で重視すること』の質問に対し、「競争」「ビジョン」「金銭」「仕事以外」「創造」「達成」といった項目が、該当者10%以下の下位に位置しているのも、2020年の新入社員の特徴です(図1)。

 

互いに助け合い、個性を尊重し合いたい

 
──また、『あなたはどのような特徴を持つ職場で働きたいですか』の質問に対し、「お互いに助け合う」と答えた人が10年前より20ポイント増えて68%に、「お互いに個性を尊重する」と答えた人が10年前より14.7ポイント増えて41.7%に達していることも印象的です。

引用:2020年 新入社員意識調査(リクルートマネジメントソリューションズ)

小松:一般的にこの世代は前述の通り個性を尊重する教育を受ける一方で、罰として運動場を走るというような不条理なことはあまり課されていません。また学校・遊びの両方で、失敗や怪我をしないよう手厚く干渉されてきました。加えてテレビゲームなど、自分でゼロから考える必要のない受動型の遊びや、自分の欲しい情報にすぐアクセスできるインターネット、フォローし合って情報をシェアするSNSに、ものごころがついた時から接してきました。

そうした背景もあって、競い合ったり鍛え合ったりする関係よりも、互いにシェアしたり、助け合ったり、個性を尊重することに高い興味関心を持つようになったのではないでしょうか。個性に関しては、多様性に高い関心が向けられる近年の社会動向にも、多分に影響を受けていると思います。

 
──他にはどんな特徴的な調査結果がありましたか。

小松:弊社が新入社員研修で「大切にしたいビジネスパーソンの行動や姿勢」として挙げる6つのスタンスについて、それぞれ『得意』『あまり得意ではない』『今後意識的に取り組みたい』の中から1つを選んでもらったところ、『あまり得意ではない』と『今後意識的に取り組みたい』の上位に「試行」と「自発」の2項目が入ったことです。

引用:2020年 新入社員意識調査(リクルートマネジメントソリューションズ)

 

「はみ出している」と思われるのが怖い

小松:また『あなたが社会人として働いていく上で大切にしたいことは?』という質問を見てみても、「新しい発想や行動で、職場に刺激を与えること」「失敗を恐れずにどんどん挑戦すること」「何事も率先して真剣に取り組むこと」といった選択肢が、近年ポイントを減らしています。

引用:2020年 新入社員意識調査(リクルートマネジメントソリューションズ)

これらをふまえると、失敗を恐れずに新しいことに自ら挑戦したり試したりすることへの重視度は、以前より低くなっているといえます。その反面、今の新人社員は「自発」や「試行」のスタンスが、意識すべき大切なことであるとも捉えています。

その背景の1つには、異端になることや、コミュニティの秩序から逸脱することに対する恐れがあるのではないでしょうか。何か突飛な行動をしていると見られることに、非常に恐れを抱いている。とはいえ、自発的に動くことや、試行錯誤することの大切さも認識している。「わかってはいるけど、なかなかできない」というのが実情なのだと思います。

 
──では、この世代が得意なのはどんなところでしょう?

小松:今回の調査項目と直接はリンクしていないのですが、新入社員研修などを見ていて思うのは、プレゼンテーション能力がすごく高いなということです。資料をベースに自分の伝えたいことのサマリーをスムーズに、とぎれることなく、きれいに伝えられる。私が仕事で関わる企業さまからも、「最近の若手は本当にプレゼンがうまい」という話を、ここ数年よく聞きます。

 

“感じやすさ”と“息苦しさ”が表裏一体に

 
──プレゼンがうまいのはなぜでしょうか。

小松:就職するまでの間にプレゼンをする機会が多く、慣れているというのが大きいのではないでしょうか。大学のゼミで研究成果をプレゼンしたり、企業へのインターンで学んだことをプレゼンしたり。あとは就職活動の選考の一環で、グループワークをしてその結果をプレゼン形式でアウトプットするといった機会が多いのも、この世代の特徴です。

それともう1つ、この世代で非常に長けているなと思うのが、「感じ取る力」のようなものです。

 
──感じ取る力とは?

小松:「相手にこれを言って大丈夫かな?」とか、逆に「この人、何か自分に対して言いたいことがあるのかな?」といった心の機微のようなものを察知する能力です。その力が本当に高いなと。

それは裏を返すと、やはり「はみ出したくない」という欲求の表れでもあると思います。自他の言動に敏感になることで、自分はコミュニティの基準から外れていないかな? と常にセルフチェックをしている。

それが行きすぎると、周りの視線や意見が気になって思うように言動できなくなったり、創造性を発揮できなくなったりもします。そのように“感じやすさ”と“息苦しさ”を表裏一体で抱えている点も、この世代の大きな特徴の1つだと考えます。

※リクルートマネジメントソリューションズによる2020年新入社員意識調査レポートはこちら

では、こうした現代の若者の特徴をふまえたうえで、どのように就職活動や仕事を行っていけばいいのでしょうか。いよいよ以下の記事で、その点をじっくり紹介します。小松さんから挙がったのは、「自律」というキーワードでした。

人材開発のエキスパートに聞く、“大変な時代”に就職活動&就職する人がもつべき戦略とスキル

※本記事は取材により得た情報を基に構成・執筆されたものであり、運営元の意見を代表するものではありません。
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SCIENCE SHIFT編集部

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