製薬業界を知る

2019/03/29

団塊の世代の高齢化、医療費の膨張、最先端医療への対応と、いま医療業界には様々な課題が山積し、そしてその解決のために様々な施策とこの業界に関わる人々の課題解決力が求められています。医療業界にはその中心となる病院や診療所などの医療機関とともに、それを支える医薬品メーカー、医療機器メーカー、介護事業者などが存在します。団塊の世代が後期高齢者となる2025年に向けて「地域包括ケアシステム」の構築が急がれると、そこには人材不足を解消するための医療人材紹介サービス、予防医療の観点から患者の健康情報を調査、蓄積、連携させるためのITベンチャーなども、今後関与の度合いを増してきます。ここでは、医療業界に関わるプレーヤーの代表である医療機関(病院・診療所)、製薬業界、医療機器業界を中心に、それぞれの役割と関係性を見ていくことにしましょう。

 

医療業界:業界プレイヤー

 

医療機関(病院・診療所)

医師や看護師、薬剤師などが、直接患者に対して治療やリハビリ、カウンセリングを行う業種。この医療機関に求められる役割も、これまでの「医術で病気を治す」ということから変わりつつあります。日本は国民の約4人に1人が高齢者という、“超高齢社会”に突入しています。人は一人当たり生まれてから死ぬまでに約3,000万円程度の医療費を要するとされ、その半分以上は70歳を超えてから使うといわれています。しかし出生率がほぼ横ばいで推移しているのに対し平均寿命は伸び続けています。つまり高齢化社会が深刻になればなるほど、今後ますます医療財源は圧迫され、生産年齢人口が強いられる負担は増す見込みです。こうした現状を解決するために病院中心の医療から住まい中心の医療へシフトすべきという「地域包括ケアシステム構築」を進めていくことが求められているように、医療機関は地域に活動の主軸を置く時代になると考えられます。それに伴い、訪問介護や診療をする地域の医院やクリニックが増加し、予防医療などの治療以外の分野における働きが期待されるようになります。反面そこには医師不足、看護師への高度な知識と技術、専門性が課題となっており、その人材確保のために医療人材の紹介サービス[図中:A]などが新たなプレーヤーとしてその活躍を求められつつあります。

また、医療業界にはSMO(Site Management Organization:治験施設支援機関の略)[図中:B]と呼ばれる医療施設での臨床試験や・治験業務を担う企業もプレーヤーとして存在します。臨床検査とは、心電図測定や血圧測定などの「生理機能検査」と血液や尿などを採取して検査する「検体検査」に分かれます。対して治験は、医薬品や医療機器の製造販売に関する薬事法上の承認のために行われる検査であり、医療機関からその業務を委託されています。

 

医薬品業界

医薬品業界[図中:C]は、投与に医師の処方が必要な「医療用医薬品」と薬局やドラッグストアで購入できる「一般用医薬品」に大別され、市場規模としてはその9割超を「医療用医薬品」が占めます。さらに医療用医薬品のなかでも先発医薬品(新薬)と後発医薬品(ジェネリック医薬品)に分類されます。日本ジェネリック製薬協会によるとその割合は数量ベースで、新薬:約31%、ジェネリック:約69%(※1)。今後の医療費の高騰を抑えるために、成否は現在、「2020年度9月末までに、後発医薬品の使用割合を80%とし、できる限り早期に達成できるよう、更なる使用促進策を検討する」(経済財政運営と改革の基本方針2017)と掲げており、ジェネリック医薬品のシェアが拡大していくことが予想されています。

また医薬品業界には製薬サービス業と言われる製薬企業等が行う臨床試験を代行するCRO(Contract Research Organization:開発業務受託機関の略)[図中:D]が存在し、薬の開発におけるモニタリングや、データマネジメント、統計解析などの業務を行います。薬の研究開発費用の確保が難しくなってきた各製薬メーカーの固定費削減を背景に、最近では爆発的な勢いで発展している業界です。

さらに医薬品企業の販売を代行するCSO(Contract Sales Organization:販売業務受託の略)[図中:E]も台頭してきており、派遣MRビジネスやレンタルMRビジネスとも呼ばれています。

※1:日本ジェネリック協会HPより

 

医療機器・医療用品業界

医療機器業界[図中:F]は大きく二つに分類されます。病気やケガの治療に使用されるペースメーカー、人工関節などの「治療系医療機器」。CTやMRI、超音波画像診断装置や内視鏡などの治療を行う前に診断や測定を行う「診断系医療機器」です。経済産業省によると市場規模は2015年度で約2.7兆円(※2)。特別大きな市場ではありませんが、常に安定した成長が見込める優良業界です。

また、ガーゼやカテーテル、注射器や人工透析用品などの消耗品を製造している医療用品業界も存在しています。高齢化や生活習慣病の増加、また院内感染や医療事故防止のために安定した需要がありますが、最近では外資系メーカーとの競争が激しく、新興国を中心に海外における事業基盤の強化が進んでいます。

※2:経済産業省/我が国医療機器産業の現状より

 

今後、生まれてくる新規事業

超高齢化社会を目前に控え注目される医療業界。医療費増大など社会的な課題もあり、そのソリューションとしての新規事業も期待されています。

例えば、予防医療の分野では、毎日の生活の中で生体データを取得できるものも着目され、生体センシングができるウェアラブルデバイスなども増えてきています。時計型や耳に装着する生体計測デバイスなどが出てきていますが、今後は、歯を磨きながら鏡を見ている間や入浴中に、体重や生態データを計測されているなど、人間が意識をすることなく健康情報を測定できるようなデバイスの誕生も予測されています。

実際に海外では、同じ病気の人たちをつないでアドバイスを共有するサービスや、医師同士で専門知識を共有できるようなサービス、最近目立つものとしてゲノムや腸内細菌の検査サービスなどがあります。デジタル技術の進歩によってこうした領域も可能性が広がっています。それらの集積した情報からAIによる支援で、将来予想される病気を指摘し、そうならないために人に生活習慣の改善を呼びかけるようなサービスも、今後生まれてくるかもしれません。

医療業界は、今後ますますニーズが拡大することが予測され、大きな可能性を秘めた業界です。反面、専門性が高く網羅する範囲も広く決して楽な仕事ではありません。しかし、この業界に魅力とやりがいを感じるなら、業界動向や最新の情報を集め、広い視野を持ってこの業界を見続けてみてください。冒頭にも言いましたが、医療業界の関係性は、医療施設や医療従事者、患者の間だけにはとどまりません。医薬品メーカーや医療機器メーカー、介護事業者や新規事業者。それら医療業界周辺のプレイヤーもお互いに影響を与え合うことで、医療業界の課題を解決できるのです。

 

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SCIENCE SHIFT編集部

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