自己PR・面接・ガクチカ。企業は学生に何を求めているのか?コロナ禍の就活のリアルを聞いてみた

2020年4月に初めての緊急事態宣言が出されてから約2年。学校生活はもちろん、就職活動の現場も新型コロナウイルスの影響を強く受けてきました。

説明会や面接ではオンラインの活用が広がり、状況によっては最終面接もインターンシップも非対面に。一方、学生生活もリモートが中心となり、サークル活動なども縮小。就活生からは「面接時に聞かれる『ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)』に、何をどう答えたらいいかわからない?」という戸惑いの声も聞こえてきます。

環境が変化するなか、企業は自己PR・面接・ガクチカを通じて、学生のどんなところを知ろうとしているのでしょうか? 今後もしばらくは試行錯誤しながらの就活が続いていくことになるでしょう。だからこそ、企業側の意図を知っておくのは大切なことです。

そこで、今回は多くの企業に採用活動のサポートとコンサルティングを行っているリクルートマネジメントソリューションズのHRアセスメントソリューション統括部主任研究員の飯塚彩さん、HRアセスメントソリューション統括部研究員の角田瑞樹さんのお二人に、コロナ禍の就活の今を聞きました。

取材協力:

リクルートマネジメントソリューションズ

HRアセスメントソリューション統括部

主任研究員 飯塚彩さん

面接者・リクルーターを対象とする採用関連トレーニング(年間300件超実施)の開発・統括を10年以上担当。マネジメント支援ツール「INSIDES」の開発を行うなかで、組織における対話の手法の開発にも携わる。

取材協力:

リクルートマネジメントソリューションズ

HRアセスメントソリューション統括部

研究員 角田瑞樹さん

人材紹介事業において企業の採用活動を支援、採用人数500名以上の大規模プロジェクトにも携わる。その後、企業の採用や人材定着施策などに関するサービス開発、コンサルティングに従事。
現在は、企業の面接者やリクルーター向けに研修を提供。

 

オンライン、非対面での就職活動のメリット、デメリットは?

 
──コロナ禍以降、就職活動の現場にはどのような影響が出て、具体的に就活の進め方にどういった変化が起きているのでしょうか?

飯塚:新型コロナの感染拡大によって、一時は「就職氷河期の再来か……」と危ぶまれることもあった22年卒の就職活動でしたが、結果的に内定率は20年卒、21年卒と変わらない水準となりました。また、理系の学生さんへのニーズはむしろ高まっていて、23年卒に向けて追い風かなと感じています。

具体的な採用活動の変化としては、説明会や面接がオンラインでの非対面で行う前提で計画を立てる企業が増えました。それに対応するように学生さん方も、先輩の体験談などネット上の情報に対して積極的にアプローチして、準備されています。この2年で社会全体がWebベースでの就活に慣れてきたという印象です。

 
──オンライン、非対面での就職活動のメリット、デメリット。また、学生側が気をつけるポイントを教えていただけますか?

角田:まず、オンラインになったことで、説明会や面接への参加のハードルが下がりました。これは学生さんにもメリットですし、企業側にも今まで接点のなかった学生さんとつながることができるなどの好影響が出ています。

また、大学OBや先輩社員へのヒアリングも、時間やコスト面の調整が付きやすく、依頼される側も協力しやすくなっています。身近なところでは就活の活動費が約4万円減ったというデータも。これは学生さんにとって大きい額ですし、総じてオンラインでの就活では学生側の活動量が増加する傾向が見られます。

一方、はっきりとしたデメリットもいくつか見えてきています。

1つ目は、オフィスに来てもらい職場の雰囲気や社員の働く姿を見てもらうことで伝わっていた企業風土、人の魅力といったものを感じ取ってもらえないこと。これは企業側のデメリットとしてありますね。

 
──就活生としても、会社や、そこで働いている人たちの雰囲気は見て聞いて、感じ取りたいポイントですよね。

角田:特に面接も進み、就職先選びの最終フェーズになると、その会社が何をしているかだけでなく、働く環境や社員さんの魅力も意思決定の要因になります。その点、オンラインでどう伝えていくのかはこれからの課題になってくるのではないでしょうか。

一方、学生さんの感じている大きなデメリットが「ガクチカが書けない」というキーワードに代表される、人と協同して何かを成し遂げた体験、語られるエピソードがないという悩みです。大学の授業もリモートになり、サークル活動なども制限され、面接で何をアピールしたらいいのかわからないという人も多いようです。

 

「ガクチカがない」「自己PRが難しい」という悩みの具体的な打開策

 
──「ガクチカがない」「自己PRが難しい」という学生側の悩みについて、打開策をアドバイスいただけますか。

飯塚:企業側が何を考えて「ガクチカ」を聞くかと言うと、知りたいのは学生さんの考え方、人柄、どういう行動を取り、それが入社後に再現されるかどうかなんですね。

ですから、ガクチカは「サークル活動でリーダーシップを発揮しました!」といった華々しい経験である必要はありません。

たとえば、大学受験ではどう考えて進学先を決めたのか、同級生との交流で変化したこと、小中高校時代の体験など、自分で何かを判断した場面、意志を持って行動した場面に焦点を当てて話していきましょう。

 
──自己決定したプロセスを伝えることが、ガクチカや自己PRになるわけですね。

飯塚:そうですね。複数の選択肢がある中で、どう判断し、行動したのか。そこに学生さんそれぞれのらしさがあると思いますので、それが伝わることが一番重要だと思います。

 
──とはいえ、具体的にどうガクチカや自己PRをまとめていいのかわからない学生さんも少なくありません。エピソードの作り方についてヒントをいただけますか。

角田:最初のステップは、「自分がどんな人かを改めて考えてみること」です。

ある場面で他の同級生はAと考えていたのに、自分はBと考えていた、アルバイト先で同じ状況なのに自分とバイト仲間は違う判断や行動をしていたなど、人との比較のなかで自分なりの思考パターン、行動パターンが見えてくることがあります。

また、子どもの頃から変わらない性格、こだわりをピックアップしてみるのもいいですね。そうやって自分の特徴をはっきりさせると、自分らしいエピソードも形になってくると思います。

 
──なるほど。今までの人生の出来事を書き出してみると気づくことがありそうですね。

角田:そうですね。次に役立つのは「他己分析」です。

シンプルに友達や先輩、後輩、バイト仲間、家族など、周囲の人に自分はどんな性格で、どういう特徴があるかを聞いてみましょう。すると、本人は気づいていなかった自分のアピールポイント、エピソードが見えてくるはずです。

飯塚:面接では、そのエピソードが面接官との対話によって掘り下げられていきます。ですから、内容を整理して、準備しておくのも重要なポイントです。

具体的なシーンを時系列にまとめ、それぞれの場面で自分がどう考え、どう行動し、その結果をどう受け止めたのか。順序立てて論理的に説明する力を見せられるといいですね。

企業側は、ガクチカや自己PRについてのやりとりを通して、相手が自社の業務において必要な行動を取れるか、組織に適応していけるかを判断していきます。ですから、エピソードをまとめるとき、応募先の会社ではどんな働き方をするのか、どんな能力、行動が求められているのかを想像してみることをオススメします。

面接する側も、自社の仕事に似たシチュエーションのエピソードであれば、具体的な想像がしやすくなります。

 
──自社の仕事に似たシチュエーションというと?

飯塚:たとえば、接客サービスを行う会社に応募しているとしましょう。

その面接で、1人黙々と研究に取り組み、成果を出しましたというエピソードのガクチカや自己PRを話すと、その人の特徴はわかるものの、コミュニケーション力はどうなのだろう? 相手のニーズを察しながら提案する観察力はあるだろうか? 協働しながら作業を進めることは得意なのだろうか? など、面接する側として聞き足りなさが生じます。

もちろん、一人で取り組んだ研究について話す場合も、考え抜く力や継続力に焦点を当ててエピソードを組み立てれば、接客サービスの会社に対しても十分なアピールになります。大事なのは、自分のガクチカ、自己PRを応募先の会社に合わせて、アレンジしながら組み立てていくことです。

すると、企業側は入社後の活躍のイメージを想像できるので、より効果的なガクチカや自己PRになると思います。

 

志望先の企業の求めるもの、働く環境をしっかりとイメージするための方法

 
──応募先の仕事内容、職場に合ったエピソードを組み立てるにあたり、企業風土や雰囲気を想像する場合、どんなところに目を向けるとヒントが得られますか? 

角田:一番、アクセスしやすい情報源は採用ページの採用要項にある「求める人物像」です。加えて、「社員メッセージ」といった形で現場の社員、スタッフのインタビューなどが掲載されているケースも多々あります。

そこで、語られている「仕事の喜び」「苦労している点」「どんなことを成し遂げたか」「どんな人と働きたいか」といったエピソードも、応募先の会社の求めるものを想像する良い材料になります。

たとえば、「この会社は社内のいろいろな部署との連携を大事にしている」「クライアントから求められる仕事の質が高いので、企画力だけでなく、丁寧さが重視されている」など、社員メッセージには具体的なポイントが書かれているが多いので、しっかりと読むと、自分が働く環境が描きやすくなるのではないでしょうか。

もちろん、直接、先輩社員に話を聞ける機会があるなら、対面でも非対面でも積極的に活用していくと具体的なイメージが湧いてくると思います。

飯塚:今の話に付け加えてですが、学生さんが応募先の会社での働き方を想像するのはとても大事なことですが、企業側としてはそれが外れていたとしても、大きなマイナスとしては受けとらないので安心してください。

基本的に「わからないだろう」という前提でいるので、学生さんが面接の場で「こんな働き方が求められていると想像していますが」と言ってくれるだけでも、「自社に興味を持ってくれているのだな」「理解しようとしてくれている積極的な学生さんだな」と捉えてくれるはずです。

角田:そうですね。わからないところは面接時に質問していく。その姿勢そのものが前向きさのアピールとしてプラスに働きます。また、親御さんや友人と「どうして、この会社を受けようと思ったの?」といった話題になるタイミングもあると思うのですが、そこで、自分の考えを話すのもいい準備になるはずです。

自分の考えを自分の言葉で話すことで、志望動機やその会社のどこに惹かれたのかなどの腹落ち感がどんどん増していきます。

 
──自分の言葉でアウトプットすると納得感が増しますよね。

飯塚:そうですね。自分の中で内省しながら作り上げていくのも重要ですが、じつは周囲の人との日々の関係の中でアウトプットを繰り返しながらモチベーションが高まっていくという側面もあります。コロナ禍で環境は変化しましたが、受け身にならず、自分なりのスタンスで就活に向き合っていくことの大切さは変わらないのだと思います。

 
就活事情がもっと気になった方は、その他のリクルートマネジメントソリューションズの取材記事もぜひご覧ください!

 

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