スキルを磨く

2021/08/17

時間管理術 (日経文庫)』(日本経済新聞出版)著者の佐藤知一さんの連載第二回をお届けします。
第二回は「タスク・リストの使い方」がテーマです。

▼第一回はこちら
時間管理術(1) 時間をあなたの味方にするために

 

前回、『時間管理』とは「時間の使い方のマネジメント」だと、ご説明しました。また自分の時間の使い方を記録し、客観的にふり返るために、日誌をつけることをお勧めしました。日誌はいわば、時間の家計簿です。お金を管理したい人が家計簿をつけるように、時間を上手に使いたければ、日誌をつけることからスタートしましょう、と。

ところで皆さんは、「予定」について、どんな風に管理されていますか? 日誌は過去に起きた事実の記録です。でも、むしろ皆さんが注意を向けたいのは、未来の予定、すなわち、これから先の出来事や活動のはずです。

 

予定とタスクはどう違う?上手に使い分けるには

誰かと会う、どこかを訪問する、といった約束がある場合、カレンダーや手帳などに予定を書くと思います。「すべて頭の中で覚えています」という方もいるかもしれませんが、少数派でしょう。人間が頭の中に常時キープしていられる事項の数は、7±2個、すなわち5~9個の範囲だと、心理学者はいいます。つまり10個以上の予定を抱えている人は、何かに記録しておかないと、どれかを忘れてしまう可能性がある、ということです。

記録する先は、スタイリッシュな手帳でしょうか。それとも、部屋の壁や冷蔵庫の扉に貼った紙のカレンダーかもしれません。あるいは、スマホやPCの中の電子式カレンダーを利用する人も多いでしょう。わたしも電子派の一人です。持ち歩けて、いつでも見ることができる点は手帳と同じですが、素早く検索できる便利さは、紙にはありません(ただし全体を一望しやすいとか、手で書きつけると記憶が強まるところは、紙の利点ですが)。

記録する先がどれであれ、「予定はすべて、一つの場所に書くこと」が原則です。大学や勤務先の予定はスマホで、プライベートな予定は卓上のカレンダーに、といった使い分けは、賢いやり方ではありません。自分は一人しかおらず、1日は24時間しかない訳ですから、すべての予定は全部一覧できるようにしておく必要があります。

さて、「予定」と並んで、上手に時間を使う上でポイントが、もう一つあります。それが「タスク(task)」です。タスクとは、自分がやらなければいけない事、宿題だと思ってください。レポートの提出や、新幹線の切符予約、誰かと日程を調整するなどといった事は、すべてタスクです。

時間管理の分野では、人との面談、どこかへの訪問など、始まりと終わりの時間があらかじめ決まっているような種類の活動を「イベント」と呼びます。これに対し「タスク」は多くの場合、期限だけが与えられています。ですから、扱い方が少し違うのです。

皆さんが何かやらなければならないタスクを抱えたとき、どのように記録しますか? そもそも、記録していますか? イベントの予定は書いておくけれど、タスクはすべて頭の中、という人も少なくありません。しかし先ほど述べた、記憶の「7±2個の法則」からいうと、タスクが増えるほど、失念の可能性も高くなっていきます。

そして、知的ホワイトカラー層の時間管理における最大の問題は、この失念にあるのです。「あ、忘れてた!」で、慌てて作業に取り掛かる。それまでの段取りは、一切ご破算で、心理的にも動揺する……知的生産性を著しく阻害する「時間どろぼう」そのものです。

ですから、タスクもちゃんと記録すべきです。ですがタスクは、カレンダーに書きにくいと思いませんか。期限は決まっています。来週木曜日にレポートを提出、と。では、カレンダーの来週木曜日の欄に、「レポート提出」と書きますか? その日の朝にカレンダーを見て、「あ! 今日が提出日だった」と思い出して、間に合うでしょうか。カレンダーは予定管理の道具としては、万能ではないのです。

 

タスク・リスト(To Doリスト)を活用してみよう

タスクは、カレンダーとは別に、リスト化することをお勧めします。これをタスク・リストやTo Doリストと呼びます。“To do” =しなければならない事、の意味です。タスク・リストは単純な表です(下図参照)。まずタスクの内容を書き、次に着手日と期限を記します。さらに優先度(A/B/Cなど)と、必要であればメモを追記します。

自分がタスクを抱えたら、必ずこのリストに追加します。そして完了したタスクは、チェックマーク(レ点)を入れて、終わったことが分かるようにします。タスク・リストを回していると、このチェックマークを入れる瞬間に、ちょっとした爽快感を味わえます。

わたし自身は、タスク・リストを電子的に記録しています。現在はいろいろなソフトが、タスク・マネジメントなどのカテゴリーで流通し、利用可能です。ただし、それを選ぶ際には、気をつけるべき点が一つあります。それは、「着手日」の設定機能、ないし、先日付のタスクが記録可能かどうか、です。

着手日とは何でしょうか? 言うまでもなく、着手すべき日、あるいは着手可能な日です。新幹線の切符を手配するタスクがあります。期限は乗車日の前日、9/19です。でも社内規定で、2週間以内にしか予約できないと決まっている。となれば、そのタスクは9/5以前にやろうとしても、できない訳です。あるいは「S社の問い合わせに返事する」タスクの場合、技術部に仕様を確認する必要がありそうです。その場合、1週間程度は余裕を見なければなりません。ということは期限9/21の1週前、9/14に着手しないと遅れてしまいます。

ところが多くのソフトは、この「着手日」の機能がないか、あっても有効に使えません。たとえば先日付のタスクは、着手可能日が来るまでは、タスク・リストに見せない、といった機能がほしいのです。なぜなら、リストを開けたとき、あまりにも多数のタスクが並んでいると、人はうんざりした気持ちになります。うんざりすると、タスク・リストを見るのが億劫になってきます。そして見なくなったら……そんなものが何の役に立つでしょうか?

タスク・リストは単純な道具ですが、それを継続して使っていくのは、思ったほど簡単ではありません。挫折せずに続けるコツは3つあります。1つ目は、上に書いた「着手日」の設定です。時間管理のポイントは、着手日を決めて守ることにあるからです。

2番目のコツは、カレンダーと同様に「一つにまとめる」ことです。仕事先とプライベートのタスクを別のリストにしてはいけません。自分は一人、1日は24時間を忘れないこと。

最後のコツは「宣言・分解」することです。タスクの中には、気が重く、着手しづらいものもあります。これがいつまでもリストから消えないと、リストを見たくなくなるのです。そういうときには、「自分はこういうタスクをします」と、まず周りの人間に宣言して、自分の背中を押しておきます。その上で、リスト内容をより具体的に細分化していくことがポイントです。たとえば、「顧客に値上げの交渉をする」ならば、それを「これまでの経緯を整理する」「お願い事項を箇条書きにする」「文案を上司や同僚に見て貰う」「顧客に面談のアポを入れる」……といった、小さなサブタスクに分解して、一つ一つ進めるのです。

 

タスクリストと日誌で、時間管理の目的が見える

時間管理のような、目に見えにくいマネジメント能力は、自分で経験し体得してみないと分かりにくいものです。タスク・リストと日誌で、計画と振り返りの習慣を作ることは、多忙という事実それ自体は解消してくれません。ただ、自分の日々の予見可能性を高めることで、「多忙感」を減らすのです。

なあんだ、結局、心理面の話か、とお思いかもしれません。しかし時間管理の目的は、見えない外乱に振り回される日々ではなく、自分が自分の主人として「考える時間」を持つ日々を作ることにあります。その『考える時間』こそ、わたし達だれもが渇望しているものではないでしょうか?

 

つづきはこちら
時間管理術(3) ミーティングを時間泥棒にしないために

※本記事の内容は筆者個人の知識と経験に基づくものであり、運営元の意見を代表するものではありません。

 

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佐藤知一

1956年生まれ。博士(工学)。 大型プラントの設計・建設などをグローバルで行う日揮ホールディングス株式会社、チーフエンジニア(ビジネス・アナリスト)。 著書に『世界を動かすプロジェクトマネジメントの教科書 ~グローバルなチャレンジを成功させるOSの作り方』(技術評論社) 『リスク確率に基づくプロジェクト・マネジメントの研究』(静岡学術出版) 等多数。特にお勧めは、『時間管理術 (日経文庫)』(日本経済新聞出版)。 佐藤知一さんブログ:タイム・コンサルタントの日誌から

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